「オキュラス/怨霊鏡」

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2013年のアメリカ映画「オキュラス/怨霊鏡」を見ました。
鏡がキーアイテムで登場するオカルトを見るのは久しぶりです。『ミラーズ』とかそうだったよね。
犬木加奈子先生の漫画にも、姉妹が継母の悪霊が宿っている鏡と戦う話があったなあ。個人的にはこの映画、とってもおすすめ。

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あらすじ

怨霊鏡に両親を狂わされ、家族を崩壊させられた姉弟。
大人になった弟・ティムが精神病院を退院したその時、姉・ケリーは共に鏡の正体を突き止めようと持ちかけるが―。

この映画の魅力は、時間軸がとても見事に交差するところ。大人になった姉弟が奇妙な現象に怯えるさまと、子どもの頃の彼らがどんどんと親の狂気に巻き込まれていくさまが見事にリンクしています。子役がまた、すごーくいい表情をするのよね。
そして、オカルト的な現象あれこれはもちろんのこと、「鏡のせいで両親が狂う」っていう設定がホントーに怖い。
子どもの頃に見た悪夢を反芻しているような気持ちにさせられます。

ネタバレ

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ティムは、精神病院にずっと入院させられていて、最近退院したばかり。姉のケリーと久しぶりに再会しますが、彼女にはある計画がありました。ケリーの仕事は、アンティークの家具などの仲買人。それも、あの鏡を買い戻すために選んだ仕事(と思われる)。彼女は無事に鏡を手に入れ、かつて家族が住んでいた家(姉の管理下にあった)に戻り、ティムとその鏡を見張ることにします。

彼女の作ったルールはこんな感じ。
・時間がくるたびにタイマーがなり、鏡にハンマーが振り下ろされるスイッチが作動する。やすやすと姉弟を殺したら、鏡も壊れてしまう?
・カメラで鏡の動きを記録している。なにかあったらそこに記録されるはず
・定期的に、ケリーの恋人からも電話がかかってくる

これほどまでの予防策を立てますが、ケリーとティムは鏡の見せる幻覚に惑わされていきます。

この鏡は、実は彼らが子ども時代に父親が購入して新居に飾ったもの。購入した家族が次々死んでいる魔の鏡でもありますが、彼らはそんなこと知りません。しかし、この鏡のせいで母親は幻聴を聞き、父は幻覚を見るようになります。
特に痛そうだったのが、父が指についていた絆創膏を剥がしたはずなのに、気が付いたらまだ残っている。その絆創膏をペンチで剥がして、ふと気が付いたら指から血がダラダラ!彼は鏡のせいで自分の指先をちぎっていたのだ、ということがわかります。もう、この時点でギョエーですね。

悪魔の鏡の特徴のひとつ。
それは、この鏡を置いた家庭のペット(犬)が行方不明になるということ。この家のわんちゃんもぐったりした後にいなくなります。

ケリーはそれを悪魔のせいだと記憶していますが、ティムは既に自己解決(?)しています。
夫婦の中が悪くなっていったのは鏡じゃなく、父の不倫のせい。犬がいなくなったのは、病気で死んだから。そう姉を説得しますが、ケリーは聞き入れません。
頑なに鏡の悪意を信じるケリーよりも、ティムのほうがいかにも正しそうに見えます。
しかし、ケリーが連れてきた犬をそのまま逃がすティム。そのままだと野良犬になっちゃうぞ!どっちもどっちという感じがするなあ。

他にも「悪魔が何か行動を起こすと、植物が枯れる」「室温が上がる」「実際にとった行動と記憶が異なる」などの特徴が出てきます。
そのため、家の中に植物をたっぷり設置し、室温も記録しているケリー。

しかしこの騒動の直後、彼らは自分たちがとった行動と、カメラに撮影されている行動が異なることを実際に確認。普通に話しているはずが、カメラの方向を変えて鏡が映らないようにしていたのです。二人ともこのことを全然覚えていません。
ケリーはリンゴとガジガジしながら作業中。ここで幻覚を見て電球にかじりついていることに気付きますが、よくよく見たらやっぱりリンゴだった!という「という夢を見た、という夢を見たぜ」的な幻覚を見ます。しかし、この電球かじりつきシーンが超痛そう。口からガラスの大きな破片を取り出す場面は直視できません。

このあたりで、彼らの過去と現在がどんどん交錯していきます。

母がおかしくなり、「父が自分の悪口を言っている」と幻聴を聞いたり、幻覚を見たり。父はそんな母を監禁して、折檻します。首に鎖をつないで、自室に閉じ込めます。両親の寝室も母も常に血まみれ。父もそれを取り繕い、子どもたちを弾圧します。家はどんどんと荒れていきます。

現実世界では、悪霊と見間違った彼氏を殺してしまうケリー。「これは夢よね?夢なのよね?」と言いつつも、現実であることを思い知ります。

そして、現実でも父や母の亡霊が出現。お母さんは四つん這いで追って来るし、父は銃を持ってひたひたとやってきます。
そして、ティムを救うためにケリーが両親に立ち向かったこと。生き残るために、母を殺した父を子ども時代のティムが銃殺したことなどが明らかになります。(だからティムは「父親殺し」のせいで精神病棟に入っていた)

彼らは家の外に飛び出しますが、家のなかには幽霊がいてこちらを見ています。この人たちは、かつて鏡の被害者となった人間たちなのか?

鏡を人力で壊そうとしても無理。
さんざん悪霊と戦ったティムは、鏡を壊すためにハンマーを作動させます。
しかし、母親に呼ばれるという幻覚のせいで鏡を覗きこんでいケリーの頭にそれが直撃。ケリーは呆気なく死んでしまいます。

前から呼んでいた警察がようやくここで到着しますが、「悪魔のせいだ」と喚き散らすティムを警察は容赦なく連行。
家の中からは、両親とケリーの霊が彼を見つめています。そして、ティムの乗ったパトカーを見守っているのは、子ども時代のケリーの後ろ姿。

という終わり方。
ティムに全部の責任がかぶせられた、鏡のほうが一枚上手だったという話。
自分のとっている行動が、果たして現実なのか?それとも夢なのか?
記憶していることは?本当の真相は?母が精神病で父は殺人鬼だったのか?
オカルトでありながら、もしかしたらそうではないのかもしれない。
頭のおかしくなった母と、それを殺した父の記憶をティムが改ざんしているだけで、悪魔なんていないのかもしれない。
全てはティムの考えたストーリーだったのかもしれない。
と、思わせるこの話のおそろしさ。