「アイアムアヒーロー」(原作コミックとの比較あり)

iamahero

今回は劇場版「アイアムアヒーロー」を見てきたので、その中身をコミックスと比較しながら紹介していきたいです。
個人的には
・ゴア描写大満足、ZQN描写も大満足
・原作はほぼ無視。登場人物もハマっている人もいれば、なぜこの人なのかよくわからない人も
・とりあえず、比呂美ちゃん空気
・ラストはクソ。さすが「GANTZ」の監督
(口が悪いですが、お許しくださいませ)

キャッチコピーは「ようこそ。絶叫のZQN(ゾキュン)パニックへ。」ですが、うーん。
「ウォーキング・デッド」的、ロードムービー。
「ゾンビ」、「ドーン・オブ・ザ・デッド」的なモールでの立てこもり。
「28日後」的な、感染系動き速いゾンビ(あと、トンネル内をゾンビが走ってくる影のシーンもあった)。
「ゾンビランド」的、よわよわ主人公が頑張って女の子を守る的立ち位置。
既存の映画がついチラつきます。

あらすじ

花沢健吾の大ヒット・ゾンビ漫画を大泉洋、有村架純、長澤まさみの共演で実写映画化したパニック・アクション大作。ある日突然、謎の感染によってZQN(ゾキュン)と呼ばれるゾンビが街に溢れた日本を舞台に、冴えない漫画家アシスタントの男が、偶然出会った一人の女子高生を守るために死力を尽くして繰り広げる決死のサバイバルの行方を、迫力のバイオレンス・アクションと臨場感あふれるパニック描写で描き出す。監督は「GANTZ」「図書館戦争」シリーズの佐藤信介。
漫画家アシスタントとして最低な日々を送る35歳の鈴木英雄。ある日、徹夜仕事から帰宅した英雄は、異形の姿に変貌した恋人に襲われかける。辛くも逃げ出した英雄は、同じように異形の者が人々を次々と襲い、襲われた人間もまた異形の者へと変貌していくさまを目の当たりにする。やがてそれは“ZQN(ゾキュン)”と呼ばれ、謎の感染パニックが日本中で起きていることが分かってくる。標高が高いところは感染しないという情報を頼りに富士山を目指した英雄は、その道中で女子高生の比呂美と出会い、ひょんな成り行きから一緒に行動を共にするのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=352951

登場人物

鈴木英雄(大泉洋):漫画家だが売れていない。クレーン射撃用の銃を持ったまま、パニックに巻き込まれる。
早狩比呂美(有村架純):英雄が出会った女子高生。既に感染しており、ZQN後はほぼ喋らなくなる。置物状態。
藪(長澤まさみ):ショッピングモールの上で籠城するなかにいた戦闘系女子。金髪ショートではなく、普通の髪型です。
伊浦(吉沢悠):モールの屋上を仕切る。支配欲が強い。原作通り、常にオーバーオールを着用している。
サンゴ(岡田義徳):伊浦の部下。彼を裏切り、食料調達作戦では英雄の銃を奪って指揮をする。
てっこ(片瀬那奈):原作では漫画家(志望?)だが、映画内では婚期に焦る女。英雄に漫画をやめてほしくて、家から追い出す。
中田コロリ(片桐仁):原作では活躍するが、映画内ではチョイ役として冒頭のみ登場。ちなみに、中田コロリの作画を担当しているのは浅野いにお。
松尾(マキタスポーツ):英雄がアシスタントをする漫画家。原作通りのルックスで笑った。
三谷(塚地武雅):英雄のアシスタント仲間。同じくアシスタントのみーちゃんにご執心で、英雄のことはバカにしている。
アベサン(徳井優):オリジナルキャラ?モールの上で物品を管理するおじさん。食料調達作戦にも参加する。大人計画で演技を拝見したことがあるけど、やっぱり演技うまい。
千倉(風間トオル):オリジナルキャラ?タクシーで英雄や比呂美と同乗する官僚。原作でいうところの、葉加瀬太郎似の男の役どころ。

