こういう悪趣味な映画大好き。
『マーターズ』の監督、パスカル・ロジェの『ゴーストランドの惨劇』。2018年製作。
一度見たんですけども、何も感想を述べずに月日がたち、もう一度見た。
夢かな?とすら思った。そう、まるで夢みたいに怖い。具合が悪い時に見る悪夢のようだ。
ストーリーはこう。シングルマザー・ポリーンの引っ越しについていく娘のヴェラとベス。ヴェラは彼氏もいた陽キャ、ベスはホラー作家になるのが夢の陰キャ(乱暴な分け方ですが許して下さい)。
この冒頭を見ると、よくある映画かなぁと思ってしまう(シングルマザーと折り合いの悪い姉妹、ド田舎への引っ越し、誰かに襲われるのは確定と役満であります)のですけども、絶対裏切られる!未見の方はご覧になることをおすすめします。
車で移動中、キャンディカー(アイスクリームカーみたいな感じの販売車)に追い越される。手を振るベス、中指をつきたてるヴェラ。
引っ越した家は亡き叔母のもので、奇妙な家具や人形で溢れていた。田舎に引っ越してきたことにイライラするヴェラ。だが、突然の襲撃に遭う!
キャンディカーに乗っていた男たちが襲撃してきたのだ。彼女たちを助けようと、母は犠牲になる。
だが、目を覚ますと、ベスは自分のオフィスにいる。既に16年が経ち、彼女は成功して夫と子供にも愛されて幸せに暮らしている。彼女は悪夢に悩まされている。
しかし、そこに実家にいるヴェラから電話がかかってくる。「帰ってきて」と。
ベスは帰郷するが、美しいままの母と暮らしているヴェラは事件を経て精神を病み、家に閉じこもって暮らしていた。怯え、暴れ、狂うヴェラの姿に閉口するベスだが…
すべてはベスの頭の中の出来事。現実は16年なんて経っておらず、彼女たちは殺人鬼たちに襲われて監禁されたままだった。ベスは美しい夢に逃避し、ヴェラは抵抗を続けていた。
しかし、ベスは母が死んだことを受け入れ、ヴェラを守るために覚醒する。
一度は荒野に逃げ出せたものの、助けてくれた警察官たちは射殺され、また実家に取れ戻される姉妹。また甘い夢に浸りかけるベスだが、ヴェラが死ぬかもしれないその瞬間、殺されたとしても殺人鬼に立ち向かうことを選んだ。警察の応援も到着し、姉妹は生存することができた。
実在するホラー作家のラブクラフトが出てくるのも面白い(彼が出てくることで、現実のように見えていた未来が本当に夢だったとわかる)のですが、なんともいえないのが殺人鬼たちのセンス。
まず、キャンディカーに乗っているという悪趣味ぶり、女の子をお人形さんのように扱って遊ぶ稚拙な巨男(ホラー映画やゲームで、コスプレさせた女の子で人形遊びするやつってたいていヒグマみたいな体形をしている坊主なのはなぜなのか)、悪趣味な女装で魔女のような扮装をしているドレスの男。大量のアンティークドールや気が狂ったようなセンスのインテリアがもう、凝ってるなぁという感じ。
ベラがされる人形メイクの下手さ(ピエロメイクのよう)も、ものすごくいい感じ。
こういう凝り症な印象があった監督といえばロブ・ゾンビだったんですけど、あんなにカラフルゴテゴテ悪趣味ではないかな(※ほめてます)。どちらかというとゴシックな感じ。
すごく美しくて残酷で、悲しくて、でも強いお話。パスカル・ロジェの映画に出てくる女性はものすごく強くて、でもどこかで物凄く傷ついている人が多い。その強さが映画そのものの光となり、理不尽な暴力や恐怖の闇をより濃いものにしている。