「ウォーキング・デッド」シーズン6・第11話のネタバレ

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第11話「未知なる世界」ネタバレ

サシャとエイブラハムが、アレクサンドリアの塀の中に入ってくる。
「俺達は砂漠でタマを掻いてた。敵からは丸見え、汗まみれでグチも出る。周囲30キロ、何もないところで“コブつき”が鍵をクソで出すのを待った」
「ラクダが鍵を?」
「食ったんだ、そしてクソで出した。本当さ」
エイブラハムとサシャがおしゃべりしながら歩いている。
「バカね」
「否定はしない」
子どもたちが笑いながら通り過ぎていく。
「新世界だ、マギーが子供を生むとはな。こんな世界で」
「どうして?」
「何が起きるか―わからない」
「そうね、だからかも。こんな世界だから」
エイブラハムは黙る。そして笑う。
「バカにはわからん」
「その通り」
「また明日」
サシャは彼を呼び留める。
「いいえ、担当が変わった。私は監視台に立つ」
「そうか」
「ユージーンがもっと貢献したいって。あなたと巡回する」
「そういうことか」
「ええ、そういうこと」
ユージーンは名残り惜しいのか。
「またな」
「ええ」
サシャも寂しそうに見える。
「またね」
2人はピースサインを交わして去る。
(シーズン6の1話でも、2人がピースサインを交わしているシーンがある)

「ねえ、エイブラハム」
ベッドにいるロジータと、ピースサインをしているサシャが交互に姿を現す。
「ねえ、何考えてる?」
エイブラハムはぎくっとする。ロジータは目の前にいた。エイブラハムは優しく彼女の腰を触り、微笑む。
「ユージーンが巡回する」
「銃の分解方法を教えた。彼は私に化学(ケミストリー)を」
2人は優しく手を握り合う。
「相性(ケミストリー)は教えるもんじゃない」
「そう?」
ユージーンは彼女に熱烈なキスをする。
「さっきはすごかった。言葉では―表せない」
「そうね」
何度もキスする2人。ロジータは立ち上がり、彼に何かを投げる。
「給油車のブレーキランプが割れてた」
「作ったのか?」
「首元が寂しそうで」
ブレーキランプで作ったペンダントだ。
「ロジータ・エスピノーザ。お前はほぼ完璧だ」
「つけてみて。シャワーで(待ってる)」
「すぐ行く」
ロジータはシャワーに立つ。エイブラハムはペンダントヘッドを見つめながら、やはりサシャのことを思い出している。

次の瞬間、泥に棒を突き刺さる。マギーが深夜に農作業をしているのだ。グレンもやってくる。
「支柱で垂直に育てれば、倍の量のトマトを作れる。配給を増やしたいけど、まだ芽が出ない」
「大丈夫だ、育つよ。心配するな」
と、物音がする。グレースたちがどこかに駆け込んでいく。マギーとグレンも追いかける。

脱走したジーザス(あだ名ですが、そう呼ばれているのでこの名前で今後は統一します)は、リックの家に飾られている絵を見ている。壁から外して、それを見ながらぼんやりする彼。すると背後から、カールが現れて銃を突きつける。
「うちで何してる」
「階段に座って絵を見ながら、君のママとパパを待ってる。俺の名はジーザス」
そこにリックとミショーンが出てくる。階下から、ダリルもやってくる。グレンやマギーも、エイブラハムも。
「話そうと言ったな。話そうじゃないか」

既に朝になっている。テーブルを囲み、ジーザスと名乗る男をリック、カール、ダリル、グレンとマギー、エイブラハム、ミショーンが見つめている。
リック「どうやって外に出た?」
「出口2つに警備1人。窓があるし、縄をほどき鍵も開けられた」
リック「なるほど」
「武器庫を見たよ。よく揃えたな。武器は豊富だが食料は少ない。何人住んでる?54人?」
マギー「もっとよ」
「うまいクッキーを作った人は?」
ダリル「今はいない」
「出会いは最悪だった。だが同類だ。生きている。置き去りにもできたのに、そうしなかった。俺の住む町は―取引相手を増やしたい。車を奪ったのは、君たちが厄介な人間に見えたからだ。だが、俺が間違ってた。いい人たちだ。協力し合えると思う」
グレン「食料が?」
「家畜を育ててるし農園もある。トマトや穀物のソルガムも」
リック「信用できない」
「連れていくよ。車なら1日でつく。自分の目で確かめてくれ」
マギー「取引相手を増やすって、どこかと取引を?」
「世界が広がるぞ」
ジーザスは意味ありげに笑う。
※なぜか、キャロルとモーガンはこのエピソードにまったく登場しません。

