「ピエロがお前を嘲笑う」

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2014年のドイツ映画「ピエロがお前を嘲笑う」を見ました。この映画はすごくいいですね。
・天才ハッカーがある事件に巻き込まれる
・しかし、その事件には裏の裏があった
面白い映画です。

※非常に面白いミステリーですので、未見の方は先に作品をご覧になることを強くお勧めします。

あらすじ

突然警察に出頭した天才ハッカー青年を主人公に、彼の語る事件の顛末と、その自白に翻弄される捜査の行方を、予測不能のストーリー展開で描き出すドイツ製クライム・サスペンス。主演は「コーヒーをめぐる冒険」のトム・シリング。監督は、これが長編2作目となる注目の新鋭バラン・ボー・オダー。
ある日、殺人事件への関与を疑われ国際指名手配されていた天才ハッカー、ベンヤミンが自ら警察に出頭してきた。その自白によれば、きっかけは、想いを寄せる女性マリのために試験問題を入手しようとしたことだった。その後、野心家のマックスと出会い、2人を中心にハッカー集団“CLAY(クレイ)”が結成される。遊び半分に手当たり次第にハッキングを繰り返し、世間の注目が高まっていくことでいつしか有頂天に。やがて不用意なハッキングがもとで殺人事件が起こってしまったというものだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353426

ネタバレ

こんな結果になるとわかっていたら、違う行動をしていたはずだ
透明人間のままでいた 名無しのままで
でも今は名前がある 最重要指名手配ハッカー
Who am I? 僕はベンヤミン これは僕自身の物語

ホテルにある死体を見つけるベンヤミン。そこにはそれぞれ、薬莢が落ちている。

出頭してきた彼。担当官にある女性を指名して話を続ける。

全てはつながっている。
それらは1本の糸ではない
張り巡らされた網(ネット) それに僕は捕まった

スーパーヒーローは両親を失っているものだ。母は自殺、父は失踪。祖父の形見は、戦争の戦利品である薬莢3つ。彼は面倒を見てくれた祖母の世話をしながら生活している。

「問題は細かいところなんだ。ハッキングはトリックと同じ。人を欺くもの」

ベンヤミンは14歳からネットを楽しんでいる。集中力が欲しい時は、リタリンという薬を飲んで手中する。憧れのハッカーはMRX。だが、現実の彼はピザ屋のバイトだ。学生の頃から憧れている同級生・マリは大学に通っている。彼女のために大学にハッキングして、試験問題を盗もうとする。だが、あっけなくバレて奉仕活動を命じらえる。

そこで出会ったのがマックス。ベンヤミンの運命が一気に変わる。

ハッキングが得意なベンヤミンを、マックスは仲間と引き合わせる。ソフトウェアの天才でスリルと刺激を求めてタトゥーだらけのシュテファン。ハードオタクで、両親に愛されない生活のせいで笑えなくなったパウル。
ベンヤミンは彼らに能力を示すことになり、その場であたり一帯を停電させる。しかし、実は勝手に知らない人の家を使ってパーティを開催していたマックスを逮捕すべく、警察が登場する。マックスたちは逃げ、マリをも巻き込んでベンヤミンも走る!

思いがけず楽しんだベンヤミンだが、帰宅すると祖母が徘徊している。彼女は施設に入ることになる。

マックスとつるむようになったベンヤミン。マックスはドーナツ屋にクレームを入れて、ドーナツ数個を巻き上げる。「大胆にやるのが大切なんだ」「勝つためには大胆に」というマックス。

彼がグループに加わることに、パウルは特に反対する。そのため、ある集会に潜りこんでヒトラーをバカにする映像を流すイタズラに参加させられるベンヤミン。焦りつつも堂々とPCをいじり、その場をパニックに陥れる彼ら。追いかけられるも、なんとか逃げ出す。この時に、シュテファンが持っているはずのカギをなぜかベンヤミンが持っているという不思議な出来事がある。

彼らはチーム名を「CLAY」にする。「Clowns Laughing At You」(ピエロがお前を嘲笑う)の略だ。彼らは次々とイタズラを繰り返す。金融番組の株の高低を中指を立った手の形にしたり、集会に侵入したことも話題になったり、ネットでホットな存在になる。

ベンヤミンはマリとスーパーで再会するが、全然うまくしゃべれない。

CLAYはMRXに無視される。彼らはスーパーハッカーにとってはどうでもいいような存在のようだ。

マックスとシュテファンは、ラジオ番組にハッキングしてポルシェの懸賞クイズに当選する。パウルは最初嫌がるが、ドライブに出かけることに。思う存分楽しむ。しかも女の子をナンパして、ドラッグに酒にと弾ける。ベンヤミンも思いきり楽しむ。

その頃、ユーロポールに凄腕の女性がやってくる。MRXのことを調査しに来たのだ。

その勢いでマリのところに行くベンヤミン。彼女はわざと試験に失敗したという。「自分の可能性を狭めている気がして」と、大学に残ることを決めたマリ。彼はマリにキスできない。マリは「ポルシェに似合う」と白バラを置き、去っていく。

