「イーライ・ロス PRESENTS ザ・ストレンジャー ~感染者~」

the stranger

2014年のなんとチリ映画!「イーライ・ロス PRESENTS ザ・ストレンジャー ~感染者~」です。既視感があるような、ないような……不思議な映画!

 

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あらすじ

知らない男が村に来たら、2つの家庭で殺し殺されのミニマム大喧嘩に。
実はこの男は“感染者”であり、この男の血に触れたものは、大きく人生を狂わされる……!?

 

ネタバレ

主人公の少年の家に、アナという女性を訪ねてやってきた男。
しかし、アナは既に死亡。この男は思いっきり落ち込んで、道路で俯いています。
彼は思い出していたのです。
昔、彼女と暮らしていた時。彼女が他の人間を襲って血をすすっていたのを目撃したところを。
しかし、おそらくこの男も彼女と同じ類の人間だということは推測できるわけです。

とにかくショボーンとしている男。
するとそこに地元で有名なヤンキーがやってきて、さんざん絡んだ挙句、唐突にナイフで刺殺してその死体に放尿。なんともムカムカする描写ですが、たまたま通りかかった主人公が通報。警察がやってきます。それにしても治安の悪さに唖然。いきなり刺されることがあるのか、チリは……?

しかしながら、警察官はヤンキーのお父さんだったんですね。親子は死体を隠匿しますが、主人公はこの男にまだ息があることに気付き、彼を自宅に運びます。
そこで少年はお母さん(父親はいない)を呼んできて手当てしようとしますが
「俺に触ったら感染する」
「血に触るな」
と制止する男。実際に、この男の血を舐めた猫は死んでしまいます。

男の死体が消えたことで、少年を疑う警官とヤンキー親子。ヤンキーは少年の家に行き、「本当のことを言え」とボコボコにします。
ボコられる少年は、うっすら意識が飛んでいくなかで、誰か(もちろん、正体は件の男なのであるが)が自分のことを助けてくれるのを見ます。しかも、ヤンキーが用意していた火炎瓶は本人に叩きつけられ、ヤンキー君は大やけど。ちなみに、実は彼には持病があるようで、次に発作を起こしたらヤバイ!死んじゃう!という設定があります。

とにかくパパである警官はお怒りで、すぐに復讐に。見せしめに主人公の少年を半殺しにします。顔を半分以上焼かれて死にかける少年。それを発見した男は、少年の傷口に自分の血を塗りこみ、十字を切ります。少年はそのおかげで傷がすぐ治り、生き返りますが男は警察に捕まっちゃいます。
とりあえず男はほっといて、少年と母ちゃんは警察官の狂気を恐れて逃げることに。

まあ、ここで説明しますと
・主人公の少年は、男の息子である(死んだアナは母親である)
・両親は感染者であり、母は人の血を飲み始めてしまう(男は我慢して、鶏の生き血を飲んでいた)
・少年を身ごもったまま、拘束を解いてビルの屋上からピョンピョン逃げちゃう母
・少年の育ての母は、男が少年の父であると気付いていた
・少年は生まれた時点では感染者ではなかったが、男の血を塗られたため、感染者となった
・感染すると「人の血を飲まないと肉体が崩れてくる」「太陽の光にあたると死ぬ」「血を体に塗る(触れる)と感染。ただし、噛まれたり食われたり飲まれたりした人は感染者とはならない」的なルールがあります

ということで、ヴァンパイア×感染モノみたいな感じの印象ですよね。おいしいとこどりだけど。
警官に「息子が傷を治した秘密を教えろ」と脅されて、ヤンキーくんに男の血を塗った主人公の育ての母。でも、そのせいでヤンキーくんにかじられて死んじゃいます。この描写がまた、中途半端なのである。ガブッと噛みついているわけでもなく、血をチューチューすするわけでもなく、人肉を食べるわけでもなく。
少年は男を脱獄させ、彼女を助けてもらおうとします。が、既に死んだ者は生き返らすことができません。

車で逃げるヤンキー(男たちに足止めを食らわしてきた父親の警察官は、あっけなく物語から退場)。
少年を危ない目にあわせられないとそのへんの木に括り付けて、ヤンキーを追いかける男。
目が覚め、拘束されていることに唖然とする少年。

つまり、「ヤンキー少年←男←少年」という図式で追っかけっこしているのです。

少年は親切な美女に助けてもらいますが、自分の手のひらにひびが入り、崩れ始めているのを発見。
親切な女性と、その車に乗っている犬を意味ありげに一瞥します。

その頃ヤンキーくんは、さびれた建物に到着。
そこにいた幼女を見て舌なめずり。

追いかけてきた男は、小さな女の子の死体を発見して唖然とします。
しかし、ここから隠れていたヤンキーくんと男の対決がスタート。やや男が不利ですが、そこに登場したのは消防隊の服を着た主人公の少年(実は、男と少年が当初奪った車が消防車だったんですね)。この服を着ていれば、太陽光の下でも活動できるというわけです。そして少年はヤンキーくんを太陽の下に引きずり出し、殺してしまいます。

そしてようやく向き合う男と少年。
男は「ひさしをあげてくれ(=太陽の光を浴びて自殺したい)」と発言。しかし、少年はそれに従うことを拒否し、たとえイバラの道でも自分はそのまま生きていくことを選びます。
しかし、医師を変えない男のために、少年が建物の中に光を入れてあげます。男はそれで炎上。
少年は乗ってきた高級車(親切な人が運転していたもの)から犬の死体をそっと下ろし、その場から立ち去ります。

という、非常に後味が悪いお話。殺さなくていい犬は死なせちゃダメだよ!(`・ω・´) まぁ人ももちろんダメですがね!
「どんなに自分に不利でも生きたい」という少年と「もう疲れてしまった」という父。しかし、それでも2人で生きていけばいいじゃん。とも思うんですがね。「死にそうなほど苦しいけれど、それでも生きていく」のは誰にも通じる真実であり、地獄であり、悲劇そのものだと思うのだが。

あと、あまりにも説明がないので、もし違う読み取り方をしていたら申し訳ナスです。

それにしても、こういう終わり方(というか、死体炎上)はどうしても「30デイズ・ナイト」や「渇き」「ニア・ダーク/月夜の出来事」を思い起こしてしまいます。ヴァンパイアものには肉体炎上のシーンがたくさんあるとはいえ、「おおっ!こんなの見たことないぞ!」となかなか思いにくいほど似ている。 前述の3作品はそう思えたのにな。