ダリルは車の手入れをしている。カバンを下げたグレースが出てきて、ダリルに「オーツ麦のケーキよ」と渡す。
「複合糖質とオメガ3がとれる」
「遠慮しとく。途中で何か探して食べる」
「狂犬とか?」
グレースはちゃかす。
「ソーダのお礼か?」
「ええ。(あなた=ダリルは)知り合いに似てるし」
「うまそうには見えない。クソみたいだ」
と言いながら、ポケットにケーキをねじこむダリル。
「犬よりマシ。とにかく食べて」

カールはガソリンを補充している。そこに娘のジュディスを抱いたリックが来る。
「大丈夫かな」
「分からない。だが本当ならすべてが変わる」
ふと、ミショーンのことを言い訳するリック。
「ミショーンのことだが、なんとなくそうなった。昨夜だけだ。誤解しないでくれ」
「いいんだ」
カールは笑う。
「荷物をとってこい。(娘を)ゲイブリエルに預ける」
「僕は残る。誰かがここを守らなきゃ。この顔(片目にガーゼ)じゃ印象悪いし」
カールは妹を抱き、リックは車のほうに歩いていく。
「さっさと行こう」
エイブラハムが声をかけ、マギーやリック、グレンが乗り込む。

キャンピングカーに乗っている彼ら。グレンはマギーのお腹を押さえている。彼らは幸せそうだ。エイブラハムはグレンに話しかける。
「聞いても?」
「どうぞ」
「“生地”を流し込んだ時― “ケーキ”を作ろうと?」
「生地って……」
グレンは察して笑う。
「子どものことは話し合って決めた。なぜだ」
「ただ……常に危険が潜み、先の見えない世の中だ。なのにそんな決断をするとは肝が据わってる」
「それは……何かを築こうと努力している。みんなそうだ」
「俺なら雨に備えて長靴を履く。“ゴム靴”さ」

運転中のリックはミショーンに手を伸ばし、握り合う。微笑みあう2人。だが、何かに気が付く。車が横転しているのだ。
「事故だ、転倒したばかりだろう」
車のタイヤ部分に巻き込まれたウォーカーたちが見える。
「仲間だ」
ジーザスは慌てる。車の下にもウォーカーがおり、蠢いている。まごまごするジーザスに、リックは銃をつきつける。
「ハメる気なら、覚悟しろよ」
「仲間が危険だ。彼らは戦いに慣れてない。俺を信じてくれ。銃を」
「ダメだ、足跡がある」

彼らはある家の前まで行きつく。
「中に仲間が」
「入るのか?」
「また爆竹かも」
ダリルは肩をすくめる。
「違う」
「仲間は助ける。お前はここで待て」
リックはミショーンと目くばせする。
「それが条件よ」
「君も」
マギーが見張り役で残ることになる。
「みんな気を付けて」
「気を付けるさ」
「急いでくれ」
リックはジーザスに手錠をはめる。
「口笛が聞こえたら、撃て」
「分かった」
他の人は家の中に入っていく。マギーは彼を見張る。

家の中では、ウォーカーの声がする。静かに歩くリックとミショーン。数人のウォーカーの姿が見える。すぐに彼らは処分される。
「出てきて、大丈夫よ」
彼ら男女はごく普通の人にしか見えない。
「ジーザスがいる、助けるわ」
ミショーンは彼らが武器を隠していないかチェックする。
「他には?」
「2人先に」

グレンとダリルのコンビも、ウォーカーに出くわす。静かに奴らを倒す2人。
「行こう、ジーザスがいる」
1人の男を見つけるが、彼は渋る。
「仲間を残していけない。事故でケガしてる」

エイブラハムは単独行動だ。ウォーカーの声がするなか、歩き続ける。ウォーカーの首根っこをつかんでナイフを刺そうとする彼だが、「やめろ」という声にそれが人間だと気が付く。
「おい、行くぞ!急げ!」
彼は怪我をしている男を抱えて外に出る。
「行くぞ」

リックはジーザスの仲間を乗せ、運転を続けている。
グレンとマギーは助けた男を見ている。彼は自分のリュックに薬をしまっている。
「私はハーランだ」
「マギーよ」
「彼は夫のグレン」
「医療品を運んでた。君は大勢を救ったよ」
グレンにお礼を言うハーラン。
「医師か?」
「そうだ」
「妊婦用ビタミン剤は?」
ハーランはその言葉を聞いてマギーを見て、にっこりする。微笑むマギー。
「君に?」
頷くマギー。
「実は産科医だったんだ。君には借りがある。当たりくじをひいたね」
グレンとマギーはまたにっこりする。

