「ムカデ人間3」

mukadeningen3

2015年の「ムカデ人間3」を見ました。アメリカ/オランダ映画。
・カルト映画として名高い「ムカデ人間」の最終章
・今までで一番長いムカデだぞ!○○人間もおニューで出すぞ!
・1の主人公と2の主人公がW主演、1でムカデにされた北村さんも囚人役で出演
に、しても。高橋ヨシキさんもテンション高くコメントしていらっしゃるし、悪趣味映画として語り継がれる作品ではあると思うのですが、このテンションの上がらなさはなんだろう。「2分に1度は出てくる下ネタ」「ポップで狂った会話の中に潜むB級感」は別に良いのですが、このモヤモヤについて考えてみた結果、「私はもっと怖がりたかったんだ」ということに気が付きました。
そりゃあつなげたりつなげられたり食糞したりするのは不快ですが、怖いかって言われるとそうでもない。この映画に関しては「罪を償うべきなのにまったく悔い改めない」囚人たちにも効果的な罰を下そう→そうだ!ムカデ人間だ!という展開があるのです。

ホラー映画において、恐怖は平等であるべき。だからこそ、「悪いことをした人間はムカデ人間でお仕置きだ」という展開ではなく、“たまたま”ムカデ人間に“選ばれてしまった”という恐怖は変えないでほしかったなあ。
しかし、2で主人公を演じたローレンス・R・ハーヴィーさんが「おそいひと」の演技を参考にして「ムカデ人間2」を演じていたのかという新事実を知ったり(もしかしたら忘れてた可能性もあるけど)、シックス監督って妹と映画作ってたのか(映画HPに「変態兄妹」と書かれていたが、別にご本人たちは変態ではないだろう)と初めて知ったり、いろいろ面白いプロジェクトではあったよ。

あらすじ

人間同士をムカデのようにつなげるという尋常ならざる欲望に取り憑かれた変態男の恐るべき所業を描き、世界中で物議を醸した悪趣味ホラーの第3弾にして完結編。出演は前2作に登場したディーター・ラーザーとローレンス・R・ハーヴィー。監督は引き続きトム・シックス。
アメリカのとある刑務所。暴動が頻発し、医療費も離職率も全米最悪で、州知事から解雇を迫られている所長のビル・ボス。何か良い案はないかと試行錯誤していた彼に、部下のドワイトが自分が好きな「ムカデ人間」シリーズを真似てはどうかと提案する。やがて、500人の囚人全員の肛門と口をつなげる前代未聞の一大実験が実行に移されるのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=352865

ネタバレ

「2」の映画のラストから始まる。
(「1」の映画を見ているラストから始まる「2」同様、パラレルワールドをつなげてそれぞれの作品を関連付けているのは、続編の作り方としては面白いし、作りやすそうだとは思う)

刑務所長のビル・ボスは、経理を担当するドワイトと秘書のデイジーを圧倒するほどのクレイジーな男。秘書にはしょうもないセクハラを繰り返している彼だが、もっとも憎んでいるのは囚人だ。

囚人には嫌われまくってるボスは、反抗的な態度の囚人の手をケガさせる。彼らを拷問したくてうずうずしているボス(なぜか「干したク○○リス」を通販で買っているシーンもある)。
しかし、囚人から嫌がらせを受けると怯えてしまうこのボス、実は小心者だ。しかし、この囚人にはしっかり仕返しをして、顔に熱湯をかけてしまう。

知事のヒューズ(サンドラ・ブロックの兄!)がやってきた時には、ボスはごまをすりまくる(BGMでアメリカ国歌のパロディが流れる)。だが、知事には散々怒られるボス。

外に囚人を集めてスピーチをするボス。もっとも反抗的なタトゥーの男を見つけ、彼の去勢をしてしまう。そのタマをランチに食べるボス。オエッとなっているドワイト。
ドワイトは秘書のデイジーを愛している。だが、デイジーは父を釈放してもらった恩で、ボスの“奴隷”として生きるしかない。

常識人にも思えるドワイトだが、彼は「ムカデ人間」の大ファンであり、これを再現することで犯罪抑止になるはずだとボスに訴える。だが、ボスは囚人の“タマ抜き”をするべきだと考えている。刑務所の医師は無免許なので、やはりボスのなすがままだ。
タトゥーの男は合併症かなにかで死にそうになっているが、ボスは彼を生き返らせるように指示する。苦痛を与え足りないのだ。
トイレでは、裸の男が震えている。

