「劇場霊」

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さて、「劇場霊」を見ました。2015年の邦画ホラー。
中田秀夫監督の映画ですが、「女優霊」と同じく「○○霊」というタイトルでくくったあたり、自信作なのだろうか?と思いながら見たら、ブットビ展開が多くて驚きました。
若手女優たちの演技とエゴがぶつかり合う舞台。呪われた人形が動き出して……
という話なのですが、もろもろの衝撃で下顎が落ちました。

あらすじ

Jホラーを代表する「女優霊」「リング」の中田秀夫監督がAKB48の島崎遥香を主演に迎えて贈るホラー・サスペンス。女貴族の生涯を描いた舞台が行われようとしていた劇場で出演者やスタッフに襲いかかる恐怖の数々を描く。共演は足立梨花、高田里穂。
未だ芽の出ない若手女優、水樹沙羅は、気鋭の演出家・錦野豪太が実在の女貴族エリザベートの生涯を描く新作舞台に端役で出演することに。小道具として不気味な球体関節人形が置かれた舞台では、主演の篠原葵、野村香織ら女優陣が火花を散らしながら、連日稽古に打ち込んでいく。そんな中、劇場内でスタッフの変死体が発見される。さらに、今度は葵が不慮の事故で降板、沙羅が代役として主演に抜擢されるのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=352367

ネタバレ

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大雨。豪華なお屋敷で、女性が等身大の人形と向き合い、突如絶叫して倒れる。おそらく妹らしき制服の女の子もやってきて、同様に倒れる。彼女たちの父親らしき男も現れ、人形を回収する。
優しく人形を撫でつつ、突然激昂して人形をバラバラにして、さらに火をつけようとする。(狂気をピンクの照明で表現しつつ、雷鳴でホラー映画らしさも満点ね!……なんて思うわけないだろ!)だが、そこに警察が登場。(なぜ?誰が通報したの?人形??)
「その人形が、娘たちを殺したんだ~!」
と絶叫する男を、警察が連行していく。

「劇場霊」(タイトル)
棺の中には、白い花が敷き詰めらている。だが、棺の中には何もない。誰もいない。

川に流れついた女子高生の死体。警察、そして母が死体と対面している。だが、途中で撮影が中断する。これは撮影だったのだ。
その死体役こそ、沙羅だ。彼女は5年女優を続けているが、ブレイクには程遠い。女優としてはマジメすぎて、迷走しているのだ。
(どうでもいいけど、この映画は全体を通して女の子の洋服のトーンが暗く、ダサいです。あんまり時代を感じさせないようにしているのか?にしても、芸能人が着る服ではないような……)

だが、沙羅はあるオーディションを受けられることになる。事務所の先輩である売れっ子の篠原葵と共にオーディションに臨む沙羅。明るくて元気な香織とも友人になる。
舞台のテーマは『エリザベート』(実在した人物で、農村から若い女の子をさらってきてはその生き血を浴び、若さを保っていたとされる)。演出の錦野はやたらと細いジャケットに細いズボン、さらにはスカーフをオシャレに巻いていて(オネエではありませんでした)、うさんくささも感じさせる。葵と共にオーディションを受けるが、彼女がセリフをトチってしまい、オーディションが中断する。もう一度やらせてほしいと食い下がる沙羅に、葵は裏でチクチク文句を言う。

小道具担当のスタッフたちは、倉庫などを巡ってあるものを探している。スタッフのひとりであるエリコは、吸い寄せられるようにある人形を見つける。それこそ、冒頭の人形(ただし、頭のみ)である。

オーディションに合格する沙羅。侍女の役のひとりだ。主演はもちろん、葵である。

すぐに劇場で稽古が始まる(普通、稽古場で練習してから小屋入りするものじゃないのでしょうか?)。既にポスターも完成している。
沙羅は同じくオーディションに合格した香織と再会して、一安心だ。

小道具のエリコは「ちょうだい……ちょうだい……」と呟いているところを、他のスタッフに目撃される。その先には、あの人形の頭がある。

だが。練習が始まると、また葵がセリフを飛ばす。全員のセリフを覚えている沙羅は、葵にこっそりセリフを教えるが、演出の錦野は機嫌を損ねてしまう。
葵は沙羅にひどく八つ当たりをする。
沙羅は葵に雑用を押し付けられるが、葵と錦野が車に乗ってどこかに行くのを目撃してしまう。錦野が葵に言った「役柄について語り合わないと」というのは、こういう意味だったのか。

舞台でエリザベート(主人公)のセリフをやってみる沙羅だが、人形の担当である和泉に目撃される。和泉についていく沙羅。
葵に頼まれていた雑用(ドレスが敗れたのを直してほしい)を、改めてエリコに依頼する。だが、エリコは様子がおかしい。人形は「シワにならないように」とドレスを脱がされる。精巧に作りこまれているのがわかる。

エリコはその夜、作業を続けている。気が付くと、人形が消えている。そして、人形の足が、彼女の視野に入ってくる。なぜ??人形が歩いている??