「大丈夫か?」
ケガをしている男に話しかけるジーザス。彼は放心している。
「一瞬だった。殺されると思った時、妻が見えた。とっくに死んだ妻が。ダメだと思った瞬間に現れたんだ。はっきり見えた」
泣きだす男。エイブラハムはそれを見つめている。

車はぬかるみにはまってしまったようだ。
「クソ。嵐が通ったようだ。動かない」
「心配ない、到着だ」
泥まみれのなか、降車する彼ら。
「ここが―ヒルトップだ」
アレクサンドリアのように、塀に囲まれているものが見える。彼らはジーザスの後ろを歩きだす。

「止まれ」
一斉に銃を向けるリックたち。見張り台からは、誰かが顔を出している。
「出てこい」
「ジーザス、どういうことだ」
「門を開けろ。ケガ人が」
ジーザスは見張りをたしなめる。そしてリックに謝罪する。
「悪いね、暇すぎてイライラしている」
「武器を渡したら開ける」
「奪ってみろ」
「みんな」
ハーランが割って入る。
「信用しろ、命の恩人たちだ。槍を下ろせ」
(ここの見張りは銃ではなく、槍をかかげている)
「リーダーをここに呼べ」
リックはジーザスに囁く。
「いいや、分かったろ。武器はとらない。こちらは弾切れだ。君たちを―信じる。信じてくれ」
銃を下ろすリックたち。
「開けろ」

門が開くと、そこにはのどかな世界が広がる。大きな館に家畜小屋、プレハブの家が並ぶ。
「本当にありがとう。いつでも来てくれ、そのトレーラーだ」
ハーランは怪我をしている男を運んでいく。マギーとグレンは顔を見合わせ、エイブラハムは門が閉まるのを確認している。
「電力会社の資材置き場から壁の材料を調達した。緊急事態管理庁(FEMA)のトレーラーだ」
「なぜみんなここへ?」
「このバーリントンハウスは30年代に州に寄贈され、歴史博物館として公開された。周辺50マイルの小学生が見学に訪れた。現代世界よりずっと前からある。世界が崩壊しても建ってると期待したのさ。上の窓から全方向を見渡せて、安全を保てる。中へ案内しよう」

建物の中へと導かれるメンバーたち。内装は豪華だ。
「こりゃすげえ」
エイブラハムも感嘆する。
「住居スペースに変えた。寝室以外もね」
「こことトレーラーに?」
「建物を増やす。子どもが生まれるから」
「ジーザス」
扉が開き、初老の身なりのいい男が姿を現す。
「おかえり。来客か?」
「彼はグレゴリーだ。町全体を管理してる」
「ボスだ」
リックは軽く会釈する。
「リックだ」
挨拶する暇もなく、「シャワーを浴びてこい」と言われるリック。
「無用だ」
「ジーザスが案内する。話はその後だ」
明らかにちょっと嫌な顔をする面々。
「清潔を保つのは大変でね」
「ああ、そうだな」
ジーザスが「こっちだ」と促す。彼らはついていく。

リックはマギーに「君が彼と話せ」と囁く。
「どうして?」
「話し合いは君のほうが最適だ」

街では、普通の生活が営まれている。アレクサンドリアのように電気が通っていないのか、洗濯板を使ったり、手作業で何かを作ったりしている様子が窺える。

エイブラハムとダリル。
「リックとミショーンはいつから?」
「さあな」
「身を固めようと―考えたことは?」
「柄にもない」
ダリルはさっさと立ち去る。エイブラハムはペンダントトップをいじりながら、それをシャツの中にしまう。

マギーはグレゴリーのもとを訪れる。
「グレゴリー」
「ナタリーだね」
「マギーよ」
「惜しいね」
「そうでもない」
「率直なところが気に入った、話をしよう」
マギーはグレゴリーの部屋に招き入れられる。そこに大量の本がある。
「ここが博物館だった頃、一度来たことがあった。商工会の集まりでね」
マギーは絵を見ている。
「前から好きな絵だ。まさか自分のものになるとは思わなかった。ずっとわたしを待ってたのさ」
マギーは笑う。
「ハーランを助けたそうだね。医師は貴重な存在だから礼を言うよ」
「夫が救った」
「彼に感謝しよう」
「ここは初めからこの状態だった?」
「そうだ」
「どうやっ生き延びてきたの?」
「私が有能だからだ。詳細は省くよ。君の街もここと似てるか?」
「少し違う」
「土地はあるが、作物が育ってないとか」
「これから育つ」
「何が?」
「キュウリやトマト」
「大豆やコーン、麻やソルガムも?」
「これからよ」
「だが武器は揃ってるようだ」
「豊富よ」
「医療設備はどうだ?」
「そちらは?取引しに来たの。材料は充分ある?」
「見ればわかるだろう。そっちは食糧事情が深刻だそうだな。食糧不足は混乱を招く。はっきり言おう。君らには何もないが、助けてやってもいい。だがタダとはいかない。どうだろう。労働力と引き換えというのは?君なら大歓迎だ。賢く美しい女性だ。わかりやすく言おう。悪いようにはしない」
「やめて」
「ハニー」
「ハニーなんて呼ばないで。弾がないんでしょ」
「誰が言った?」
「医療品も少ない。お互いに物資が必要よ」
「薬と弾をくれるか?」
「助け合うのよ」
「ナタリー、話は以上だ」
グレゴリーは立ち上がって、話を切り上げようとする。
「協力しましょう」
「助け入らない。そちらは?」
マギーは呆然とする。