その他の登場人物

タクシー運転手(村松利史):原作そのまま。

なお、特別出演としてメイプル超合金のお2人をお見かけしたような(ZQN役)。カズレーザーさん怖い。

コミックスのおさらい

1巻

英雄の日常が描かれる。ここで、「英雄は非常に孤独であり、妄想家である」ことが伏線として強調される。
英雄は現在、アシスタントとして生活している。アシスタント仲間の三谷やみーちゃん(唯一の女アシスタント)たちからも浮き立っており、妄想の中でのみ、みんなから支持されている。
英雄には同じく、漫画家を目指すてっこという彼女がいる。だが、てっこは尊敬する漫画家・中田コロリに陶酔しており、彼を勝手にライバル視している英雄はそれが面白くない。そもそも、中田コロリはてっこの元カレでもある。
漫画の持ち込みをするが、英雄のアイデアは酷評される。しかし、編集部にたまたまいた中田コロリは彼をかばい、才能を褒めたたえる。中田もてっこも、英雄に優しい。英雄は言い訳ばかりで漫画を描けない自分の醜さに嫌気がさす。
その日の帰り道、英雄はZQNを目撃する。
合コンに行き、酔っててっこの家に押しかけた英雄は、彼女がまだな方と関係を持っているのではないかと聞いてしまい、彼女を傷付けてしまう。
アシスタントの現場は修羅場になっている。漫画家の松尾は体調不良で、みーちゃんは休みだ。だが、松尾の目は徐々に変色しており、みーちゃんの死体は風呂場の浴槽の中に沈んでいる。しかし、誰もそれに気付く余裕がない。みーちゃんのストーカーの三谷は、松尾と彼女の不倫を暴露する。
次の日、射撃練習会に行くついでにてっこの家を訪れる英雄。だが、ドアポストから覗くと、てっこは異常な動きをしながら、こちらに迫ってきて……!

2巻

ZQNになったてっこは、英雄を襲う。ドアを噛んで歯が折れたてっこは英雄の手に噛みつくが、歯がないので感染するほどではない。英雄はてっこの遺書のようなもの、中田コロリの単行本を捨てようとしていた様子、代わりに本棚に自分の単行本を置いてくれていることに気が付き、涙を浮かべる。
そこに、別のZQNが登場。彼から英雄を守るように、てっこはZQNと戦い始める。意志が通じないてっこを病院に連れていこうとするが、彼女は言うことを聞かない。結局、英雄は彼女の首を切り落とすことにする。
職場に向かう英雄。感染した松尾を殺そうとしている三谷と遭遇し、松尾とみーちゃん(水死体状態になって水ぶくれている)をやっつける。松尾に日ごろの恨みを込め、バットを振り下ろす三谷を恐ろしげに見ている英雄。
三谷と英雄は電車に乗り、郊外を目指すことにする。ここで、三谷は松尾とみーちゃん、そして感染していないアシスタント仲間(彼もみーちゃんと関係を持った)を察する英雄。
しかし、逃げている途中で三谷は感染。しかも墜落中の飛行機が接触し、死亡する。
英雄はひとり、電車に飛び乗った。

3巻

電車内でも感染者が出現して、パニックになる。英雄はある駅で下車をして、タクシーに乗車。黒人(軍人)や不倫カップルと同乗することになる。だが、黒人も不倫カップルも感染している。黒人は米軍基地前で降車して射殺され、不倫カップルはZQN化しながらお互いを噛み合い、食べ合う。そのまま、高速道路に入り、ZQNカップルを叩き落とす。また、タクシー運転手も発症したため、交通事故が起きてしまう。
英雄だけが生き残り、富士の樹海で取り残される。妄想に逃げ込むが、恐怖に追い詰められる英雄。森の中でしゃがみこんで眠る。
翌朝、彼は比呂美という女子高生と知り合う。彼女に自殺志願者と勘違いされた英雄は、仕切り屋でしっかり者の彼女に困惑する。
比呂美は林間学校でこの周辺の施設に泊まっていたが、「ひとり肝試し」を命じられて外に出されてしまった、いわゆるいじめられっ子に近い存在。だが、彼女はそれをあまり気にしていない。彼女のクラスでも、感染が広がっている。
寝ながら怯える英雄の手をとり、一晩中見張っていた比呂美。彼女は今起きていることを何も知らない。しかし彼らは樹海で、ZQN化した首吊り死体を発見する。

