「ババドッグ ~暗闇の魔物~」

babadog

2014年のオーストラリア映画「ババドッグ ~暗闇の魔物~」を見た。多動な息子に悩まされ、生活に疲れ切ったシングルマザー。彼女と息子に迫る魔物「ババドッグ」にいつの間にか浸食されていく母の恐怖と狂気を描いた作品。オカルトに分類されると思うのですが、ババドッグの禍々しさはここ最近のオカルト作品のなかでもユニークです。ちょっとクレイアニメというか、「紙兎ロペ」っぽいというか。

あらすじ

低予算のホラー映画でありながら、サンダンス映画祭をはじめ各地の映画祭で評判を呼び、本国オーストラリアのアカデミー賞ではみごと作品賞に輝くなど、2014年世界的にもっとも話題を集めたインディ・ホラー。やんちゃな息子の世話に手を焼くシングルマザーが、不気味な絵本と巡り会ったのをきっかけに、次々と怪現象に見舞われ、精神的に追い詰められていくさまを描く。監督は女優出身のジェニファー・ケントで、自ら手がけた短編を基にした本作で記念すべき長編デビューを飾った。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353106

ネタバレ

息子を出産するために、夫と病院に向かっているアメリア。しかし車の事故で車が横転する。浮遊している状態から、ベッドに落ちていくアメリア(夢から目が覚める描写)。

成長し、やんちゃになった息子は、父を奪った悪魔がいると信じている。そのため、問題行動を起こすことも多い。もともとライターをしていたが、今は介護士をしているアメリアはいつも疲れている。

子どもに頼まれて、ババドッグの絵本を読む。しかし、その絵本はどこからやってきたのかわからない。子どもを襲うような内容が描かれていて、手作りのようだ。禍々しい内容に息子はギャン泣き。それ以来、息子はババドッグを敵視するようになる。黒いコートに黒い帽子のババドッグ。

しょっちゅう息子に起こされる母。ひとりで何かをしている(マス○ーベーション?)中にも、息子は乱入してくる。

職場では老人のためにビンゴをして、上司から怒られる。同僚のロビーは彼女のことを慰めてくれる。アメリアのことが好きなようだ。

ババドッグの話をして、いとこを泣かせてしまった息子。そのせいか、父の遺品が置いてある地下室に入り込んで荒らしてしまう。

息子は学校を退学になる。アメリアは息子が病気だと言って仕事を早退する。だが、ロビーが家にやってきて仮病はバレてしまう。

おかしなことが次々に起こる。
・食事の中に、ガラスが入っている
・アメリアと夫の写真に落書きがされている(息子がしたのだと思い、アメリアは叱る。でも本当に息子がしたのかもしれない)
・息子、癇癪のような症状を起こす。「入れちゃダメ!入れちゃダメ!」と叫ぶ

アメリアは恐怖から絵本をちぎって捨ててしまう。

しかしその夜、ノックの音が聞こえてくる。ババドッグの作法の通り。彼は家を訪れて、まずはノックをする。

いとこの誕生会。息子はすっかり浮いてしまっている。アメリアの妹は「もうサミュエル(息子)には耐えられない」と彼女を責める。裕福な家の妻たちに格差を見せつけられ、アメリアの心も引きちぎれそうになる。いとこの女の子が彼をバカにしたため、サミュエルが突き飛ばし、親族と疎遠になってしまう。

帰り道、また癇癪を起こす息子。キエ~~~~!!!と叫んで白目をむく。もう耐えられないアメリカ。子どもの声も癇癪も、何もかもが彼女を苛んでいる。

医者に行く母子。その日はよく眠れる。
だが次の日の朝、ノックが聞こえて、玄関には新しいババドッグの絵本が置いてある。今度は息子が主人公ではない。アメリアが主人公だ。
「私を否定すれば否定するほど、その力は強くなる」
その言葉が彼女を追い詰めていく。
電話がかかってくる。向こう側からは「ババドッグ ドッグ ドッグ」というおぞましい声がする。

