すごく性格の悪い女子大生が廃団地で暴れまわるのも、また恐怖『N号棟』

N号棟

団地ってなんだか面白い。

漫画でいうと「団地ともお」なんて作品もありますが、安野モヨコの「ラブ・マスターX」を思い出したりもする。あと、浅野いにおも初期に団地を舞台にした作品があったような… すべてがあやふやなのが怖いですけども、「ラブ・マスターX」はホントにぞっとするねちねち感なんですよ。高校生や中学生が好きになったり嫌いになったり、大人も恋したり不倫したり駆け落ちしたりとドロッドロで、そのぎっちりした密度が今でも心に残っています。

団地ホラーっていうのもなかなかにいいもので、海外の団地ホラーも素敵なのです(デスゲーム系から吸血鬼系、オカルトもありますよね)が、日本の団地ホラーはイマイチ普及していないような…??

(団地が登場するものもありますが、メインではない。まぁ団地でホラー映画撮るのって縁起悪くて嫌われそうですし、そもそも手軽に撮影できてイメージ通り、かつ撮影許可だしてくれるところがあるのか…とかね)

しかし、こちらは真っ向から団地ホラーだ!!2022年の邦画『N号棟』を見ました。

結論から申し上げると、怖いというよりも主人公への不愉快さが先立ってしまい、イライライライラしてしまった。

テーマは「死」。死ぬのが怖くてたまらない主人公・史織。母親が植物状態で、生かし続けるかの選択を迫られている。死ぬのが怖いから、いつも予定をぎっちり入れる。眠れないから、既に新しい恋人がいる元カレを誘って寝てしまう。

現実にもこういう人もいるのでしょうが、しおりちゃん、純粋に性格が悪いのがね… (元カレの今カノに責任を押し付けたり、肝心なところでヘラヘラしたり、常にみんなに命令口調な感じだったり、唐突に不思議ちゃんぽくふるまったり)

元カレの啓太が卒業制作の映画のロケハンに行くというので、今カノ・真帆との間に割り込むようについてくる史織。

しかし、廃墟と言われていた団地には人が住んでおり、拍子抜けする。しかしその幽霊団地では次々と怪現象が起こり、住人の自殺まで目の当たりにしてしまって…!?

と、前半はなかなかに興味をそそります。

住人たちをまとめているのが筒井真理子さん。いやぁ、お美しいし声もキレイ(すごい聞き取りやすい)ので、完全に若手を喰ってしまっていますが、

  • このまとめ役の人の恋人がかつて死亡。でもここにいる(証明するように怪現象が起こる)。それ以来、この団地では死者と暮らすものが続出
  • 死は怖いものではない。素晴らしいものよ
  • 団地の住人のみんなは全員死ぬのが楽しみ
  • 指名されたら(幼児が押すカタカタ車が足元に自動で転がってきたら)死ななければいけない。即自殺しましょう
  • 知りすぎたのであなた(主人公)は死んでちょうだい

と、いくつかの設定がのっかってよくわからなくなったストーリーを聞かされても困る。

ちなみに説明はほぼないので、このゴチゴチにかた~いにえてな~い設定を飲み下すのに一苦労。

最初は死を信望するカルト集団なのかと思ったのですが(なぜか男女・女女でキスしまくったり、乱●を匂わせるシーンがあるんだけど、こういう時男と男ではキスしないよな)、宗教団体ではないらしい。ただ、白と赤の服で統一した住人たちのファッションがいかにもって感じ。

怪現象についても、一応からくりが解明されたものもあるのですが、怪現象自体は本当に起きているらしい…?

死体をバラバラにしてメスを入れているのも当初は「?臓器売買??」と思ったのですが、剥製にしてとっておくため(筒井真理子さんの恋人はミイラになって保存されていた)??

そして「死者はそこにいる…(ウットリ)」というのはいいのですが、同居できるならわざわざ自殺しなくてもええやんけ~人住まなくなったら団地自体再開発で消えるぞとか、いろいろ思うところがこみあげてきて大変です。

「死ぬのが怖くない?素晴らしい?なら、テメーが死ねよ!」と叫ぶ主人公の正論ぶりだけが眩しいのですが、真帆と啓太はわずか1日で洗脳されてしまって史織を殺そうと迫ります。はやくね?

ここからがすさまじい。主人公が全員を刺殺しまくるのです。

その後日常生活に戻った史織は自分に死を意識させた大学の教授のもとに行きますが、彼は失踪。ただし、団地の集団の一員であることを匂わせるようなメモが…??

そして史織は母の延命を終わらせ(突然背後に現れた女性に抱きしめられたのも謎。事情を知る患者??でも、医者じゃない人が延命装置勝手に止めたらダメなのでは…??)、安らかに眠ります。

穏やかに目覚めた彼女ですが、カメラが引いていくと… そこはN号棟。取り込まれてしまったのか…??

エンドロールでは、実際に女性誌に掲載されていた幽霊団地のレポ記事が登場するのですが、これを見てどうしろっていうんだ。「フーン『女性自身』の記者が体当たりでレポートしたのかぁ~なるほど」じゃないんだよ。

住人たちの奇妙さが一瞬ものすごく面白そうなのですが、乱●シーンみたいなのが挟まると一気に覚める。エロ目的の大学生??とか一瞬思っちゃったし。キレイなアダルトビデオに見えなくもないし…

で、スプラッターかと思えば違うし、オカルトでもないし。サスペンスでもない。なんだろう。

住人たちが団地の中庭で撮影した、みんなで寝転がって円を作っている(のをドローンかなにかで上から撮影している)シーンだけはちょっと鮮烈でしたけど。でもこれ、小学生の時の卒業アルバム用に撮影した全員集合ショットみたいだな… と思ったらもう覚めちゃう。

ホラーとしてのときめきがかすかにあれど、覚めさせるのが異常に早い。イケメンだけどクチャラーでモテない男みたいだな。

「これは夢か、幻か、現実か、それとも…」という映画のキャッチフレーズには「現実に決まってんだろ!」としか言えないですね。

全体を通して「働いたことがない大学生のたわごと」って感じでした。わっけ~な!