「スティーブン・キング 血の儀式」

mercy

キング原作、「ウォーキング・デッド」の子役(成長しましたが)のカール演じるチャンドラー・リッグスが主演のホラーです。
個人的には雰囲気はかなり好き。キングらしい話です。

あらすじ

おとなしい少年・ジョージは、具合の悪くなった祖母の介護のため、家族で祖母の家を訪れる。だが、そこで祖父の死の真相や、その子供たちへの深い因縁を知ることとなる。

ネタバレ

「Love made me」
愛、我を作れり(ダンテ)

冒頭、子どもを抱いた女性の前で、その夫らしき男性がオノで自分の頭をかち割っている。

それから時は流れ、主人公のジョージが登場する。彼は内向的な少年で、バイオリンを演奏するのが趣味。彼は祖母に懐いており、彼女の助言でいじめっ子を石を入れたバイオリンケースで殴って撃退する。

彼の友達は、妄想のなかにだけ存在する美少女だ。彼女だけがジョージを慰めてくれる。

しかし、祖母が倒れてしまう。その後遺症のせいか、認知症が進行。家族の見分けがつかなくなり、暴れるようになる。そのため、彼らは介護のために祖母のもとへ足を運ぶ。ジョージにはシェフを目指す兄がいるが、いつも喧嘩ばかり。

なお、母は三つ子だが、叔父はろくでなしで祖母のために贈った金を使い込んでいる。叔母は精神病を患って入院しており、母だけが看護師の資格をとるために軍の学校に行き、早くに自立している。暴れまくる祖母に苦労する家族。だが、母は何かと助けてくれる幼なじみのジム(既婚者)にときめいている。

だが、叔父はジョージにこっそり語る。姉(ジョージの母)は軍隊に入り、早くに出ていったからあまりわかっていない。母(ジョージの祖母)は優しいところもあるけれど、豹変するとヤバイ。ジニー(ジョージの叔母)は恋人との交際を反対され、押し切ろうとしていたら森の中でクマに彼氏を惨殺された。その光景のせいで、精神科に入院している。でも、森の半分をなぎ倒しながら足跡を残さないクマなんているだろうか?何かが違う気がする、と叔父は囁く。

街に出て、神父に話を聞くジョージ。そこで彼は祖母が流産を重ね、妊娠できない体だったこと。しかし彼女は何かと取引をして、妊娠したということ。出産を経て、祖父は精神を病んでいったこと。そして、祖父は祖母の前で自殺した。
「次は君の番だ。君が祈る番なんだ」

しかし、帰宅すると祖母の面倒を見ていたはずの叔父が、死体となってドアの外に転がり出す。

神父は、祖母がどんな危機的状況も切り抜けたが、その反面どんどんイジワルになっていったと語る。

ジョージの頭の中の少女は「終わらせないと」と彼に囁く。

ジョージと兄は、床の下から本を見つける。「号泣の書」と書かれた本は、涙の塩分に反応して文字が浮き上がるらしい。ジョージの涙で、文字が浮かび上がる。その人の欲しいものを手に入れるための儀式についての文章が現れるが、兄が不気味がり、本を粉砕機に放り込む。だが、その粉砕機から兄めがけて、本の表紙のかけら(鉄製の表紙だった模様)が刺さる。

兄を病院に届けるため、母は出かける。祖母と2人きりになるジョージ。
そこから、祖母が彼を追いかけてくる!

ジョージはジムに助けられ、彼の妻にも優しくされる。だが、彼を送り届けようとするジムは豹変する。彼は祖母から何かを授けられているようだ。ジムは祖母の協力者だったのだ。

ジョージは車から飛び降りて逃げようとする。それを追いかけてくる途中、ジムは車に轢かれてしまう。ジョージにメッセージを送り、精神科を退院(逃亡?)してきた叔母・ジニーも、合流地点の車の中で死んでいる。ジョージはそれを知って、号泣する。

追い詰められるジョージ。だが、オノを持った祖父の亡霊も現れたり、次々と異常な事態が起こる。どうやら、祖母の体の中の何かがジョージの「肉体」を求めているのだろうか。
だが、ジョージは生き残るために戦う。「愛してるよ、おばあちゃん」
祖母は死んでしまう。その瞬間、彼の前にだけ姿を現してくれていた美少女が「私も愛してる」と言い残し、消えていく。「おばあちゃん……?」
彼にだけしか見えない少女は、祖母(彼女の意識?)だったのだ。

ジョージは願っている。「おばあちゃんの望んだように」
すみません、ラストはあんまり印象に残っていないのであっさりです。ただ、闇墜ちエンドではなかったので安心できたような気がする(子役が登場する映画で、暗い終わり方っていやですよね)。ジョージにしか見えない想像上の友達が、彼のアイデンティティを理解して守り続けた唯一の存在。でもそれが、悪魔と取引をした祖母のもうひとつの姿だった……というのがとても面白い設定だと思います。