警察に行くアメリア。だが、警官の背後にはババドッグの衣装がかかっている。黒いマントに黒い帽子、鉤爪に目を奪われる。ストーカーの被害届を出そうとするが、既にアメリアが絵本を破ってしまい、電話も録音していない。恐怖とパニックで彼女は警察署から逃げてしまう。

台所からゴキブリが湧いてくる。冷蔵庫を動かすと、穴がある。その穴から大量のゴキブリが出てくる!アメリアは必至で掃除を始める。

息子の現状を視察しにきた教育関係者たち(虐待の恐れはないか、どうして学校に行けなくなったかを調査にしきた)。だが、母の奇妙な様子に警戒しているようだ。台所に開いていたはずの穴は、いつのまにか塞がっている。

深夜。ドアが開き、ババドッグがアメリアの部屋にやってくる。天井にひたひたと張り付き、ババドッグが彼女の近付く。そしてアメリアの口の中に飛び込む!

ババドッグに翻弄されるアメリア。不安な彼女は息子を連れてドライブに行くが、大量のゴキブリの幻覚を見たり、車の上に何かが落ちてきたような衝撃を受ける。そして実際に接触事故を起こすが、アメリアはそのまま逃げてしまう。さらに彼女は変わった行動を起こす。

・隣人を無視
・服を着たまま、水風呂につかっている。息子も入れる
・息子に「触んな!」と絶叫。口汚く罵るようになる
・包丁を持ち出すようになる
・薬を無理やり飲ませる
・眠るのが怖いアメリア。しかし寝落ちして、息子が死んだ幻覚を見る。気が付くと、自分が包丁を握っている。
・愛犬に噛まれるアメリア。犬だけが彼女の正体を察知しているのかもしれない。
・子どもがどこかに消える。地下室へ行くと、夫がいて「子どもをここに連れてくるんだ」と言う。

だが、これは現実じゃない。それでもアメリアは狂気に侵食されていく。

アメリアは自分の愛犬を追いかけ、殺してしまう。さらに口の中に手を入れて、あごの痛みの原因となっていた歯を素手で引っこ抜く。

サミュエルすらも追いかけまわすアメリア。息子はおしっこを漏らしつつ、ババドッグのために作った武器(投石器みたいなものや、ダーツのボウガン)で反撃する。さらに母を刺し、地下室にもロープを張って彼女に足止めする。
「それでもママが好き」というサミュエル。息子を殺すことができない。そのまま、真っ黒なゲロを吐いて倒れてしまう。正気に戻ったのだ。

しかし「ババドッグからは逃げられない」。
息子は見えない何かに引きずられていき、アメリアが追いかける。母の寝室でベッドに放り出され、そのベッドが大きく揺れる。夫の姿が現れるが、そのまま頭の上半分がスパリと落ち、夫は掻き消える。

息子を奪われそうになる。「私は負けない!」と宣言する。強風のなか、にらみを利かせるアメリア。ババドッグは倒れる。彼女は勝利したようだ。
(物理的な戦闘はないです)

息子の誕生日当日。新しい学校に転校することも決まる。教育関係者たちもニコニコしながら再訪している。誕生日の飾りに気付く彼ら。
「初めて当日にお祝いするんだ」
「あら、どうして?」
「夫の命日なので」
シーンとする関係者たち。

アメリアは庭で集めた生きているミミズを、地下室に置く。何かがそこにはいる。
何かに威嚇されているアメリアだが「大丈夫、怖がらないで」と微笑む。

アメリアとサミュエルは誕生日らしく、和やかに抱き合って微笑みあう。

とてもいいオカルト。単なる驚かし映画と思いきや、母の狂気が描かれています。そして最後はババドッグとの共存を目指すという、何より狂った展開。息子のキーキー演技もものすごいですし(ホントにイライラする)、狂った後の母のヨレヨレぶりもすごい。「おいこらてめぇ!」みたいに息子に怒鳴るんだもの。もしかしたら、オカルトではなくストレスで追い詰められたアメリアが奇行に走っただけかもしれない。でも、その設定だけでも怖いんです。