「ミッドナイトFM」

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韓国ホラーをまたいろいろ見ているのですが、やっぱり面白いですね。日本と似たテイストもありつつ、独自のカラーもありつつ。
暴力規制がゆるいのか、日本よりも残虐描写がしっかりしているのもすごい。
その中でも、この「ミッドナイトFM」はかなり怖いお話です。
ストーカー(得体のしれない男に付きまとわれる)映画ってやっぱり怖いですよね。でも、得体のしれない女に付きまとわれる映画ってもっとあっていいと思うな。

というわけで2010年の韓国ホラー「ミッドナイトFM」です。人気DJが家族の命と引き換えにクイズに答えさせられるというスリリングな展開。ただ、途中から外に出て犯人を追いかけたりもするので、前半と後半のテイストはけっこう異なります。前半はスリリングな心理戦、後半はアクションありの殺人攻防戦という感じ。
ただ、けっこうあっさり人が殺されちゃうのはいかにもホラーという感じでしたね。

あらすじ

人気女性DJが最終回の生放送中に正体不明の男から脅迫電話を受け、人質に取られた一人娘を救い出すため殺人鬼と決死の攻防を繰り広げる緊迫のサイコ・スリラー。主演は「夏物語」のスエ、共演に「オールド・ボーイ」のユ・ジテ、「生き残るための3つの取引」のマ・ドンソク。監督は「ガールスカウト」のキム・サンマン。

深夜ラジオ番組“真夜中の映画音楽室”のパーソナリティを務める人気DJ、ソニョン。シングルマザーの彼女は、娘の失語症治療のために渡米を決意、5年間続けてきた番組を降板することに。その大事な最終回の夜、生放送中に彼女の携帯に“指示通りの曲を流さなければ、お前の家族を殺す”という脅迫電話がかかってくる。イタズラかと思ったソニョンだったが、やがて彼女の携帯に送られてきた映像には、子守を頼んだ妹と最愛の娘、そして見知らぬ男の姿が。ショックに打ちのめされながらも、犯人の要求を呑んで放送を続けるソニョンだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=341794

ネタバレ

子どものために引退を決めた人気DJ(韓国でもアナウンサーがDJやるんですね。この人ももともとはニュースキャスターです)・ソニョン。
彼女の引退に好意的な人もいれば、否定的なスタッフもいます。ちなみに次に担当するDJの女性は連絡がとれない(なお、冒頭で彼女が殺される描写があります)状態であり、車は傷をつけられているし、乗ったタクシーでは暴力事件を目撃してしまうし、さんざんな状態。

しかし最後の日なので、気合を入れるソニョンであります。
番組のプロデューサー?であるオ・チーフはソニョンを責めて席をはずしてしまいますが、ディレクターのウハン、女性放送作家のセヨンに支えられ最後の放送へ。
しかし、彼女のファンであるトラック運転手のドンスに冷たい態度をとったり、ファンからのプレゼントをゴミ箱に捨てたりとなかなかふてぶてしいソニョンさんであります。

彼女の家では、妹が自分の子どもとソニョンの子どもを寝かしつけながら仕事をしています(服飾関係らしい)。娘はウンス、姪っ子はヒョンジ。かわいい。
しかし、その家に男が侵入してきて……捕まる妹と姪っ子。娘のウンスはうまく隠れますが、実は彼女はのどの手術を控えていて、声が出せないのであります!ピンチ!!
警察も来ますが、ペンチで殴り殺されて終了。「3分も聞き逃したじゃないか」とラジオをつけて怒っています。

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放送中、ソニョンのいるブースのなかで電話の着信音!彼女が慌ててその音の出どころを探ると、なんとゴミ箱の中の箱にバラの花束と携帯があります。
「リスト通りに曲を流さなければダメじゃないか」という男ですが、そのリストはチーフが持って行ってしまっています。
妹の命が危ないと脅され、初回の番組で最初にかけた曲を流すように指示されるソヒョン。しかしデータには残っていないし、慌ててガラスを破りつつ記録室へ!セコムは来ないのだろうか?そこで記録を確認して音源を見つけるソヒョンですが、その曲が間違っていたことが発覚。

次のチャンスは、彼のファンであるドンス(ちょっと鈍いが、記憶力は抜群にいいという設定)の記憶力を借りて見事クイズに正解!
しかし、番組の内容に怒っているチーフがスタジオにやってきて曲を変えてしまいます。怒りながら泣き崩れ、そのまま卒倒するソヒョン。

彼女が気が付いた時には、全員が事態を把握しています。しかし時すでにお寿司で、妹は殺された後。ソヒョンはチーフに「あんたのせいよ!」とくってかかります。
しかしチーフも彼女の後釜であるDJが殺されたことを伝え、事態が予想以上に複雑になっていることを伝えるのであります。

そこで彼らがとった行動とは……「中継車を使って彼女の家まで行く」というもの。娘のためにいてもたってもいられないのであります。

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一方、いとこを助けようとするウンス。しかし「病院に入院している」と嘘で所在をごまかされていたウンスが男に見つかり、彼女は外に逃げるも、いとこちゃんは捕まったまま。
必死でウンスはマンションの外に逃げます!