4巻

比呂美はZQNを初めて目にするが、彼女はZQNにも優しい。そして英雄はZQNにも生前の記憶が残っていることを理解する。
そんな彼らに比呂美の級友たちが襲いかかるが、実は比呂美と同じ趣味を持っていた紗衣が彼女をかばう。その彼女に、自分でとどめをさすと決めた比呂美は、英雄の銃を借りて彼女を殺す。
情けなくて、子どもっぽい英雄に呆れつつも、親近感を抱く比呂美。
彼らの前には感染者が次々に姿を現す。車に乗った生存者も現れるが、彼らも既に噛まれている。
比呂美のこぐ自転車の後ろに英雄が乗り、彼らは疾走する。
感染者の少ない場所で彼らは状況を確認するが、それは彼らの理解を越えていた。

5巻

富士山を目指して登山を始める英雄たち。同じことを考えている人たちがたくさん押しかけている。比呂美はふと、これがデマなのでは?と疑問に思うが、英雄はそれを意に介さない。
だが、人ごみのなか、感染者が感染を広げていき、あたりはパニックになる。比呂美も赤ん坊ZQNに首を噛まれてしまう。だが、他の者のようにすぐ感染が始まらないことから、比呂美は助かったと判断される。
彼らを助けてくれたのは、荒木というジャーナリストだった。彼らは誰もいない富士山の五合目で今日を生き抜けたことに祝杯を上げる。
日本各地で、ZQNが暴れている。
翌朝、荒木や英雄は車を走らせている。だが、前方にZQNを発見して、彼らは車を止める。

6巻

荒木と英雄は、ZQNになった比呂美を利用してZQN退治をする。だが、英雄は生前と同じように、比呂美を尊重する。
比呂美はZQNとなり、英雄に命令されるまま動き、ZQNをバラバラに破壊する。
彼らはコンビニを経由してショッピングモールへ向かうことにする。だが、車の中から焼け焦げた人間の死体が見え、英雄は妙な不安にかられる。
英雄は銃を持っていたことで、彼らはモールに立てこもっていた人間たちの仲間に入れてもらうことができる。だが、藪だけは比呂美が感染者だと見抜く。
モールに立てこもっている人間たちは、どこかおかしな雰囲気をまとっている。だが、彼らは引き返せない。藪は比呂美がZQNの抗体を持っているのかもしれないと推察して、彼女を守り抜くことを英雄に誓わせる。

7巻

アウトレットモールでは、裁判が始まる。伊浦たちの言うことを聞かない人間は、屋上から落とされるのだ。また、英雄を懐柔するために藪が夜中やってきて、彼と関係を持とうとする。藪は彼らの性処理も担当しているのだ。だが、英雄はそれを拒否して、口裏を合わせることを選ぶ。不器用な英雄に、好感を持つ藪。
モールの下では、高飛び選手だったらしいZQNが跳ねまわっている。
伊浦は英雄を呼び、戦力となる男連中で食料調達作戦を立てていることを明かす。伊浦たちは英雄から銃を奪おうとするが、彼は拒否する。比呂美が感染していることを明かして、彼女が弾のあるテントにいることを話す英雄。だが、伊浦は比呂美を撃ってしまい、彼女は倒れる。
伊浦、サンゴ、ブライ(村井)、黒沢(モールの元スタッフ)、そして英雄は食料を確保に向かう。英雄に与えられた武器はプラスチックのトンカチだ。
だが、散弾銃の音のせいでZQNが集まってきてしまったうえ、道を知っている黒沢が死んでしまう。
ケガをした比呂美を看護する藪と、比呂美にケガをさせられた目白。藪は彼女を連れて逃げることを決意する。目白は当然それを咎めるが、藪は彼と正面から向き合って話をする。
そこに、高飛びZQNが登場する。彼は屋上まで飛んできたのだ。目白は藪たちをかばい、ZQNに噛まれる。藪は比呂美をおぶり、その隙に逃亡する。

