好みの女性を人形にして棚に飾りたい。
こんなことを考えている男性はそう多くないと思うのですが、ホラー映画やホラー漫画にはよく出てきますね。漫画ではたいていオタクで太っている男性が犯人で、コスプレさせた女性をそのまま剥製にするようなシーンが多い。こういうステレオタイプの発想だいきらい。
(それだけに『ゴールデンカムイ』の剥製マニアの人好きだったよ)
人形なら排泄しない、老いない、口答えをしない(理想を壊さない)から、そうなってほしいと思うのかもしれません。「美しいキミをそのままとっておきたいんだ(ねっとり)」って感じか。
何はともあれ、頭の中で何を考えるのも自由ですので好みにはどうこう言うつもりはないのですが、海外のホラー映画で女性を人形にしたい人って、わりとトンチキなメイクを施す傾向がある。
おそらくアンティークな人形のメイクをそのまま踏襲しているのでしょうが、実際に施されたメイクは白塗り・眉は弓なりで細い・口はおちょぼ口というその風貌、バカ殿に出てくる誰かって感じがする。どんな美人でもマヌケ、っていうのでしょうか。
『ゴーストランドの惨劇』だとギリ奇妙で狂気を感じるほうに転がりましたが…
こういうのってちゃんとしたメイクさんを頼まないと大変です。
難しいもんね、下地塗ってファンデ塗ってアイメイクしてリップ塗って。
そう考えると、日本人形のメイクを美女に施す男っていないですね。見たいな。日本人形としてコレクションされる美女たち(たぶん着物の衣装レンタル代が高いから無理そう)。
ただ今回取り上げる映画は、さすがの自由の国・アメリカ映画。おおらかに適当にぬりぬりしておられます。
アメリカ映画。2017年製作『ドールメーカー』を見ました。
『フライトナイト』『チャイルド・プレイ』監督のトム・ホランド、『13日の金曜日』(オリジナル)の脚本家のヴィクター・ミラーの力を結集してできたのがコレだよ!
つっこみどころが異常に満載でありつつ、ホラーマニアの興味を引くのはさすが。ナンジャコリャと思うシーンもめちゃくちゃあるけど、ユニークなんですよね。
ただ、全体的に古めかしい感じはするけど…
原題は『ROCK,PAPER,SCISSORS ROCK PAPER DEAD』。直訳すると『じゃんけんぽん グーチョキ死』みたいな感じか。もうおしゃれに意訳する気もないっす。
犯人は年頃の美女を攫って監禁して人形にしちゃうぞウヒヒ(実際にはしてない)と言いながら殺害を繰り返していたという男・ピーター。
(彼が監禁・拷問の際に被害者とじゃんけんをしていたことからのこのタイトルだと思われる)
しかし、冒頭で犯人は逮捕。精神病棟に入れられ、命令していた双子の兄=アーロンが妄想の存在だったと気が付き、治療して日常生活に戻ります(連続殺人犯でも元の生活に戻れるのか…???)。
だが被害者の姉が復讐のために彼に近付いてきて…
というストーリー。
主人公が精神病を患う元加害者として登場するというのは切り口としてはまぁまぁ新しいのではないか。そうでもないか?
いや、実際にこの監督の手にかかれば不安感は増していくのです。目の前に現れる被害者たち、トラウマとなった過去… ちょっとしたはずみで飛び出してきます。
ついでに、この主人公を演じるルーク・マクファーレン(ブラザーズ&シスターズというドラマでスコッティという役を演じていた俳優らしいが)が尋常じゃないハンサムなので、その時点で非日常感はあります。
そしてちょっとしたシーンでも増す、マヌケ感。いいねぇハンサム!!!
ざっくりネタバレをしてしまうと
- 被害者の姉モニカはライターを装ってピーターに近付き、インタビューをすることに成功
- ピーターはモニカに惹かれていく
- モニカのインタビューにより、ピーターはおじの性的虐待の被害者だったことも判明(しかもおそらく10年近くはやられていた)
- だが、モニカはほだされず、ピーターを殺そうとする。しかしそこにもう一人の男性が!
- なんとピーターは精神病ではなく、本当にアーロンという兄(死んだことになっていたが生きていた)がいた。ピーターは快楽殺人鬼だが、アーロンも同じく殺人鬼であり、モニカを殺そうとする
- ピーターを殺したモニカは狂ってしまい、精神病棟へ。アーロンは彼女の狂言だと思われる
- しかしアーロンは精神病棟に押し入り、モニカをさらって監禁。拷問が始まる…!
