「ブラック・ハッカー」

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2014年のスペイン/アメリカ映画「ブラック・ハッカー」を見ました。
この監督の「エンド・オブ・ザ・ワールド」という終末系映画がかなり好きなのですが、この映画もいいですね。

・POV視点、しかもパソコン内蔵カメラで話が進行する
・犯人が誰かわからないまま、延々と振り回される青年
・しかし、裏切りに次ぐ裏切り!利用されていたと思ったら利用していた?などなど、脚本が面白い映画です

あらすじ

「TIME CRIMES タイム クライムス」「エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」のナチョ・ビガロンド監督がインターネットの世界を舞台に、サイコパスのハッカーに狙われた女優の危機と、彼女を救おうと奔走する青年の運命を描いたサスペンス・スリラー。主演は「ロード・オブ・ザ・リング」「マニアック」のイライジャ・ウッドと「ガールフレンド・エクスペリエンス」のサーシャ・グレイ、共演にニール・マスケル。

人気女優ジルのファンサイトを運営する青年ニック。ある時、新作映画のキャンペーン企画で幸運にも彼女と会食できるチャンスを得る。ところが、ホテルの一室で待機する彼のもとにコードと名乗る男から“会食が中止になった”との電話が入る。お詫びにと彼のPCに送られてきたURLは、ジルを盗撮したライブ映像へとリンクしていた。その後ニックは、コードの巧みな罠にはまり、彼のエスカレートする悪質な要求の言いなりとなってしまう。やがてジル本人にもコードの魔の手が迫っていることを知り、必死で救出を図るニックだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=350236

ネタバレ

SFホラー映画のような展開がスタートする。スクリーンショットする動きから、これがネットで公開されている予告編だということがわかる。
ニックという青年は、挨拶動画を撮影し始める。ある女優のファンであるニックは、彼女と食事をできる権利をプレゼントされたのだ。それをレポートするための条件のひとつとして、自己紹介をするニック。わざわざ遠くからやってきたのだ。

担当者だという男・コードとネットを通じて会話するニック。お目当てのジルの記者会見のネット生中継を見るニックだが、ジルを上から隠し撮りしたり、彼女の携帯に勝手にハッキングしたり、やることがむちゃくちゃだ。さらに、ジルがエージェントと隠れて付き合っていることもわかる。ジルは共演者の俳優と付き合っているはずなのに、思わず秘密を知って驚くニック。

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実は、ジルは動画が流出した過去がある。セクシー動画やら、パンチラ写真などがネットを賑わせているらしい。そのせいで、彼氏(俳優)ともうまくいっていない。
仕事の予定もすっぽかすようだ。ニックとの食事も無視しようとする態度に、ネットを通じて彼も唖然とする。

しかも、エージェントの男がいるのはニックと同じホテル。カメラもあり、盗撮や覗きが可能だ。とりあえず、事態を見守ることしかできないニック。

コードがオフラインになった瞬間、謎の男たちが彼のパソコンに侵入してきて話しかける。「俺たちは君の役に立ちたいんだ、ネバダ!」ネバダとはいったい、どういう意味なのか?

エージェントとジルが合流するが、喧嘩して彼女はどこかに消えてしまう。
しかし、次の瞬間、エージェントがニックが覗いていることに気が付いてしまう!

慌てて、コードに助けを求めるニックだが、コードはやはり狂ったようなことしか言わない。部屋に来たエージェントをスタンガンで倒し、さるぐつわに手錠で拘束するように指示される。

ノートPCを持ったまま逃げるニック。ホテルの廊下を、誰にも見つからないように走る。時には他の人の部屋に忍びこんだりしながら、うまく回避。

レンタカーの助手席にPCを置き、新しいカメラをダッシュボードにセットする。
わけもわからぬまま、車を走らせるニック。パソコンに導かれる。

また謎の男トリオが話しかけてくる。彼らはハッカーたちらしい。ニックに「ネバタ」と話しかけてくる。彼らはニックを見守っているが、コードとは関係がないらしい。

ニックはジルのパソコンに侵入させられる。そして、コード自身が彼女の部屋に侵入していく。ニックが彼女のパソコンにメッセージを送らなければ、彼女を殺すというのだ。
コードの指示されるままに、ジルにパソコンを通じてメッセージを送るニック。驚くべきコトに、ジルの彼氏が痛めつけられている映像も映し出される。ニックがミスをするたびに、彼氏に電流が流される。コードに言われるがまま、ニックはジルに淫らなポーズをとるように命令させられる。

