カナダ映画『ラバーボーイ』を見ました。2014年。
ジャケ詐欺映画。といっても、「こんな美女出てこないじゃん!」のほうではなく、こんな恐怖をそそるイケてる感じの殺人鬼ではありません。「ラバーボーイ」、いわゆる皮をはぐ系の殺人犯ではなく、loverboy=イケメンという意味らしい。意訳するとラブリーボーイ、愛され男子か。
原題は『GIRLHOUSE』。女性たちが同名の施設でシェアハウスして、有料ライブ配信。おちちを見せたりおしりをぷりぷりさせたりというライトな配信から、がっつり夜の営み配信もあったりします(ちなみに同性愛者のカップルもいる)。チャットレディが集団生活している感じか?
日本でも素人カップルの性行為を配信する個人サイトみたいなのがあるらしいですけど、アメリカはすごい。カラッとしている。顔出し配信だし(とはいえ、会員制サイトだから誰でも見られるわけではないのだが)。
たしかに女性の管理がしやすそうではあるし、警備員も数人雇えばセキュリティも安心。サーバー管理も容易そうですね。この映画では、近くの家に数人のSEが詰めてました。
主人公のカイリーは、父を亡くし学費と生活費を工面するためにこのガールハウスに加入。そのことを知りながらも、ずっと好きだったカイリーに惹かれていくベン。真実を告白されたカイリーは揺れながらも、ベンとデートを重ねる… と、前半は青春映画なのですが、後半の殺人鬼パートがなかなかにグロ。
そもそもラバーボーイはどスケベで理想が高いデブちんで全然モテないタイプ。さらには異常にプライドが高いので、バカにされたと感じたとたんカッとして相手を殺してしまう… というムチャクチャな男。子供時代にも下半身を露出させられ(まあ、このいじめは最低だとは思う。ご褒美に感じる男もいそうだが)、その恨みを晴らすべくいじめっこ女子を橋の上からブン投げて殺したという過去を持つ、とんでもない男なのです。
(演じる俳優さんはすこし「ムカデ人間2」のローレンス・R・ハーヴィーさんぽい。ローレンスさんどうしているかなと思って調べたら、「ムカデ人間」3以降の出演作品を見つけられないんだけど…)
この追い詰め方がなかなかエグい。まず、彼女の乗っていた自転車をブン投げる。自転車の落ちて壊れる音で怯える少女。その後、少女をじりじりと落としていく。泣いても頼んでも意に介せず。この様子が怖いのよ。子役の力量がすごい。
まず、怪力の殺人者ってまず怖いですよね。怖くないわけないもん。
その後、ラバーボーイは大きくなったら自称SEとして(といっても、どこかのビルの配電盤とかいじっているだけだから派遣の電気工なのか?)生計をたてるも、そのビルで働いている女性のミニスカを凝視してめちゃくちゃ怒られてしまいます。
そのイライラに加え、恋するカイリーに顔写真を送ったら、別の女がそれをこっそりプリントアウトして家の掲示板に貼ってバカにしてしまい、それを把握してブチギレ。
このプリントアウト女はヤク中でしょうもないのですが、他の子はお金を稼ぎたいからちょっとやってみたんだよね~私スケベだし~くらいのライトなノリで、正直、いい子ばかりなので胸が痛い。
しかし、ラバーボーイはそんなことおかまいなし。サーバーに潜入して家のシステムをいじりながらガールハウスに襲撃し、罪のない女の子たちをボコってボコってボコりまくるのです。
この時の扮装はロン毛のカツラにゴムマスク、服装は作業用ツナギ。チープではあるが、頭のおかしい人が知恵をふりしぼって考えた変装という感じで、妙にリアルではある。
というわけで、後半はひたすらスプラッター。その裏で、ベンが友達の助けを借りて彼女の家を特定しようと頑張る推理パートも挿入されています。ガールハウスの住所がまた、全然わからないのよ!すごいセキュリティなのよ!!住所がわからないので、警察も全然相手にしないんですよね。
その頃、美女に恨みがあるラバーボーイは、ガールハウスのナンバーワン人気の美女・デヴォンの顔を切って全指を切り落としてしまいます。ここでカイリーが彼女を助けようとするも、こんな姿で生きたくないと袋をかぶって自死。この流れも、妙にリアリティがある。顔はなんとか直せたとしても、むちゃくちゃに切り刻まれている。しかも、全部の指を切り落とされてしまった。指がない、美人でもなくなるかもしれない。じゃあどう生きていくの?その生き方がわからない、怖い。彼女の恐怖がごりごりと爪を立てつつ、見ている人間の背筋をなぞっていくのであります。
他にも、ディ○ドを喉につめられて窒息死とか、階下に落ちて全身骨折しつつもラバーボーイを刺して逆に刺し返されたり(おそらくバッファローの角らしき物体で刺される。三角錐を首に刺されるのいたそう)、サウナに閉じ込められて脱出するもプールで襲われたり、助けを求めた人ごと被害にあったりと、めまぐるしいです。
それにしても、自死したデヴォンを除いて、みんなたくましく戦うんですよね。生きようと力を尽くし、相手に反撃する。こういう被害者がたくましい映画はいいですよね。負けてる場合じゃないと、何かが心に残る感じがする。
最終的にはカイリーが配信用のカメラ(暗視モード)を使いながら地下室におびき寄せたラバーボーイと戦い、勝利。ちょうどベンと親友と警察も家に駆けつけて生存確定で終わりました。
設定や脚本がけっこうおもしろくて、すいすい見られました。女性陣がキャラが立っているのもいいし、ベンとその友人のおマヌケぶりもかわいくてお気に入り。
もうひとつ。意外とラバーボーイが足が速くて、ダッシュで殺しに来ると抵抗が間に合わないというのもユニーク。見た目はぽちゃだからめちゃくちゃ足遅そうなんですけどね。すごく素早いの。そのポテンシャルを違うところで活かせばいいのに。怪力で足も速くて粘着質って、かなり最強の部類に入る殺人鬼だと思う。
ちなみに東京からも配信サイトを見ているおじさんがいたのですが、クリーニング屋のおじさんでした。なぜ東京、なぜクリーニング屋…???