「フューリー」

the fury

1978年の映画「フューリー」を見ました。
この映画、ブライアン・デ・パルマ監督なのですが、最後まで展開が読めない。当時の映画がこうなのか、パルマ監督の個性なのかわかりませんが、この映画に出てくる登場人物たちの性格の悪さ、嫌いじゃないぞ!

 

the fury

あらすじ

息子を誘拐された元情報部員。
彼の息子には、なんと超能力(テレキネシス)が備わっており、その能力を見込んだスパイ集団が誘拐したのである。
奇妙な縁で知り合った超能力少女の力を借りて、彼らは息子を助けようとするのだが…!?

 

ネタバレ

冒頭、サマーバカンスを楽しむお父さんと息子、そして父ちゃんの友達。
しかし、父ちゃんの友達がどう考えてもこそこそ怪しく、父ちゃんは銃をもったテロリストに襲撃されます。息子はここで誘拐されてしまい、海でボートを爆発させて死んだかと一瞬思わせたお父ちゃんは元気に海から戻ってきて、自分の友達が裏切り者だと察知。「セーラー服と機関銃」並みにドパパパパと銃を撃ちまくります。

しかし、父ちゃんに弾が当たらなさ過ぎてスゴイ。主人公補正なのかテロリストたちがノーコンなのか?

そして、話は変わって美人女子高生の話になります。
彼女には秘められた超能力があり、「人の気持ちが読める」「将来起こることがビジョンで見える」という特殊能力持ち。それを本気にせずからかう同級生に「アンタ、妊娠してるわね!」と細木数子も真っ青のご指摘ぶり。
ちなみに、超能力を発動している彼女に近付くと、出血します。 傷口からまた出血したり、鼻血が出たりするのよ。この血が、そこまで残虐な描写がないこの映画に恐怖感を加えてくれています。

しかし、この同級生たちの感じがいかにも70年代ダナーという感じなのですが、妊娠を暴露された女の子はかなりはすっぱで、慌てる同級生に「オ○○○でもして落ち着きなさいよ(フフン)」とか言ったりします。げ、下品!

その頃父ちゃんは息子を探し回っているのですが、スパイ組織にも追われているのでてんやわんや。他人の家に侵入して服を強奪したりするものの、そこの家のばあさまに慕われちゃうシーンなんかはコメディっぽいですね。
さらに、警官の車に無理やり乗りこんで逃げ、新車(本人の車でパトロールしてんのか?)を海に沈めてオシャカにします。
でも、追いかけてくる敵を相討ちにさせたりと大活躍。
しかし、「あっ、見つけた!」と敵が銃を撃つ → 味方の車を見間違えていて、撃ったのは仲間だったよチャンチャン、なんて展開はあり得るのでしょうか。とりあえず笑ったけど。

その後父ちゃんは彼女(シングルファーザーだから彼女もいるのである)に電話して迎えに来てもらい、車のなかで夜を過ごします。
すごいなあ。息子の心配しつつも、とりいそぎ彼女抱くなよ。

一方、同級生の事件のせいで自分のことを悩みだした女子高生は、超能力研究所に行くことになります。被験者が泊まりこみで能力を調べる施設みたいな感じですかね。
彼女はここに宿泊して、職員と仲良くなってゲームしたり、ピザ食べたり、アイス食べたり、犬と遊んだり、無邪気にキャッキャッと過ごします。
しかし、ある時施設長と手が触れ合った時に見えてしまった映像。 それは、件の誘拐された息子くんが施設の窓から落ちていく場面でした。

このシーンがすごくカッコイイ。
合成なんでしょうけど(当たり前だ)ビジョンをキャッチしている女子高生を軸に、彼女の見ている映像が次々差し込まれていきます。
まるでマンガの1ページを見ているような感じ。女子高生がページの真ん中に立っていて、その周りにコマ割りされたビジョンが書き込まれているような構図。この構図だけでもご飯3杯食えるよ!