8巻

英雄たちはモール内で分散しており、英雄自身も棚に入って閉じこもっている。だが、そこにブライが現れ、一緒に脱出しようと持ち掛ける。ブライがZQNを引きつけ、英雄がサンゴの死体が抱えている銃を奪還して、ZQNを一掃するのだ。サンゴから銃と弾を回収して、村井を狙うZQNを射殺する英雄。
「はーい」
と言いながら、彼は銃を撃つ。
銃声にZQNが引きつけられている間、藪は移動し続ける。だが、屋上から落ちた元仲間のZQNが彼女を追う。
英雄とブライは橋の上で、ひたすらZQNを迎え撃つ。
屋上では、高飛びZQNたちが人間たちを噛み、投げている。
藪は駐車場にある自分の車まで辿り着くが、そこには感染した伊浦が待ち受けていた。彼はマスターベーションをしていた手で自分の目をえぐりつつ、藪に襲いかかる。だが、彼女におぶられていた比呂美が彼のあごを引き裂き、伊浦は転落する。
藪は車を出すが、銃声音がするほうに車を走らせる。
弾切れが近付いてきた英雄とブライ。ブライは持って来たベーコンをそこに置き、橋から飛び降りて自殺する。その直後に、藪の車がやってくる。
彼らは車に乗り込むが、英雄はたくさんの人間を殺したことを悔いている。初めて本名を名乗り合う二人。(藪の本名は小田つぐみ、英雄は「メガネ」と呼ばれていた)。英雄の名前を聞いて、「ヒーローじゃん!」と笑う藪。
ショッピングモールでは、自殺したブライの死体、感染してうろつく黒沢、かつての仲間に食われている伊浦が見える。生き残っている荒木は、子どもをかばって高飛びZQNを巻きこんで焼死し、子どもだけがモールの屋上に残される。

ここまでの内容が映画に集約(?)されています。

ネタバレ

※コミックス、映画内のネタバレが含まれます。まだ未見・未読の方は先に作品をご覧いただいたほうがいいぞ。

アシスタントの日常からスタート。英雄の妄想(彼の漫画論を皆が支持する)は、相変わらずだ。ニュースでは「土佐犬が女性を噛んだ」「いや、土佐犬を女性が噛んだの間違いでした」という報道がなされている。

英雄が帰宅すると、同棲しているてっこは不機嫌だ。金銭的に余裕がない彼に当てつけるようなことばかりするてっこ。英雄は夜中に漫画を書き続ける。

※てっこと英雄が同棲している設定に変更。また、原作てっこは彼にとって「聖母」のような存在であり、作中ではまったく怒らない(浮気を疑われても、「今日は体調が悪いから、帰ってね」と悲しそうな顔で言うくらい)だが、映画ではブチキレ結婚焦りまくり女である。

漫画の持ち込みに行く英雄。彼の漫画はまったく評価されない。たまたま現れた中田コロリも、彼のことを覚えていない。ロレックスをした彼に、引け目を感じる英雄。

※原作では、英雄の才能を(なぜか)コロリは異常に評価しているという設定があるが、映画では「覚えていないが、悪印象はない」程度に修正されている。

てっこは怒りの限界が訪れている。英雄と彼の銃を外に叩き出すてっこ。英雄は公園で中田の漫画を読む(なお、浅野いにおが作画を担当)。その面白さに思わず、引きこまれる英雄。

仕事場では、松尾は具合が悪そうだ。みーちゃんも同様である。三谷は男性アシスタントたちに、2人が不倫していることをこぼす。
夜、英雄のもとにヘルプの電話がかかってくる。てっこだ。「私、やっぱり、英雄君とずっと一緒にいたい……」
その言葉を聞き、翌朝の仕事終わりに家に戻る英雄。だが、ドアポストから覗いたてっこの姿はあまりに異様だった。ビクビクと体が動き、四つん這いになってアクロバティックな動きをするてっこ。そして、そのままドアに向けて走ってくる!

てっこは彼を部屋に引きずり込み、襲い掛かる。英雄は彼女を落ち着かせようとするが、彼女は言うことを聞かない。ドアに噛みついたせいで歯を失ったてっこ。彼女に噛まれても英雄の体には何も起きなかった。揉みあいの末、英雄の漫画新人賞のトロフィーの上にてっこは倒れ、そのまま死亡する。

※原作よりかなり短縮されている。原作では、英雄はてっこの首を彼女が料理を作ってくれる時に使用していた包丁で切り落とすが、映画では2人の関係を悪化させた(てっこはトロフィーを「燃えないゴミ」と揶揄した)トロフィーで死亡する。
なお、原作では「てっこは自分を感染させないためにわざと歯を折ったのかも」と英雄が(後にですが)感謝するシーン、てっこの歯を集めて持っていくシーンなどがある。
※ちなみに、感染後のてっこの顔があまりにも変わっているのはアクション女優さんがスタントを演じていたからだと思われます。