既に通報があり、マンションの外には警官が続々集合。しかし、男はそれを知っていたのです。それは警察無線を聞いていたから。
そう、男はタクシードライバーだったのだ!無線を傍受していたのですね。逃げようとする男。警備員が彼に声をかけてひかれてしまいますし、それを見つけたドンスはボコられ、車にしがみつくも引きずられて手を離してしまいます。

追いかけるが追いつかない!
そもそも『タクシードライバー』という映画を好きだというタクシー運転手。この男はソヒョンのファンだということ以外、何もわかっていません。
ですがその素性が徐々に判明します。

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彼こそ殺人未遂で逮捕されていた男・ハン。彼は『使命的連続殺人犯』であり、自分が使命を受けて正義のために殺人を犯していると思い込んでいる、クレイジー男だったのです。
殺人で世間に貢献していると信じているのです。
しかもソヒョンの影響で、そういう行動に走った男。実はソヒョンも司法制度を番組内で批判したことがあり、そのことからも「僕は彼女の相棒だ、そうなるべき男だ」と信じているのです。

犯人を追いかけるソヒョン。
しかしカーチェイスの途中で何の関係もない暴走族のバイクに車を突っ込ませてしまい、暴走族も追っかけてきて妨害と悪夢のような状態に。しかしそのせいでバイクを巻き込んでパトカーに追突したり、玉突き事故状態です。

しかしソヒョンだけは運よく車を走らせ続け、犯人の車に追いつき、しかも追突して車を河原の段差から落とします。もちろんまだ犯人は生きてますが。
ちなみに子どもたちは別の場所に監禁されています。

一方、ドンスは彼らの行方を推理して追いかけてきます。ドンスの影を見つけたハンは彼を殴り倒してしまいますが、果たして彼は死んだのか!?

さて、ソヒョンを捕まえたハン。直接対決です。彼女を縛り上げてイスに固定しているハンですが、子どもたちはちょっと離れた場所のガラスの檻?のようなものの中に入れられています。この檻は土中にありますが、固定カメラで表情が見えるようになっています。とはいえ、ガラスが割れているんですけどね。しかも上部が。
逃げりゃあいいのにとは思いましたが、子どもだから無理か。

さて、この男のアジトにはもうひとり人がいます。
それが冒頭、ソヒョンが移動中にタクシーの中で見た、暴力事件を起こしていた男。この男は女の髪の毛を引っ張って引きずり回していて、ソヒョンも眉をしかめていたのですが、実はこのタクシーを運転していたのがハン!
この事件も運転席から目撃していたのです。
ハンはこの男を拘束してきているのですが、ソヒョンに「女性をイジメるクズ」として男を殺させようとします。男は「家出した妹を連れ戻していただけ」といいますが、これは言い訳なのか?もしかしてと考えてしまい、かつ、クズでも殺してはいけない!と撃てないソヒョン。

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その頃、ドンスはなんとか起き上がり、子どもたちを救い出します。
このあたりからもうしっちゃかめっちゃかです。
ドンスを追いかけるハン、ヘリから降りたってくる警官。※ちなみに拘束されている男は、本当に兄ちゃんです。
パトカーもマスコミも到着して、ソヒョンはアジトに放火して火事になるし、ハンはソヒョンを殺そうとします。「リスナーに二度と声を聞かせない」とソヒョンに詰め寄るハン。
しかし、ソヒョンはもう迷わない。ハンの頭を撃ちぬきます。

そして助かり、外によろよろ出ていくソヒョン。マスコミにもみくちゃにされかけますが、娘と姪っ子を見つけ、抱きつきます。
ドンスとも目が合い、お互いに微笑みあう二人。
しかし、最後に移動車に乗せられたソヒョンは、運転手に顔を歪めながら「ラジオを消して……」と呟きます。

このドンスとソヒョンの関係性もややストーカーじみてはいるのですが、後から振り返るとその質は全然違うものでしたね。
映画専門のラジオ番組(流す曲も、映画のテーマソングなど)のDJと、映画『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロに自分を重ねている殺人鬼という不思議な組み合わせ。
家族を人質にクイズを出されるという設定は好きだったのですが、その設定がけっこうすぐ終わったのが個人的には残念。
しかし、女子アナってカーチェイスもできて銃も撃てて殴り合いもできなきゃいけないのか。なんというスペックの高さ!とは思いましたです。