当然、施設に警戒を強める女子高生。
それでも、彼女の能力を引き出しながら何をどこまで知っているのか、彼女は「使える」人間なのかをテストし続ける研究所。そうなのです、この施設も父ちゃんの友達の息がかかっているのですね。しかも、この施設で父ちゃんの彼女も看護師として働いているのであります。
なんと狭い話なんでしょう。ある意味「ご近所物語」ですね。

女子高生に同情した父ちゃんの彼女は、女の子を逃がしてあげることにします。しかも、彼女が息子のビジョンを見たことを父ちゃんにも伝え、うまく逃げられるように手配するやり手っぷり。
とにかく、不意をついて逃げる女子高生。それをとりあえず追いかける彼女さん(追いかけないと不自然だし、彼女がうまく逃げられるか見届けたかったんでしょう)。女子高生は裸足で必死に走りますが、父ちゃんの前で関係ない彼女さんが追っ手の車にはねられて血まみれに。まさかの死亡です。

涙をこらえる父ちゃんと彼女は2人で、息子が捉えられているアジトに乗り込むことに。女子高生をちゃんとお姫様抱っこして連れて逃げる紳士の父ちゃん。

しかし、ここで衝撃の事実が判明します。
息子がキチになっているのである。快活で優しかった息子・スティーヴくんですが、スパイ組織に厳しく管理されており、プライベートも何もなし。女性スパイが彼の恋人代わりを務めていますが、息子は他の男とも平気で仲良くする彼女にイライラ。当たり前ですよね、女性スパイは仕事で抱かれているだけなんですから。それにしても、監禁されている先でよく知らない女をよく抱けるねスティーヴくん。「女性スパイを抱いた高校生」か……。

スティーヴと女性スパイはデートで遊園地に行く約束をして実現するものの(彼女にプレゼントするためにぬいぐるみを用意するピュアなスティーヴくんです)、彼女は仕事で他の男性と飲みながら、彼をほったらかしに。
イライラMAXのスティーヴは、遊園地の乗り物をテレキネシスで壊し、乗客を阿鼻叫喚の渦に叩き込むのであります。この時にスティーブの額にぴしぴしっと血管が浮き出てくる描写もあって、思わず引き込まれるなあ。狂気の表情です。

このあたりで「もう息子を助けなくていいんじゃね」とうっすら思うのですが、そんなことは知らず、息子を助けるために監禁されている屋敷に忍び込む父ちゃんと女子高生。
しかし、息子は女性スパイに「いうことを聞かないならシネ!」とテレキネシスで彼女を宙に浮かせ、血まみれにして殺している真っ最中でした。
助けにきた父ちゃんの言うことも、息子は聞きゃしないんだ。
さんざん暴れた挙句、息子はなんと落下死しちゃいます。超能力者なのにね。
しかし、死ぬ寸前に女子高生とアイコンタクトをとるスティーヴ。何かを授かり、気を失う女子高生。

次の瞬間、目覚めたら父ちゃんの友達(裏切り者)がゴージャスな部屋に寝かせられた女子高生の枕元に立っています。
息子も死に、父もいつの間にか死んでます(殺されてます)。
絶望する女子高生。展開の早さについていけないわたし。彼女の能力を利用する気満々の裏切者おっさん。
ですが、彼女が強く願った次の瞬間、おっさんは「ポーン!」と全身爆発して終了。肉片すら残らないほどのすがすがしい爆発。 映画自体もここで終わります。

ちなみに女子高生が能力を使う時、思いっきり力むのですがその顔がいいのである。変顔ともいえるけど、「美しく映りたい」という気持ちが微塵もないのが素晴らしい。

パルマの作品でも「キャリー」と「スキャナーズ」の間に位置する映画ですが、この映画が「スキャナーズ」の頭ぽんぽんうぇいうぇいのシーンにつながったのだろうか。
この頃の人体爆発はいいよね。ロマンがあるよね。