職場に行くと、そこには三谷がいる。後ろ向きの彼に呼びかけると、いつも通りの三谷が振り返り、ほっとする英雄。だが、部屋の中ではもう1人いた男性アシスタントが頭を割られて死んでいる。松尾は既にZQN化している。容赦なく、バットで松尾を撲殺する三谷。「これからは俺の時代が来た!なのに、なんで感染しちゃうんだよぉ!」三谷の膝には噛みつかれた痕がある。みるみるうちに、三谷はZQNとなる。別のドアからはZQNとなったみーちゃんも登場する。
英雄は部屋から逃げ出さざるを得ない。

※映画では三谷が感染で脱落(本来は、感染した直後に墜落してきた飛行機に接触するというダイナミックな死に方をした)。また、みーちゃんの頭ををスプレー缶で爆破する展開などもない。アシスタントの死も謎である(感染していたのかもしれないが、三谷がわざと殺したのかも定かではない)。

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外に出ると、街ではパニックが始まっている。次々と、ZQNが人に襲いかかる。
英雄はタクシーに乗り比呂美、千倉と相乗りをするが、千倉は噛まれており、英雄と揉みあいになる。千倉はタクシー運転手にも噛みつくが、車から振り落とされてしまう。
しかし、今度はタクシー運転手が発症した。彼は猛スピードで車を飛ばし、事故を起こしてしまう。英雄たちが気が付くと、後ろにはたくさんの車が衝突した玉つき事故がおきている。

※原作の電車パニックシーンはカット。タクシーは乗客を変える形で展開している。なお、英雄は食料を強奪せず、電車の運賃やタクシー代、コンビニでの買い物代も律儀に払う(代金を置いていくかメモを残す)性格だという描写もカットされている。
※比呂美との出会いが樹海ではなく、街中に変更されている。
そのため、英雄が妄想好きで情けない大人であり、自転車の二人乗りもできないダメ人間だという描写や、それに呆れながらも比呂美と奇妙な関係を築いていくくだりはない。
※当然、樹海シーンもカット。比呂美がいじめられっ子という設定もない。彼氏持ちだという設定ももちろんない。

彼らは某掲示板で状況を確認するが、そこでは感染者を「ZQN」と名付けている。
「空気が薄いところは感染しにくい」という情報から、彼らは富士山を目指す。神社の境内で一夜を過ごす2人。
比呂美は音楽好きであり、イヤホンを「はんぶんこ」して英雄に渡す。英雄は「俺が君を守る」と約束する。

だが、翌朝。英雄は比呂美が噛まれていることを知る。彼女は2日前、隣の家の赤ん坊に噛まれていたのだ。だが、今のところZQN化していない。とにかく、彼らは富士山を目指す。

※神社での人込みパニックシーン、赤ちゃんZQNシーンはカット。主要キャラのひとりであったジャーナリストの荒木も登場しない。当然、五合目のシーンもカット。
※また、日本各地のZQN被害や、原作の主要キャラ「来栖」にも触れられていない。

森を移動中、やはり比呂美はZQN化する。彼に自分のipodを渡す比呂美。英雄は慌てて逃げるが、逃げた先で別のZQNと遭遇する。それを助けてくれたのは比呂美だった。
比呂美はZQNの首をちぎりとり、腕をもぎとる。英雄は助けてくれた彼女を見捨てられず、一緒に富士山を目指すことにする。人間用の食事ではなく、キャットフードを愛好するようになった比呂美。英雄は進み続ける。
すると、道の真ん中に落ちていたショッピングカートに目が留まる。そこにはモールの名前が書かれていた。カートに比呂美を乗せ、彼らはモールまで歩き続ける。

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モールのなかで、なぜか革ジャンを試着する英雄。だが、ZQNに襲われる。それを助けたのが、藪だった。彼らはモールに立てこもる人間たちと合流する。
比呂美はZQNではないかと疑われるが、「ZQNは眠らないが、比呂美は眠っていた」という理由から、彼女は見逃される。
屋上で生活している彼らだが、リーダーの伊浦には裏があるようだ。
寝袋を彼に渡すため、物品の在庫を管理しているアベを紹介する英雄。英雄は、彼がしているロレックスに目を奪われる。アベは「よかったらどうぞ。いくらでもあるんで」と、ロレックスをいくつも出してくる。

