「リアル鬼ごっこ」

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2015年の映画「リアル鬼ごっこ」。最初に映画化されたほうも見ていますが、原作もたいがいだけど最初の映画の話もたいがいです。もともとは「王様と同じ名前の人間を減らす」ために、佐藤さんだけが鬼に追われて殺されるという話。王様が佐藤さんっていうのはギャグなのかしら?と思いつつ、こちらの映画を見てみたところ……私は好きです。

あらすじ

これまでに何度も映画化されてきた山田悠介の同名ベストセラーを、「冷たい熱帯魚」「地獄でなぜ悪い」の園子温監督が自らのオリジナル脚本で再映画化したバイオレンス・ホラー・アクション。鬼ごっこのターゲットをこれまでの“佐藤さん”から“JK=女子高生”に置き換え、全国の女子高生が何者かに追われ続け、次々と殺されていく不条理な殺戮絵巻がシュールかつ過激な残酷描写満載に描かれていく。主演はトリンドル玲奈、篠田麻里子、真野恵里菜。
ある日、のどかな山道を走る観光バスに、修学旅行と思しき女子高生の一団が乗っていた。すると一陣の風が吹き、バスの上部が女子高生たちの胴体もろとも一瞬にして切断されてしまう。偶然にもただひとり難を逃れたミツコは、血の雨の中を無我夢中で逃げ延びる。やがて、ふと我に返ったミツコは、なぜか学校の教室で友だちたちと談笑していたが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=351861

ネタバレ

修学旅行に出かける女子高生たち。「修学旅行といったら、枕投げっしょ!」そこから、バスの中で枕投げが始まる。そのなかで、平然と手帳に詩を書いているのがミツコ(トリンドル玲奈)だ。前を走るバスにも、女の子たちがたくさん乗っている。だが、次の瞬間、前を走るバスが吹き飛ぶ。バスの中で落としたボールペンを拾っていたミツコだけが難を逃れるが、運転手も、先生も、同級生たちも上半身が吹き飛んでしまう(運転手は生首が飛ぶ)。

山道にはバスや人のかけらが飛び散る。バスから降りて、逃げるミツコ。謎の風が吹き、電柱も登山客も、自転車乗りたちもぶったぎられて死んでいく。だが、なぜ?誰が彼らを殺していくのか?

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ミツコは走って走って、死体がたくさん落ちている川に着く。血まみれのセーラー服を裂き、死体が着ていた制服に着替える。そして着替えて、また逃げ続ける。
ひたすら逃げる映像が続く。
女子高生を見つけて、その方向へ進んでいくミツコ。女子高生の登校の群れに飲み込まれていく。と、彼女と顔見知りらしい少女たちが話しかけてくる。「ミツコ、おはよう!」
彼女はこの近くに通う高校の生徒で、彼女たちは同級生だ。

クラスメイト達が彼女をなだめる。様子がおかしいミツコを、先生たちは「女子は、みんな、ちょっとヘンなだけ」とクスクス笑う。

ミツコは別の高校に通い、現在修学旅行中のはずだ。見覚えのないクラスメートに囲まれ、困惑している。

ミツコの親友を名乗るアキ。おとなしそうなロングヘアーの少女、タエコ。変わり者で有名なシュール。彼女たちは授業をさぼって、外へ飛び出す。
(ちなみに、パンチラ祭りです。「愛のむきだし」を思い出すなあ)

様子のオカシイミツコに、シュールが持論を展開する。
バタフライエフェクトのように、自分がした行動が何か思わぬことを巻き起こすことがある。シュールの妄想のなかで、ミツコは股をワニに噛まれて溺れている。

「普段、絶対やらないことを、自分が気付く前にやるんだ」
「シュールに負けんな!人生はいつだってシュールなんだ。シュールに耐えられなくなったら、負けだ」
シュールは熱弁をふるう。

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彼女たちは学校に戻る。すると、授業を始めた先生が、突然銃器をぶっ放す!生徒たちは次々と殺され、アキも撃たれる。慌てて逃げるミツコと、合流するタエコ・シュール。だが、別の先生にタエコは左手と顔面を吹き飛ばされ、シュールも撃たれてしまう。
校庭に逃げ出すが、女教師たちは女子高生を殺しまくっている。逃げていくなかで、友達4人の上半身と下半身がぱっくりと離れ、ミツコのもとにまた謎の風が現れ、切り裂こうとする。

また逃げるミツコ。今度は商店街に逃げ込む。派手な服装の女たちが多い商店街で、交番を見つけて女子警官に抱きつくミツコ。
だが「ケイコ?ケイコじゃない?」と言われる彼女。次の瞬間、彼女はケイコ(篠田麻里子)になっている。

