奇妙な少女が告白する殺人の経験、その裏に潜む恐ろしいミステリー『ロスト・ボディ~消失~』

わたし、この映画、すき!

スペイン/ドイツ/フランス映画『ロスト・ボディ~消失~』。2020年。

講演会に招かれた建築家。帰国しようとするも、奇妙な女性に邪魔されて飛行機を逃してしまう。自分が設計した空港で足止めを喰らい、その女性の話を興味本位で聞き始めた建築家だが、徐々に彼女の狂気がむき出しになっていき…

『ロスト・ボディ』というタイトルの映画が既にあるのでホラーファンからするとややこしいのですが、原題は「A PERFECT ENEMY」(完璧な敵)。原作は小説らしいですね。

※良質なサスペンスなので、未見の方は先に映画を見ることをおすすめします。

そもそも、謎の少女は大雨のなかでタクシーで同乗をせがんできたり、空港内のラウンジでもつきまとってきたり、なぜかトイレにもはいってきたりと奇行を繰り返します。

話も支離滅裂。子供の頃に母の恋人に虐待されていた、というのはまだしも、家を出てから街で見かけた美女を襲って殺した、街で徘徊して美女を吟味していた(殺すため?)、殺したはずの美女に再会するも覚えられておらず、再度殺した とか…(うろ覚えですが)

だが、この少女の母親が、建築家の元妻ではないか?ということが発覚。元妻は失踪して少女を出産していたのか?ふたりは親子だった?と、パニックになる建築家。

でも、実のところ少女は実在せず、自分の元妻を殺して空港の工事現場に埋めて殺した過去を思い出した主人公。封印していたはずの過去に飲み込まれそうになるが… 結局少女は存在せず、いうなれば彼の“良心”がそれを見せていたのか?

という感じの内容なのです。ほぼ2人芝居に近い作品なのですが、少女役の女優さんのギラギラ迫ってくる演技もすごいし、主人公の建築家のナイーブで神経質な感じもいかにもでいい。

空港内の模型が現実とリンクしているのも面白い(主人公と少女がバーで酒を飲み始めたら、模型のバーカウンターにも2人が並んだり)。これもよくできた演出ですよね。模型=主人公の頭のなか、という感じなのかな。

また、遺体をセメントの中に捨てたという過去を思い出したことから、少女の幻覚と主人公がセメントの中でつかみあい・沈めあいになるのもユニーク。緊迫感があるのはもちろん、現実と妄想の境目がつかなくなっている感じがよく伝わってきた。

DVDジャケットでも主人公たちのバックにセメントっぽい背景が採用されていますし。

ハリウッドリメイクとかされそうな良作でした。