※ここはオリジナル展開。森のなかをひたすら歩いて移動する謎シーンや、キャットフードしか食べないという場面が謎すぎる。
※英雄はなぜ、いかにも怪しいモールで服を試着していたのでしょうか。
※原作にある「感染していないかしりとりで確かめるゲーム」は存在しない。また、裁判(リンチ)シーン、性処理シーンもカット。
※オリジナルキャラのアベが登場。彼は原作におけるブライと荒木を合わせた立ち位置でもあり、藪が本来語っていたセリフを担当することもある。

英雄は夜、藪と話をする。藪は比呂美をかばう英雄を「カッコイイ」と表現する。デレデレする英雄。藪は、ZQNが生前の記憶の中で生きているという。そっちのほうが幸せなんじゃないか?と彼女は遠くを見る。
翌朝、英雄はアベにZQNについて説明される。高飛びの練習をしているZQN以外にも、満員電車に乗っているつもりのZQNや、買い物をしているつもりのZQNが見える。そしてアベは、その買い物ZQNが自分の妻であったことも告白する。来る途中に見た、黒焦げ死体について聞く英雄。アベは言葉を濁し、モールに集まる人間たちの闇について匂わせる。
英雄は食料調達作戦の会議に引き入れられ、銃を渡すように求められる。比呂美が人質になっていることを知り、会議を飛び出してそこに走る英雄。だが、比呂美が感染者だとバレてしまう。サンゴが比呂美を狙い、伊浦と英雄はお互いを狙い合う。だが、伊浦を撃てない英雄。伊浦はちゅちょなく、ボウガンで比呂美を撃つ。彼女は倒れてしまう。
だが、藪は下に落とされるはずだった比呂美を回収してボウガンの矢を抜き、「脈がある。ZQNには脈がないから、彼女はZQNじゃない」と英雄に主張。そして、自分が看護師として人を救えなかったこと、感染者を置いて逃げたことを懺悔する。

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サンゴは伊浦に反旗を翻す。サンゴが銃を持ったことで、伊浦はリーダーから転落してしまい、武器のボウガンは没収されてゴルフクラブになってしまう。彼らは食糧倉庫に向かうが、伊浦が裏切り、倉庫にZQNが集まるように仕向けてくる。そのため、次々と仲間が襲われていく。

※原作では、むりやり銃を奪われそうになる→駆け引きの材料として自ら、比呂美が感染者であることを暴露するのですが、映画では流れでバレる。
※映画では藪が「人間を殺さなかったアンタは偉い」と英雄を励ます。
※原作では、伊浦はサンゴに銃を譲る。あくまでサンゴをたてつつ、実権は自分が握っている。
※原作ではモールを脱出した後に比呂美の手術をするが、映画ではモールの屋上でボウガン抜いちゃいます。すごいなあ、感染症とか大丈夫なのか。
※映画では、食料調達に行く人間が異様に多い。また、オリジナル展開として伊浦が裏切り、食料庫があるスペース(地下駐車場)の電気をつけ、BGMでZQNをおびき寄せる。また、原作ではフードコート内に侵入するが、映画内では地下駐車場脇にある食料庫に侵入する。
しかし、ショッピングモールの食料庫にどん兵衛とかカップ焼きそばとかがあるのはなぜでしょうか。

ZQNが次々と彼らを襲う。英雄はロッカーに隠れるが、他の仲間は逃げ続ける。サンゴも襲われて銃を落とす。
高飛びZQNが屋上に飛び込んできて、1人の女性の内臓を引きずり出し、もう1人の女性の頭を握りつぶしてクラッシュさせる。
どうしたらいいのかわからない英雄だが、トランシーバーから藪が助けを求める声が聞こえてきて、勇気を振り絞ってロッカーから飛び出す。腕を噛まれる英雄だが、袖をまくるとそこにはロレックスがあった。
藪と比呂美はこっそり屋上から降り、逃げる。そして地下駐車場で伊浦と遭遇するが、彼は既に感染していた。自分の目を抉り、藪を追いかけてくる伊浦。
だが、それを殺したのは英雄だった。
「は~い」
彼は淡々と伊浦を射殺する。
そこに、生きていたサンゴとアベも合流して、5人は逃げる。