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彼女はパトカーに乗せられ、式場に向かう。今日は彼女の結婚式だからだ。ちなみに、彼女だけは女子高生ではなく25歳。結婚式に到着するも、友人たちはなんだか傍若無人だ。彼女に親しげにしながら、こづいたりいじめたりしている。控室には、なんとアキが待っている。メイクをしながら、自分のいうことを聞くように彼女に囁くアキ。
そして、控室にいた友人をアキは投げたりしめ落としたりしながら、どんどんと殺していく。ケイコもそれに倣う。教会に入っていくケイコ。
すると、パイプオルガンを狂ったように弾く女や、服を脱いで下着姿になる友人たち、そして教会の真ん中にある棺桶が彼女を待ち受けている。棺桶の中からは、豚の頭を持つ新郎が飛び出してくる。そこから逃げるため、割れたビンを武器に戦うケイコ。すると、そこにアキが登場する。2人は、刺客と戦うことになる。ケイコを襲った女教師と同じ女たちだ。アキがくいとめている間、ケイコは逃げていく。すると、陸上競技のユニフォームを着た女が彼女を呼ぶ。

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彼女と並走していると、気が付けばケイコはいずみ(真野真里菜)になっている。仲のいい仲間と、マラソン大会に出場している彼女。皆が応援してくれている。このままだと、1位間違いなしだ。だが、横にタエコ、シュール、アキがやってくる。後ろからはブタの新郎と女刺客たちが追ってくる。彼女たちは、マラソンの出場者を次々と蹴り飛ばしていく。

また逃がしてもらったいずみ。廃墟で、女子高生(高橋メアリージュン)が手を振っている。それに導かれるまま、中に入っていくいずみ。しかし、中で待っていたのはうなだれている女子高生たちだ。この女子高生は、いずみを殺そうとする。「あんたがいると、この世界の皆が死ぬ!」

いずみは何とか逃げ、またアキに助けられる。アキは「私はミツコ、私はミツコ」と彼女に唱えさせる。すると次の瞬間、彼女はミツコに戻っている。

アキはミツコに、自分の両手から出ている赤と青のコードを引かせ、「私を破壊して」「コードの先に、あなたが入っていくの」と説く。抵抗するミツコをひっぱたくアキ。アキのコードを引くと、彼女が2つに裂け、出口が見えてくる。

そこを通れば、男の世界が広がっていた。
(ここまでは、女性しか登場しません。ここから男性もちょこっとだけ出てきます)
出口はどこかの厨房につながっていて、ミツコはそこを通り抜ける。
路地裏に出たら、そこには「リアル鬼ごっこ」の広告が貼られている。そこにはミツコ、ケイコ、いずみの姿がある。自分がゲームに?なぜ?

そこに男(斎藤工)が現れて語りかける。
「今はお前の生きていた古臭い時代とは違うんだ」
彼女を連れて、男は歩きはじめる。

次の瞬間、外に雪が降る白い廃墟にいるミツコ。彼女が歩いていると、女の子たちが展示されている。ウェディングドレス姿の女の子、女子高生の女の子。シュールと話している時に見えた女の子2人も、展示品のように飾られている。

その廃墟の中で、おじいさんがゲームをしている。モニター画面が切り替わると、ミツコ、ケイコ、いずみが見える。そのおじいさんが振り返ると、男の年取った姿であることがわかる(斎藤工:1人2役)。

そこで、ミツコが2034年に死んでいること。彼女のDNAや友達のDNAが採取され、「リアル鬼ごっこ」に使用されていることが明かされる。彼女たちを複製した女子高生たちを殺すゲームが、この時代に流行しているのだ。
展示ケースに入っているミツコ、ケイコ、いずみ。アキやミツコ、シュールの姿も見える。いずみの友人らしき女の子の姿も見える。

そこに、先ほどミツコを案内した男が現れる。ブーメランパンツ1枚でぽつんと置かれているベッドに寝転がり、「ゲームの人がこっちにきてるんだよね?」と話しかける。
「150年前、わしが叶えられなかった夢じゃ」
じいさんに促されるまま、ミツコは男の寝るベッドに座る。

だが、ミツコは起き上がり、枕をちぎって暴れる。赤い羽根が飛び散っていく。
「私で遊ぶな!私たちで遊ぶな!!」
暴れるミツコに、やめろ!と叫ぶ男。

気が付けば、ミツコはまたバスのなかにいる。枕投げが続いている。彼女はまたボールペンを落として拾い上げるが、今度はそのペンで自分の腹部を貫く!
ケイコも式場におり、また割れたビンを手にしている。だが、今度は何かが起こる前に自分の腹部を刺す。
いずみは、倒れて死んでいる。それを心配そうに、たくさんの人が見つめている。

次の瞬間、雪原に倒れていたミツコは起き上がる。
「終わった。終わったのよ」
彼女は立ち上がり、雪原を駆け抜けていく。
ミツコを頭上から捉えていたカメラが雪原に墜落していき、地面に激突する。
この映画を見て、「どういうこと?」「意味が分からない」と思わないでいただきたい。意味が分からないからこそ、素晴らしいのであります。修学旅行から他高校に切り替わったのはどういう意味なのかな?とか、このゲームのシステムはどうなっとんのじゃ?とかいろいろ気になるところはあるのですが、永遠に死に続けなければいけない死のループというのは、私が大好きな「SIREN」の世界観にも通じるところがあってとても好きです。死ぬのは怖いけれど、死に続けなければいけないのはもっと怖いですものね。

ハンティング要素は薄いですが、さすがのスプラッタ描写の多さ!(造形は当然、邦画ホラー映画でおなじみの西村さんです)
何より、トリンドルさんの演技が他のどの作品よりも良かったです。おすすめ。