翌朝、エリコは死体で見つかる。蝋人形のようになった死体に驚く警察や鑑識。錦野は警察が止めるのを押し切り、稽古を再開する。

練習中。葵が人形相手に熱演をしている(エリザベートは常に人形を横に置いており、彼女のもうひとつの人格というような位置付けがされている)と、人形の目が突然血走り、動く。取り乱す葵だが、彼女がセリフをまた忘れたと思った錦野は、全部のセリフを覚えている錦野を引き合いに出して葵を煽る。

葵はひどく怒り、沙羅をおろすようにマネージャーに命令すらする。だが、ひとりになった彼女のもとに、人形が現れる。楽屋の外に立っている人形を見て、葵も魅了される。
「ちょうだい……ちょうだい……」
しかし、彼女は自分で投げつけて割った鏡でケガをして、正気を取り戻す。
人形目線で、葵が追われているのが見える。ギシギシと音をたてながら追ってくる人形。
葵は屋上に逃げるが、次の瞬間、劇場から出てきた沙羅の目の前に落下する。沙羅は屋上にいる人形を目撃するが、すぐに消えてしまう。

警察の取り調べを受ける沙羅。だが、人形のことを口走るも、自分で自身がなくなってしまう。沙羅は劇場に戻って人形を調べるが、やはり目が動き、血走る。だが、沙羅はそれを見て引き込まれ、ニコニコと微笑む。
そこに和泉が現れ、彼女は正気が戻る。
「この舞台、やめたほうがいいんじゃないでしょうか」と和泉に言う沙羅。
(小道具さんに言ってもどうにもならないんじゃ……)

葵は入院して、沙羅は主役に抜擢される。

錦野にしごかれる沙羅。だが、帰りに彼は沙羅の肩を抱き、食事に行こうと誘う。そして彼女の体をサワサワしようとする。沙羅は錦野を突き飛ばし、帰宅する。

次の日の練習中。葵の時と同様に、人形が動いて見える沙羅。思わず人形を小道具で傷付けてしまう。錦野は「主役は荷が重いのではないか」とまたイヤミを言う。
人形の修理をする和泉に付き添う沙羅。彼女はマジメすぎることがコンプレックスで、さらに「今まで全部人のせいにしてきた。今度は人形のせい」と愚痴る。だが、和泉は彼女を慰め、人形だってひとつひとつ違うし、女優だってみんな違ってていいんじゃないかな(キリッ)と呟く。

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突然、人形の記憶に入りこんでしまう沙羅。雨の日の豪邸で、冒頭の事件のあらましを目撃する。
現実に戻ると、今度は人形が動き出す。彼女は人を呼びに行くが、元通りになっている。
「これ、動いたんです!」人形じゃない!人形じゃない!」と叫び、頭を砕こうとする沙羅だが、和泉が人形をかばう。
その騒動を聞きつけて集まったキャストたちは冷たい目をしている。演出の錦野が来て、主役を入れ替えると宣言する。主役をやりたいと名乗り出たのは、沙羅と仲のいい香織だ。彼女は沙羅よりもうまくやってみせると断言する。
「本当に生きてるんだってば!」
沙羅は絶叫する。

家にいる沙羅は、テレビで部隊のニュースが報じられているのを見ている。そこに、和泉から電話がかかってくる。

和泉は、冒頭の事件について調べていたのだ。有名な人形作家が、娘2人を殺した事件。彼らは、その豪邸へと向かうことにする。公開ゲネに出ず、事件を調べる和泉。
人形作家のもとに着く沙羅だが、取り合ってもらえない。だが、沙羅の訴えを聞き、彼は2人を中に招き入れる。

問題の人形は、人形作家の長女をモチーフにしたものだった。土砂崩れに巻き込まれ、押しつぶされるようにして亡くなった彼女。その彼女を人形にして、葬式をする予定だった(遺体がひどく損傷していたため)。だが、その人形が妹2人を襲って殺したのだ。
「羨ましかったのかもしれない」という人形作家。(かもってなんでしょう?)
若い娘が羨ましい、眩しいばかりの“生”が妬ましい。それはエリザベートとも重なると気付く沙羅。どうしたら彼女を止められるのか?だが、作家は「あれは私の娘なんかじゃない!」と激昂する。

その頃、ゲネプロが始まりかけている。錦野に電話する沙羅だが、鼻で笑われて終わってしまう。沙羅は警部の名刺をとっておいたことを思い出す。

舞台は始まってしまう。トゲ付きの檻(ガチの金属のトゲ。大道具はアホなのか)が意味ありげに登場する。だが、人形とエリザベートが向き合うシーンで、香織がおかしくなる。「ちょうだい、ちょうだい」
そこに沙羅が乱入して、舞台が中断する。