ジーザスはリックやダリルと話している。
「取引したいが、必要なのは弾じゃない」
「そうか?」
「壁があるし、薬も入手した。望みは別にある」
「俺達にも望みが」
ダリルは主張する。
「食料だ、そのために来た」
「彼と話そう。説得してみせる。状況は変わる。君たちの街の状況も必ず好転する。彼に理解させるよ。数日待ってくれ」
「待てるわ」
ミショーンが断言する。
「ああ」
リックも同調する。
と、外があわただしい。男が入ってくる。グレゴリーも出てくる。
「戻ってきた」
男の言葉に、グレゴリーは眉を顰める。バタバタと出ていく男たちを追うリックたち。

仲間の男が2人と女が1人、戻ってきたらしい。
「イーサン、他の者たちは?ティムやマーシャは?」
「殺された」
「ニーガンか?」
「そうだ」
「取引した」
「約束より―少ないって」
気弱そうな男がつぶやく。
「まさか」
「クレイグが捕らわれた」
イーサンの後ろの女もそう言う。イーサンが続ける。
「あんたにメッセージを伝えたら、生きて返すと」
「(それを)言ってみろ」
「悪いね」
突然、イーサンと呼ばれていた男が、グレゴリーを刺す!
「放せ、仕方ないんだ」
イーサンを取り押さえるリックと、グレゴリーを抱き止めるマギーとジーザス。リックはイーサンをボコノコに殴り、イーサンの後ろにいた男にはエイブラハムがタックルするも、男に首を絞められる。窒息しそうになるエイブラハム。
「だからかも。こんな世界だから」
虚ろなエイブラハムの頭の中で、サシャの声がする。

その男を、ダリルが肩を脱臼させて倒す!エイブラハムは助かる。
「下がれ!弟は殺させない!」
イーサンが叫び、グレンはひるむ。リックの首にナイフを押し当てている男に、ミショーンが話しかける。彼女のほうをイーサンが向いた瞬間、リックはナイフを彼の首に刺しこむ!イーサンの血を浴びながら、リックはふらふらと立ち上がる。住人たちはこの騒動を遠巻きに見ている。
「なんだ」
血まみれのリックは少しふてぶてしく、そう発する。
「イーサン!殺したな!」
イーサンの後ろにいた男は絶叫する。
「グレゴリーと俺を殺そうとした」
イーサンの後ろにいた女が、リックを殴る。その女を、ミショーンが殴る。
「やめな」
「銃を捨てろ!」
見張りの男がかけつける。
「断る」
リックは銃を下ろさない。
「みんなやめろ!」
ジーザスが割って入る。
「終わりだ。イーサンは仲間だ。だが卑怯にも、俺たちを襲った。彼が悪い。彼らが止めた」
「どうすれば?」
「銃を下ろして。もう充分だ。わかってくれ、複雑な状況なんだ。時間をくれ」
リックは銃を下ろす。

ハーランがかけつけ、グレゴリーを見ている。エイブラハムは放心状態だ。
「おい。大丈夫か?」
ダリルが声をかける。
「ああ、気分爽快だ」
エイブラハムは笑う。ロジータがエイブラハムに贈ったペンダントが、そこにそのまま落ちている。だが彼はそれに気が付かない。