※ロッカーから出るシミュレーション妄想では、英雄が鼻を食いちぎられるシーンなどもあります。
※高飛びZQNの戦闘力が高すぎる。頭をクラッシュさせるとは……
※原作では調理場の棚に隠れますが、映画ではロッカーです。また、ブライが登場しないため、自分で決意して飛び出すという展開。
※ロレックスを腕にたくさんはめていて、そのおかげで感染しないで済んだ!というシーンでは劇場で笑っていた人が多かった気がする。ただ、個人的にはスピリッツを巻いていて「漫画が俺を守ったんだ!」という展開かと思っていた(中田コロリの漫画を読むシーンで、実際にスピリッツを購入するシーンがあったから期待した)。
※伊浦の自慰シーンはなかった。また、屋上ではなく地下駐車場に設定が変更されていたうえ、映画では藪の車ではなく伊浦の車になっています。しかし、伊浦は自分の車を捜すのに監視カメラを使って「あっ、これだ」とか言ってたんですけど。フツー、どこに停めたか覚えてない?
※原作では比呂美が伊浦を殺しますが、映画では英雄が射殺します。
※原作ではサンゴはクズ人間ですが、映画内でもそこそこクズです。しかし、戦闘シーンまで生き残ります。アベさんはZQNを引き連れて戻ってくるトラブルメーカーおじさん。

通路にて、ZQNに挟み撃ちにされた英雄たち。比呂美を隅に非難させ、英雄たちは戦う。
だが、サンゴはあっけなくZQN化した仲間に噛まれ、大量のZQNにむしゃぶりつかれ、英雄に自分を撃つように懇願する。また、アベも感染するが、その相手は自分の妻だった。一瞬意識が戻るアベ妻だが、また彼に食らいつく。アベは彼女をボウガンの矢で貫き、自身も自殺する。
片足が撃たれてちぎれても走り続けるZQNも登場し、巨漢のZQNに体当たりされピンチになる英雄。だが、諦めずに何度も何度も銃を撃つ。
なんとかZQNを始末したが、そこに高飛びZQNがぽろりと落ちてくる(理由は不明。マップも不明)。彼は異常に強く、撃たれても撃たれても立ち上がる。頭を撃っても死なない彼の頭を、英雄は銃尻で砕く!

※比呂美、マジで何もしません。ぼーっと座ってます。
※アベの自殺死体は象徴的に映し出される。でも、ボウガンをノドに撃つって全然死ねなさそう。あと、妻との意思疎通のシーンは必要だったのか。
※ここはZQNショーでもある。人体損壊たっぷり、血のりたっぷり(CGはかなり自然です)。あと、超デブZQNを楽しむ映画。
※オリジナル展開の高飛びZQN=ボス。強いのはまだしも、理由がわからない(原作では戦闘型ZQNは強いということに一応なっているが、映画はなんもねぇ)ので理不尽さがあり、なんかイライラする。

彼らは車で脱出する。それを、屋上のZQNたちが見ている。
車の中で自己紹介する英雄と藪。
「僕は、英雄です。ただの、英雄です」
画面は徐々に白くなっていき、全てが白に溶ける。

※マジでこういう終わり方です。原作では「あんた、ホントにヒーローじゃん」と笑われるシーンがあったような気がするのですが、私は映画のラストに気を失っていたのかもしれません。
「マジでこれで終わるの?こんな能天気な感じで?」と思っていたのは事実。
※比呂美、ここでも置物化。

感想まとめ

とにかく、原作と違うところを連ねればキリがないのですが、それも実写化映画の楽しみではあります。ただ、非常に残念なのがこの映画、「人間がゾンビになってもりもり人を食べる」ことに終始しており、2016年4月現在で20巻まで出ているコミックスを読むと、かなり見解にズレがあるような気がします。そもそも、この世界のZQNは「感染者=仲間を増やしていく」ことが目的であり、「人を食う」ことが目的じゃないと思うんだけど。その点においてこの映画は単なるゾンビ映画であり、ダメなおじさんが銃を撃って頑張る話以上でも以下でもないという印象。しかも「アイアムアヒーロー」からちぎれそうになるほどの孤独とか、絶望がなかったらフツーのモール×ゾンビ映画になっちゃうよ!
個人的に大好きな電車のシーンや、「村井くんのベーコン!」というシーン、比呂美とZQN化した紗衣のシーンなど、いい場面はたくさんあるのに。予算とか都合とかあるんでしょうけど、なんだか悲しい。
ビジュアルはすごくいいです。ひとつひとつ丁寧にZQNが作られており、「不安の種」もこれくらいやってくれればいいのに。という気持ちにありました。このビジュアルを見るために1800円払ったと思うと、途端になんだか心が華やぎますね。