錦野は怒り狂い、「あのバカ女を死刑にして下さい」と警察に怒鳴る。香織も怒っている。和泉は人形をこっそり倉庫に下ろし、ガソリンをかけて燃やそうとする。だが、人形の逆襲にあってしまう!人形は起き上がる。
和泉は襲われてしまい、たまたま駆け付けた警官も襲われる。

揉めているステージ上の電気が消える。そして、警官の死体がステージ袖に転がる。電話も通じない。と、そこに人形が現れ、キャストのひとりを捕まえる。人形にキスされた女の子は唇から精気を失っていき、蝋人形のようになる。
逃げていくキャストたち。警察は逃げ遅れた子を助けるが、人形は首を180度回転させつつ、後ろ向きにガタガタと追いかけてくる。どんどんと殺されていく人たち。

沙羅は死体に次々遭遇して、動転する。だが、意識を取り戻した和泉と共に警備室に逃げ込む。

監視カメラで、香織に危機が迫っているのが見える。沙羅は大声で危険を知らせるが、逃げる前に人形に捕まってしまう。
「沙羅ちゃん、ごめんね。私、沙羅ちゃんがいなくなれば、主役になれるかもって。ホントに、ごめんなさい」
人形の顔の一部が剥げる。そこからは、筋肉組織が覗いている。彼女は人間の精気を吸い取り、再生しているのだろうか。

血まみれの錦野と遭遇する沙羅たちだが、助けは間に合わない。

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舞台上で追いかけられる沙羅と和泉。和泉は沙羅をかばい、小道具のオノで人形と対決する。大道具の檻の中に入る沙羅。そのまわりを、人形たちがグルグルとまわる。
「ちょうだい、ちょうだい……」
和泉は沙羅の入っている檻を、舞台上に高く吊り上げる(そういう演出があるので、そういう細工がされているのです。それにしてもスゴイ腕力)。今度は和泉を狙う人形だが、檻の底が抜けてしまい、沙羅は人形の上に落っこちる。彼女の足を掴む人形だが、今度は和泉が人形の上に檻を落とす。
沙羅は壊れた檻のトゲ部分を手に取り、それで人形の顔を刺す。血が噴き出し、沙羅の顔に大量の血がかかる!
人形は動かなくなってしまう。

1年後。
沙羅は女優としてブレークしている。ドラマの撮影に挑戦している沙羅だが、そのロケ場所の川辺で親子が話している。「ママ、見てー」そこには人形の頭が流れ着いている。
その人形は、沙羅をじっと見つめているようだ。その眼は人間のように充血している。

感想

どうですか?「人形が蘇った動機は誰もわからない」のは、まだいいと思うんです。ただ、唐突に無差別殺人しちゃうというのはどうなのでしょうか。
・殺された妹の制服が、ジャンプのラブコメ漫画みたい。
(普通のセーラーじゃないのは監督のこだわりなのでしょうか?)
・冒頭の殺人事件を見て「ああ、ここも劇中劇なんだな」と思っていたら違ったので驚いた。ベタベタの演出だったから。
・演出家の先生のキャラクターが胡散臭すぎて……
・人形はCGも入れつつ、中に人が入っているんだろうなあという場面もありつつだったのですが、オリエント工業に頼めばいいのにと思いながら見ていた人が多かったのではないだろうか。「空気人形」みたいに、人がやってもよかったのではないか。でも、キレイ過ぎても怖くないのかね?
とモヤモヤするくらい、私にとっては「気持ち悪い」「怖い」感のない、美容師の練習のマネキンみたいだった。
・久しぶりに警察が1ミリも役に立ってないホラー映画見ました。
・ところで「ちょうだい……ちょうだい」というのは体をくれ、ということかと思ったのですが、エナジーをくれってことだったのだろうか。そのへんもはっきり判明しません。
・人形のギチ、ギチ、という音はリアルに怖いです。動きはアシモみたいだけど。
・ゲネプロ前の記者会見でシャンパンが出てて、美味しそうだと思いました。
・舞台で使用されていた檻(中にトゲトゲがついている)なのですが、トゲが本当に金属をとがらせたもので驚いた。いや、何かあったらケガするだろう。
・夕飯時に皆を襲い出す人形ってどうなんでしょうか。
(推測するに、おそらく7~8時以降の出来事っぽい)
・人形は老若男女関係なしに殺しまくったのですが、「若い人がうらやましい」のかと思いきや、おっさんもガンガン殺していくので、逆恨みがスゴイと思った。おじさん刑事とかおじさん演出家も関係なし!ロック!
しかし、ありとあらゆる人とキスして殺すって気持ち悪い幽霊ですね。その点だけは認めます。あと、「ちょうだい、ちょうだい」で何か思い出すなあと思ったら大阪プリンの「なんかちょうだい」って曲だった。