という救いのない話なんですね。
双子は両親を亡くしておじに引き取られ、性的虐待をするおじをアーロンが殺し、アーロンは死んだことになったまま潜伏していた。アーロンが女性を言葉巧みにひっかけ、家に連れ込んでピーターの望むまま殺させていた。でもアーロンも女性を痛めつけるの好き。
みたいなことを最後に4行くらいのセリフでずらずらっと説明してくれる親切脚本なんですけど、それは劇中にちゃんと映像として取り入れたほうがよかったのでは…???
そもそも、そんなことあるわけないだろ(死んだことにしたんだ、と言っても遺体もないのにそう簡単に死が認められるのでしょうか)という脚本ではあるのですが。
いやでも、めちゃくちゃ面白いのよ。以下列挙。
■パンチラ
ピーター(おそらく中身はアーロン??)がターゲットとなる女子高生を見つけるシーン。思いっきり女子高生のパンチラを目撃し、見入るハンサム。う~ん、白いパンティか… と言いたげなハンサム。
パンチラを凝視するハンサムなんてなかなか見られませんよ。
この女子高生も、誰もいないと思ってノリノリで歌って踊っていたらピーターと目があって「あっ…きまずっ…」みたいな顔で立ち去るのですが、そもそもこのシーンはなんなのか。
■サイン
インタビューを断るピーターに「気が変わったらドアの横にほうきをたてかけておいて。それが合図」というモニカ。合図が古いよぉ!!サザエさんのレベルじゃん。
そういえば映画内にもスマホとか出てこないのよ。こだわりなのか。
■一目惚れ
ピーターはモニカが気に入ったのですが、引っ越しのあいさつとして彼女が持ってきたカップケーキにかぶりつきながらニヤニヤしているのも、なんだかね。中学生の読む少女コミックみたいな感じっすね。
■おかわり
ピーター(中身はアーロン?)は前述の女子高生のストーキング(実際、この子が最初の被害者になる)をしているのですが、その時もまだモニカのカップケーキを食べてます。何日に分けて食うんだよ!あと、どうやって家から高校まで運転しながらカップケーキ持ってきたんだ。
タッパーに入れてきたのか?もしかしておまたに挟んで運転してきたのか?
■おじさんの虐待シーン
おじさんの性的虐待シーンは非常にエグいので、この手のシーンが嫌いな方にはおすすめできないのですが、ハァハァしながら「じゃんけんをして勝ったほうのいうことを聞くんだ」「お前は俺の淫らな玩具さ…」とつぶやくおっさん。なにいってんだ。
で、このおじさんがなぜか性的虐待時にかぶっていた仮面を、ピーターも犯行時にかぶっているのですが。
おじさんの顔がでっかすぎて仮面から顔がはみ出していたのを見て、ものすごく冷める。仮面の輪郭よりも顔のほうがでっかいのは笑わせにきているのか。隠れてないぞ!
■夕食会
モニカに本当のことを話すといい、開かれたピーターの夕食会。
モニカは彼を殺すために動きやすいジャージ(かわいいランニングスタイルみたいな感じ。とはいえ夕食に招かれた時の服装ではない)で行くのですが、ピーターは蝶ネクタイでお出迎え。
マヌケ度急上昇。こういう時ネクタイでいいんじゃないか。あと、黒ならまだしも茄子みたいな色の蝶ネクタイを選んだがために、めちゃ浮いてます。
■ピーターの死
2階の窓を突き破り落下したピーターですが、作りかけの鳥小屋(木の幹にぶら下げるタイプではなく、地面にとりつけて鳥のエサを置くタイプ)に刺さって死亡します。
鳥小屋に刺さるってさぁ… 言葉だけでもう面白いじゃん。ボーボボでありそうじゃん。
■衝撃のラスト
生きていたアーロンは精神病棟を襲いモニカを連れ去ります。担当だった精神科医も襲われ、ず~っと事件を追い続けていた鬼刑事はただ立ち尽くすのみ。こいつマジ無能。ひとりだけ無傷だし。
端正なイケメンの殺人鬼って恐怖を呼び覚ますことはあるけど、笑いを起こすこともあるんだなあと実感させてくれる映画でありました。