「トム・アット・ザ・ファーム」

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2013年のカナダ/フランス映画「トム・アット・ザ・ファーム」を見ました。
ゲイの青年が自殺した恋人の家族と出会い、彼の兄の暴力に染められて行ってしまうというストーリーです。排他的で支配的なのに依存してくる男のいいなりになってしまうトムがいかにもダメな男という感じ。

あらすじ

2009年の「マイ・マザー」で鮮烈なデビューを飾った注目の若手映画人グザヴィエ・ドランが、劇作家ミシェル・マルク・ブシャールの戯曲を監督・主演で映画化したサスペンス・ドラマ。カナダ・ケベック州の閉塞感漂う田舎町を舞台に、恋人の葬儀に出席するため、初めて彼の家族と対面したゲイの主人公が直面する過酷な運命を緊張感あふれる筆致で描き出す。

モントリオールの広告代理店で働くトムは、交通事故で亡くなった同僚で恋人のギョームの葬儀に参列するため、田舎にある彼の実家の農場を訪れる。そこには、ギョームの母アガットと兄のフランシスが2人で暮らしていた。アガットはギョームがゲイであることを知らず、サラという恋人がいるという息子の嘘を信じていた。母を傷つけたくないというフランシスは、トムにも恋人ではなく単なる友人として振る舞うよう嘘を強要する。その後も、粗暴なフランシスの、激しい暴力を伴う理不尽な要求に苦しめられていくトムだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=347186

ネタバレ

自殺した恋人の家に行くトム。勝手に家に入って寝て、お母さんに怒られます。

実はギョームとトムは恋人同士だったのですが、彼らの関係は秘密のもの。お母さんは「サラ」という女性の恋人がいたものだと信じています。そして、兄のフランシスはトムに高圧的にあたります。

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恋人の葬儀。スピーチを頼まれますが、余計なことを口走りそうで何も言えないトム。フランシスはわざわざトイレにやってきて「挽回しろ」と文句を言います。
架空の恋人であるサラの話を、頑張って母に話すトム。

ここで乳しぼりの体験をすることになります。親しみを見せた次の瞬間、激昂して暴力をふるってくるフランシスに苛立ちつつ、離れることができないような感覚もあるトム。
やけっぱちになって「サラはエッチ好き」みたいなことを母さんに言ってしまいますが、逆にお母さんは大爆笑してしまいます。

兄は女性を口説く時にタンゴを踊るらしいのですが、なぜか納屋でトムとタンゴを踊りだす兄ちゃん。お母さんを施設に入れるまでは農場を離れられないと愚痴りますが、それを本人に立ち聞きされてしまい、八つ当たりでトムが殴られます。

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帰ろうとするトムですが、車が壊されています。一緒に酒を飲みに行ったら首絞めプレイまでされるし、兄の粗野っぷりは過激さを増していきます。

トムは知人の女性にサラ役を依頼しますが、兄はこの女性も攻撃。
(なお、この女性はトムに借金がある)
女性はトムに一緒に帰ろうと誘いますが、トムは「この農場には僕が必要だ」「僕の貯金を出せば、設備がもっと整ってみんな楽になる」とか口走り始めます。しかし、女性は「ギョームはヤリ○ンだった」と驚きの真実を告げ、いろんな人と寝ていたことを暴露します。

母とも話すサラ役の女性。しかし、「遺品にも触ろうとしない、葬儀にもこない。あなたはおかしい」と断言されてしまいます。

女性にプレゼントしようとしてそのまま放置していたダサい服をサラ役の女性にあげるフランシス。そして泥酔したフランシスとサラ役の女性が車のなかでイチャつきだし、トムをバカにし始めます。逃げるようにバーに入ったトムは、マスターから驚きの真実を聞かされることに。

フランシスはバーを出禁になっているということ。
ギョームの当時の恋人の口を、喧嘩の末に裂いたことがあるということ。
その男は行方不明になったということ。

逃げようと決めるトム。彼を探し、「戻ってこい!」と暴れるフランシス。
とにかく逃げ続け、フランシスの軽トラで爆走するトムですが、途中でガソリンスタンド?に立ち寄ります。
そこにいる男性スタッフの後ろ姿に見とれるトム。なぜなら、彼の顔には裂けたような痕があって……。

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私の浅はかな想像だと、フランシスも同性愛者であり、ギョームやトムのように自由に恋愛できないことから、彼らを責めたてたのか?
トムはギョームの面影を持ち、支配的であるフランシスに魅かれたからこそ依存してしまったのか?
顔を裂かれた男はギョーム、もしくはフランシスのことが忘れられずに遠くに行くことができないのか?と思ったのですがどうなんでしょうね。

しかし、不思議な脚本であります。
同性愛を描いているうえに「依存と支配」が描かれていて、暴力もある。
トムは逃げようとしたりフランシスのご機嫌をとったりという感情の揺れがあるのですが、それについて繊細に描かれているわけでもないので見ている側はかなり置いてけぼりです。
日本でもこういう話が見たいなあ。「ゆれる」みたいになりそう。