彼を殺したのは、誰…?ヤンデレ×百合×殺人キャンプのフィンランドホラー『サマー・ヴェンデッタ』

サマー・ヴェンデッタ

2016年のフィンランド映画『サマー・ヴェンデッタ』を見ました。直訳すると『夏の復讐』。原題は『Bodom』ですが、フィンランドの湖の名前なんですね。日本で言うと「阿寒」とか「琵琶」みたいな感じのタイトルってことか。ドキュメンタリーみたいだな。

DVDのジャケットはあんまりよくない気が… 波紋がすごすぎて…

あまり詳しくないですが、実際のフィンランドの未解決事件をモチーフにしているらしい。え~またキャンプに行った不快な若者が突然出現した謎のおっさんに拷問されてボコられる話でしょ~と思ったら全然違いました。

また、2016年に公開された、ゾンビと人間の状態が入れ替わり続けるというホラー映画『サマー・インフェルノ』とタイトルが似ているから、似たような話かと思ったらこちらも全然違った。

個人的にはわりとおすすめなので、未見の方はぜひって感じですね。絶妙なミステリーです。

登場人物は主に4人。

やたらと暗いイーダ、その友達のノーラ、メガネのオタクキャラのアッテ、タトゥーが異常に多い(高校生で腕までびっちりタトゥーってフィンランドではOKなんですか?)エリアスです。

このイーダは「ある事件で大変な目にあった」「家に半年引きこもった」という情報だけが先行、途中で「パーティ中に飲酒して泥酔し、その時に裸の写真を撮られてばらまかれた」という経緯も明かされます。

アッテとエリアスは有名な未解決事件を自分たちなりに推理するために、当時の被害者と背格好が似ている2人を無理やり誘ってキャンプに。苛立ちながらも協力してくれるイーダですが、突然アッテが殺され、事態は急変。

ノーラもケガしてしまい、2人で助けを呼びに逃げるイーダとエリアス。実はエリアスはイーダと話したいことがあったと告白。

実はこのふたり、かつていい感じだったのですが盗撮事件を機にすっかり縁が切れていました。明言はされないものの、エリアスが盗撮事件に絡んでいるとイーダは思い込んでいたよう。しかし、エリアスは誰も裸の写真を見ていない、噂だけが先行している。そして噂をばらまいたのはノーラだと断言するのです。

改めてイーダに告白し、「僕の心臓はきみのもの」と言った瞬間に刺されるエリアス。息を呑むイーダ。しかし彼を刺していたのは… ノーラ!

実はノーラとイーダは共謀して2人を殺す計画を立てていたのです。すべては復讐のために。2人の死体を湖に捨て、車で逃げる女子たち(そのために荷物が多いという伏線があった)。しかしイーダはエリアスから聞いた話をノーラに問いただします。

そう、黒幕はノーラ。イーダがエリアスに恋をしていることが気に入らなかった彼女は盗撮事件をでっち上げ、彼女を孤立させ、さらにエリアスに対して殺意を抱くように仕向けていったのです。すげぇサイコパス!

喧嘩になる2人。車は道を飛び出し(運転中に喧嘩しなくとも…)、交通事故が起きます。

そこに通りかかった謎の男。事故車をけん引してくれるといいますが、ここで衝撃の事実が発覚。アッテを殺したのを、イーダは「ノーラがやった」、ノーラは「イーダがやった」のだと思っていたのですが、2人とも実は殺していない。つまり、アッテは知らない誰かに殺された…!?

次の瞬間、ものすごいスピードで牽引される事故車。車の中でバンバン転がるイーダたち。飛び降りようとしてもかなわず、車は引っ張られたまま宙に浮いて横に数回転したりとものすごい状態に。

いや、こんな映像見たことないですよ!感心しました。これはすごい。なんだこれは(笑)

車が止まり、逃げるノーラと車のなかにとどまるイーダ。しかし2人ともあっさり捕まり、かつての事件の被害者と同じ格好をさせられ(アッテが用意してきた水着)、口を接着剤でとじられ、テントの中で拷問されまくる女子たち。拷問されている時にその接着剤が剥がれ落ちるほど叫んでいる口のアップになるのもめちゃ痛そう。

ちなみにたき火を見ながら犯人がナイフを研いでいるのですが、このナイフを研いでいる人物、冒頭にも登場しています(事件当時の回想シーンなので青年ですが)。

なぜかイーダだけは生きて家に帰され(血まみれで水着のまま、犯行を自白するも心を病んだ模様)、また湖畔に来ている別の若者たちは何かの気配を感じ取っている… みたいなラスト。

なんとなくラスト間際で真犯人と遭遇するんだろうなとは思っていたのですが、イーダとノーラの共謀とは思わなかったな。しかもノーラちゃん、ヤンデレ百合展開なんて怖すぎる。

アッテがメガネのオタクキャラ、エリアスがヤンキーっぽい見た目なのに親友なのもすごいなあと思ったし、わりと厳格な家庭で育っているっぽいイーダと悪そうなエリアスが好き同士なのもたまげたし、エリアスは途中で一瞬ノーラになびいて一緒に湖に入ったりしてるし、でも4人の個性がうまく作品に活かされている感じが楽しめました。

ホント、エリアスは悪くない(アッテも悪くないが殺人事件を再現しようとするのがちょっと気持ち悪いので減点)のでかわいそう。あと、殺人鬼のおじさんが連れているドーベルマンがかわいかったです。かわいいなぁドーベルマン。

途中でするすると伏線がつながって物語が立ち上がるのが気持ちいい作品。ビジュアルのインパクトが強い暴走シーンもあるし。実話をベースにしていてもここまでセンスよく仕上げることってできるんですね!おすすめです。