ドワイトは「ムカデ人間」の監督を刑務所に招いている。だが、ボスはプロジェクトに乗り気ではなく、ドワイトを怒らせる。彼は出て行ってしまう。去り際に、涙を流しているデイジーにハンカチを渡すドワイト。

1人でいるボスは、気が付いたら囚人に囲まれている。具合が悪くなったフリをする彼だが、タトゥーの男にデス・レイプをされることになる。腹を切り、その穴に性器を突っ込まれるのだ。「デス・レイプ!デス・レイプ!」
囚人たちは囃し立てる。強姦され、もだえるボス。だがそれは夢だ。

トム・シックス監督が訪れたことで、ドワイトは戻ってくる。医学的な問題はクリアしており、囚人に手術をすることも可能だ(ただし、出所できるように工夫する必要があるが)。

囚人たちに映画を見せ、同じことをすると宣言するボス。もちろん、暴動が起こる。ボスとドワイトは所長室に立てこもるが、ボスだけ窓から逃げてしまう。ドワイトは銃で立ち向かうが、デイジーは囚人たちにボコボコに殴られてしまう。

元通りになった後、囚人たちを麻酔で眠らせるボス。
「デス~レ~イプ~デスレ~イプ~ 目には目を~歯には歯を クソ野郎ども~跪け」
ボスは踊り狂う。

医師と最終的な打ち合わせをするボスとドワイト。慢性的な下痢男は、反抗的なタトゥー男とつなぐことにする。
「復讐とはなんと素晴らしいものなんだ」
ボスはうっとりする。人工肛門の男もいるが、この男は役に立たないからと殺す。車イスの男もだ。そして、ぐったりしているデイジー(なぜか、囚人たちと同じ病室で寝させられている)に挿入する。ドワイトがデイジーを愛していると知っているのに。

知事へのアピールを練習するボスとドワイト。と、そこにトム・シックス監督が訪れる。実際の手術を見学しにきたのだ。
囚人たちのいるスペースを通り抜けようとしたら、食糞癖のある男が「俺もムカデ人間に入れてくれ」と騒ぐ。だが、ボスはこの男を撃ち殺す。
「喜んでつながりたがるヤツなんて、いらねぇ~!」
監督は目の前で起きたことに驚き、引く。

切開ではなく、糸で肛門と顔を接合する手術が行われている。「ビンビンビビン~♪」と歌う陽気なボス。ムカデ人間以外にも、手足を切断されている人たちもいる。彼らは果たして、どういう姿にされるのか?

ボスは血圧が下がって健康になっている。
そして、州知事が訪れ、彼にムカデ人間を見せるボス。先頭はボスが腕をケガさせた黒人の男だ。下痢男とタトゥー男がつながっているのも見える。
ボスはこの光景こそ「平和」(平等)だと語る。だが、ドワイトはそのなかにデイジーも混ぜられているのを発見する。「性差テスト」とごまかすボス。デイジーは助けを求めるが、ドワイトは今は応じられない。

さらに、終身刑や死刑の人間は手足を切り落としてつなげた「イモムシ人間」になっている。刑を終えた男はひどく怯えていて、もう犯罪に手を染めることはないだろう。

しかし、知事は起こって出ていく。取り残されたボスとドワイト。手術が成功したことを確信している医師は「いつ全米をまわりますか?」(他の刑務所にも同じ手術法が取り入れられたら、“全米(の刑務所で説明)ツアー”をすることを約束していた)、ボスに撃ち殺される。

絶望の最中、突然州知事が戻ってくる。そして「諸君、これこそアメリカに必要なものだ!」と叫ぶ。「君は正しい!天才だよ!」州知事は出ていき、ボスとドワイトはハグする。だが、そのハグの途中、ボスはドワイトを射殺する。

ボスは1人でムカデ人間を眺めながら、咆哮している。

感想

・1と2を見ていないと、さっぱり話がわからない気もする
(そんな人はいないとも思うが)
・ラストも妄想かと思ったら違いました(まあ、断言はできませんけど)
・オールスターらしく、ばかばかしく華やかな最期だったからいいんじゃないでしょうかね。