イーサンの遺体に抱きついて泣いている女が窓から見える。それを見ているのはマギーだ。ジーザスがグレゴリーの命に別状はないことを皆に告げる。
「どうなるの?」
「こんなことはめったにないが、落ち着いた」
「ニーガンといったな。ダリルたちが手下と遭遇した。誰なんだ」
「“救済者”のリーダーだ。壁を建てた直後に奴らが現れた。ボスの代理が来て、要求をのめと脅されたんだ。1人殺された。ローリーだ。彼は16歳だった。目の前で殴り殺された。俺たちに理解させるためだと。グレゴリーは対立を避けた。俺とは考え方が違うが、ここを維持し、みんなに好かれてる」
「彼が取引を?」
「半分渡した。物資も作物も、家畜の半分も“救済者”へ」
「見返りは?」
マギーが聞く。
「ここを襲撃せず、誰も殺さない」
「向こうを殺せば?」
ダリルも尋ねる。
「武器があっても戦い方を知らない」
「相手は何人だ?」
今度はリックが聞く。
「分からない。20人は見た」
「待てよ。ガキを殺され、すべて半分渡した?」
ダリルはくってかかる。
「たいしたことねえやつらなのに」
「何がわかる」
「1ヵ月前にそいつらを殺した」
エイブラハムは堂々とそう言う。
「バラバラにしてやった」
「俺達がやる。仲間を救い、ニーガンを殺す。そしたら取引するか?食糧と薬、牛1頭だ」
ダリルはやる気充分だ。ジーザスはリックを見るが「対立にはなれてるんでね」と返す。ジーザスは困惑する。
「グレゴリーに話す」

今度は住民たちが火葬をしているのが窓から見える。
「何もかも不足してる。俺たちにあるのは、自分たちだけ。力を貸す。それが取引だ」
「何かが犠牲になる」
マギーはぽつりと呟く。そこにジーザスがやってくる。
「グレゴリーが話すと」
リックが動くが、それを制するジーザス。
「マギーだ。彼女と話す」
「しっかりな」
「ディアナは正しかった」
グレンは応援し、リックはマギーの肩を叩く。
「癇に障ったらごめん」
「わかってる」
ジーザスは彼女にあらかじめ謝罪している。

マギーはグレゴリーの寝室に入る。
「暗くて悪いね。抗生物質のせいで、光がまぶしすぎるんだ。靴だよ。腸を握りつぶされているようだ」
「死なずに済んだ。私たちのおかげね。提案を聞いた?」
「君たちにできるのか?」
「今までも対処した」
「どうやって?」
「殺した。仲間を救うわ」
「救う価値があるか?兄貴に刺された」
「愛する人を救うためだった。恐れてたのよ」
「弱い奴だ。そんな遺伝子は無用かも」
「父は“怒りより許しのほうが強い”と」
「そうかも。クレイグが作る卵料理は絶品だしな」
「物資をくれるなら、彼を救い、ニーガンを永遠に葬る」
クスクス笑うグレゴリー。
「悪いね、なんだかおかしくて
さっきは労働力を要求したら腹を立ててた。立場逆転だな。優位な立場を利用する。それが取引だ」
「そうね。食料をもらうために私たちは働く」
「わかった、物資を渡そう」
「わかった」
「ジーザスに手配させよう。楽しいだろ?興奮する」
「半分よ」
「なんて?」
「半分渡して。ニーガンは今後も要求を増やすわ。もっと、もっと。そのうち何もなくなる。そうなったら?武器がなく、戦う人もいない。死んだも同然よ。今あるものの半分を渡さなければ―取引はなしよ。わかった?優位なのは私」
グレゴリーは小さく拍手する。
「おめでとう。取引は成立だ。腎臓も持っていくか?」
「いらないわ。望みは他に」

リックたちは物資を車に積んでいる。
「ニーガンより要求が多い」
ジーザスがこぼしている。リックの前に、イーサンと組んでいた男(エイブラハムを窒息させた男)が連れてこられる。
「なんだ」
「物資を運ぶ担当だそうだな。クレイグを救う」
「グレゴリーの首を差し出せと(命令された)」
「クレイグを救う」
「どうやって?」
「知ってることを教えてくれ。協力してほしい。一緒に来い」
「ああ、わかった」
男は承諾する。
「俺も乗せてくれ。世界を正したい。ナイフを貸してるし」
ジーザスもついてくるらしい。
「納得してるか?」
ミショーンは危惧している。
「激戦になる」
「俺達が勝つ。必ず」
「勝つわ」
ミショーンも車の中に入る。リックは、ひとり立ちすくむ。

マギーはハーランのもとで検査を受けている。グレンも横にいる。超音波の機械の画像の中には子供の姿が見える。手を取り合う2人。

車は走り出す。リックが運転する横の助手席には、イーサンと組んでいた男が座っている。グレンはミショーンに子どもの写真を差し出す。思わず笑顔になるミショーン。ミショーンはそれをダリルに渡し、ダリルはそれをちらりと見て、エイブラハムにも渡す。彼はグレンと目を合わせる。笑うエイブラハム。
背後にはヒルトップの街が見える。