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と、ハッカーたちの活躍で警察がやってくる。ジルは男に連れ去られ、ベッドの中に何かが放り込まれる。監視カメラにハッカーたちがアクセスすると、男は薪置き場に隠れているようだ。警察はどんどん家に侵入する。

しかし、ニックはあることに気が付く。ハッカーたちは警察に通報していない。つまり、全部男が仕組んだことだったのだ。薪置き場の映像はあらかじめ録画されたもの。つまり、男はジルを連れてさっさと逃げてしまっている!
それに気付いた瞬間、家のなかが煙幕で真っ白になる。

ニックのウェブサイトは乗っ取られている。いろいろなサイトに、ジルの淫らな姿(ニックがやらせたもの)と、「何でも言うことを聞くわ」という彼女のセリフが流れている。
「完全版まで30分」

警察に追われるニック。彼らはハッカー集団と会話をしながら、ジルを追いかける。そしてネバダについて知ることになる。ネバダとは、超有名なハッカー。そのネバダに憧れている、フランスの若者たちがハッカートリオなのだ。

ハッカーたちはジルの乗せられた車を探し出す。しかも、たくさんのボール型カメラと一緒にトランクに隠されていることから、カメラの動画をつなぎあわせ、彼女の状態を3Dで再現までする。
ジルの携帯電話がまだつながっているので、彼女を励ますニック。だが、ジルはコードを襲って逃げようと画策する。

ニックをネバダだと思い込んでいる彼ら。だが、そうではないことがわかる。ネバダは既に殺されていた。それが映像に残されている。その加害者こそ、コードだとわかる。
ハッカー集団はこれ以上協力できないと、ログアウトしてしまう。
「これで、ジル追っかけ.comを最強にできるぞ」
コードは意気込んでいる。

しかし、車を停めていたニックの前に、コードが現れる。
「ジルはいつもの場所だ。ネットの中だよ」
ニックはそのまま撃たれてしまう。

30分後。拘束されたジルがネットで生中継される。
コードは「制限時間は10秒。すぐに去れば、彼女は立ち去る」という。だが、来場者数は膨れ上がっていく。そして制限時間が過ぎ、その場は爆発する。

だが、爆発を遠くから見ているコードと、つながれているジル。その映像も録画されたものだった。ジルは犯人を信じるフリをして逃げようとするが、逃げられない。

しかし、そこでパソコンを使っているコードに話しかけてきたのは、ネバダ。
彼は殺されていない、生きていたのだ。「自分のサーバーを勝手に利用するのはまだしも、特定されて警察に押収されたら困る」というネバダ。しかも、ニックも生きている。彼は防弾ベストを着ていたようだ。

「トランクに人をいれていたのは、君だけではなかったようだね」
運転席につっぷしているニックの横から、もうひとりのニックが顔を出す。そう、ニックがネバダだったのだ。本物のニックはロスに到着した瞬間、眠らされてトランクに入れられていた。そして、変装したネバダがニックとして、コードにわざと操られていたのだ。

慌てるコード。ジルのもとを離れていたコードだが、ネバダは既にジルを救い出している。追いかけるコード。「ジル、私を信じてくれ~~!」
その言葉もむなしく、コードはあっけなく最期を迎える。

全てが終わった。
ネバダの家に連れてこられるジル。ここからは、全てがつぎはぎの3D画面のようになっている。ジルは感動している。「私の大好きな映画に、音楽に、本がある……」
ネバダ「外に出られるぞ、ほとぼりが冷めたら」と言う。そして、彼女に謝罪する。コードの目論見がイマイチわからないまま、彼と接触したこと。ジルのことを傷付けようとしていたわけではないことを謝ったのだ。

メイクを落とすネバダ。
「私は何者でもない。これが終わったら、消えるよ」
口封じをされるジル。
「あなたのことを黙っていて、私にメリットは?」
ジルの最新映画のチケット売上がはねあがっていることを示すネバダ。

「私もお願い、消えたいの」
「いいよ、どのくらい?」
「永遠に」
ジルはパソコンを閉じる。そして、画面がシャットアウトする。
もう、終わりがぞぞぞっとしましたね。擦り切れてしまって消えたい女が、ようやく望みを叶えるという寂しさ。そして、ネバダは愉快犯半分、「ネズミ小僧」的な活動半分みたいな印象なのですが、かなり空虚な印象も残ります。イライジャ・ウッドの目玉イッちゃってる感がまたよくマッチしている。なんだか最近は殺人鬼とか犯罪者とかストーカーの役とか多いけど、普通の役も股みたいですね。