この映画におけるおすすめのポイント

・ZQNのビジュアル
・ハマリ役のキャラの演技(タクシーのおじさん、漫画家の松尾など)
・大泉洋さんの演技はやっぱりスゴイ
・メイプル超合金さんは面白かった。見て得した気分。

この映画における謎ポイント

・てっこが嫌な性格(という描写しかなかった)だったので、全然愛情を感じられなかった。原作で歯を集めるシーンとかうるっときたもんですが。
・そもそも、感染後のてっこって別人じゃね?ってくらいすごいメイクでした。原型がない。
・街中のZQNシーンが全然怖くない。
・塚地さんのマジキチ演技に飲まれる。マキタスポーツさんの演技もよかった。
・風間トオルさん好きだけどさ、この映画になんで呼んだの?ってくらいの配役。
・玉突き事故が凄惨すぎて泣けた。ただし、人が全然いなかったという違和感。
・英雄と比呂美の関係性が薄いまま比呂美が感染するうえ、英雄が不器用なせいで損をしやすい性格だけど、人間味があるということも説明されていないので、結局なんで守っているのか説得力がない。
・久しぶりにipod見た。今の女子高生、ipod持ってるの?
そして聞いている曲が「峠の我が家」っていうのも渋いですね。
・「富士山に行けば……天国がある……」って漂流教室のセリフを思い出しました。
そして「富士山を目指す」という目標は、モールについた時点でなくなります。あれ?このモール、富士山との位置関係どうなってるの?どう考えてもわからない。
・モールを目指して歩いているシーンに洋楽をかぶせる「ウォーキング・デッド」状態。
・キャットフードが好きになるっていう設定はなぜ入れられたのか?別に伏線でもないし。
・富士山目指して、彷徨いすぎて英雄がヒゲボーボーになっていたのにはちょっと笑った。
・「モールの闇」をチラつかされましたが、屋上で他に生活している人が暢気すぎて説得力ない。カップルで雑誌読んでるエキストラもいたし。デートかよ。
・藪が性処理をしていた描写はないものの、伊浦のセリフで説明はあります。だけど、差別的なムードも全然ないので(言うことを聞かない女性は下に落とされた、と原作では説明された)やはりゆるーいムード。
・比呂美が全然役に立っていない。セリフも言っていない。動いてない。忙しいからあまり撮影に参加できなかったのか??
・藪さんのキャラが明るい普通の姉ちゃんでした。もっと卑屈でヤンキーっぽい藪さんが見たかったなあ。長澤まさみさんは嫌いではないけど。
藪さんの気持ちを語るシーンとか、「今それダラダラ喋る?」みたいな感じがしたのも事実。
・登場人物が持っている刃物が全然切れなさそうで泣いた(コントの小道具みたいだった)。そら、やられるわ。
・高飛びZQNをそこまでフューチャーしなくても……。
ちなみに、高飛びZQNが屋上まで飛びあがってくるシーンはスローモーションです。うわあ、怖い。でもなく、うわあ、すごい。でもなく、うわあ、マヌケ。としか思えない私はスレているのでしょうか。
・最後の戦闘シーンの迫力はすごい、血のりヌルヌルだし(地面が真っ赤)、ヘッドショットのCGもすごいなあと思う。ただ、やたらと長い。
・前述しましたが、ボウガンを喉に刺しても苦しいだけで死ねなさそう。
・ラスト、だんだんと白く溶けていく大泉洋さんが一番怖かった。

しかし、最後に脱出しただけで何にも解決していないのに、ZQNがウヨウヨしているなかに飛び出していってニッコニコの藪さんは頭おかしいと思いました。食料も水もないし。比呂美ちゃん、ずーっとボケーッとしてるし。比呂美ちゃんはZQNじゃないのよ!と言い合って終了されても、困ります。あと、EDMが「峠の我が家」(アメリカ民謡)にした理由もわからない。とりあえず、ZQNという言葉を流行らそうとしている人は大量の冷水を浴びたほうがいい。マンガの中のネットスラングを現実に流行させようという交通渋滞ぶりに気付きましょう。