MRXに小物扱いされ、怒り狂うマックス。
CLAYは情報連邦局に侵入するために、ゴミの山から事務員宛のカードを探し出し、彼女にメールを送ってひっかける(猫の写真満載のサイトを教えると言って)。そして、ハッキングして清掃員のIDを発行する。

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深夜、情報連邦局に侵入する彼ら。マックスは戦利品としてフクロウの置物を盗む。彼らは無事に成功する。局員のリストをMRXに渡して、認めてもらうのだ

だが、その祝いをしている最中、ベンヤミンは酔ったマリがマックスとキスするところを見てしまう。

そして、フレンズというハッカー集団のメンバー・クリプトンが死んだことがニュースで報じられる。タイミング的に、CLAYが彼の素性をつかんで殺したように見える。

「イメージにとらわれすぎたばかりに、真実が見えないことがある」

MRXはロシアのサイバーマフィアにデータを売って、クリプトンを殺した。そして、その罪をCLAYになすりつけたのだ。

ユーロポールの女性は事件を調べているが、あまり立場が良くないようだ。彼女はなんとしても犯人を捕まえなければいけない。左遷されないためにも。

マリがベンヤミンを訪ねてくるが、彼は冷たく追い返す。そして、CLAYでMRXを見つけて罠にかけることを誓う。
そのためにも、証拠隠滅するベンヤミンたち。マックスは改めて彼に謝罪する。

その後、彼らは家を燃やす。たまり場代わりになっていた祖母の家が燃えていく。

ハーグにあるインターポールに向かうCLAY。だが、もちろん入ることはできない。
ベンヤミンは単独、学生のフリをして、忘れた財布をとりに入れてくれと警備員に頼み込む。そして、インターポール内に侵入する。

しかし、マックスもシュテファンもパウルも、全員死んでしまった。
ベンヤミンはマリにどこか遠くに行こうと持ちかける。

だがベンヤミンは出頭した。

ユーロポールの女性は、ベンヤミンの話に違和感を覚える。
ベンヤミンは手を怪我していた。しかし、彼の話の中では、手のケガをしたのはマックスのはずだ。さらに、マヤに聞きこみに行くと「ベンヤミンなんて知らない」と怪訝な顔をされる。マイケルの盗んだフクロウは、ベンヤミンの部屋にある。

ベンヤミンの担当医を訪れると、彼の母が精神障害を患っていたことがわかる。解離性同一障害として、4人の人格を抱えていたという母。もしかして、ベンヤミンもそうなのではないか。マイケルの手のケガと同じケガを、ベンヤミンガしていること。集会にイタズラに出かけた時、シュテファンの持っていたはずの車の鍵をベンヤミンが持っていたこと。パウロの境遇。彼らはもともと存在せず、全てベンヤミンの頭の中の話だったのではないだろうか。

証人保護プログラムは適用されないことになるが、彼の境遇に同情したユーロポールの女性は彼にハッキングを許す。彼は自らの書類をハッキングで書きかえる。そして、ベンヤミンは逃がされる。

フレンズやMRXは逮捕され、それは全てユーロポールの女性の手柄となる。

ベンヤミンは船に乗っている。そしてその横には……マックスやシュテファン、パウル、マヤもいる。

彼らは逃げるために策を講じたのだ。ベンヤミンがインターポールに侵入したとしった他の3人は、パニックになる。だが、誰よりベンヤミンを拒絶していたパウルが言う。
「俺達は仲間だろ。見捨てたりするかよ」
だからこそ、彼らは協力した。ベンヤミンの話にわざと穴をたくさん作り、彼が精神病患者であるように見せかけた。同じ位置にわざとケガをしたりもした。マヤに協力を頼み、法律について勉強した。そしてMRXを引っ掛け、インターポールをも騙した。
そして仲間が死んだのに、死体は存在しないというミステリーを生み出したのだ。その時に使った薬莢は、祖父の戦利品だ。

「僕らは透明だ」

マックスはユーロポールの女性が彼らを訴えるのではないかと訝しがる。
「あの女が気付いたら?」
「もう気付いているよ」
彼女は気付いているが、自分の成功が偽物だとはとても言えない。

ベンヤミンは海を見つめながらつぶやく。
「トリックはいらない」

感想

・キャラクターがそれぞれユニークでいい。マヤのヒロイン感が薄いのもドイツ映画っぽい(適当)。
・正直、「この謎は誰にも解けない!」なんてことはないのですが(正直、映画をたくさん見ている人は思いつく結末ではあるような)、そこにたどり着くまで、そして最後のオチまですべてが洗練されていて、ちょっと寂しげなのがいいですね。セリフのひとつひとつにゾクリとするような瞬間があります。映像が大胆なのも魅力的です。
・メモの中でインターポールとユーロポールが混ざって大変だった。銭形警部がいるのがインターポールです。