『君と世界が終わる日』はなぜつまらないのか?ゾンビ大好き人間が推測してみた

『君と世界が終わる日に』がなぜ「つまらない」のか?めぼしいゾンビ映画はほぼ見尽くしている私が、その理由を淡々と考えてみました。

一応先に補足しておきますと、このドラマを作ってくれたことに対するリスペクトはあるんですよ。ただ、それを上回るモヤモヤが蓄積されていったというだけで…

1)キャスティング

これはもう単純に、出てくる人が少ない=盛り上がりに欠ける、という不満です。ゾンビドラマって生き残った生存者たちのドロドロも見どころのひとつですけど、それがあまりにも薄い。出演者を見ると人数は多いんですけど、物足りなく感じるんですよね。主人公グループの人数をもっと増やしておくべきだったのではないでしょうか。

死に役っぽいヤンキーもしくはヤクザとか、アホみたいな女子高生とか、犬連れたババアとか欲しかったな。あとオタクみたいな人(バトロワで方程式を暗唱しながら殺された優等生いたよな)とか、おデブちゃんとか、ゴスロリとかさ。めっちゃくちゃ喧嘩して対立して、とか見たいな。

日本の作品でいうと、GANTZに選ばれた人間たちみたいながっちゃがちゃをみたかった。

コロナ対策なら、いっそのこと空気感染するかもって設定でみんなガスマスクつけてりゃよかったんじゃないですかね。

あと、アクションできるキャストがもう少し見たかったな。

滝藤賢一さんのキャスティングだけは素晴らしいと思う。おもしろかったから。

2)キャラクター

キャストではなく、ドラマのキャラクターについても不満があります。

全体的にのっぺりしているというか、自分の意思がなさすぎるというか… そもそも、それぞれのバックボーンが語られなさ過ぎるうえに、主人公への依存度が高すぎるため、意思がまったく見えない。なんとなーく主人公についていっているだけ。生存率を上げるために。

リアルといえばリアルなのかもしれないが、ゾンビドラマでこんなふわふわ行動されても見どころがないのよね。

あと、子供も複数登場しますが、発想がサイコパスすぎて怖いんだ。

自分とお母さんをDVしていた父を(ゾンビのほうに導いて)殺した女の子は「みんなだってゴーレムを殺してるじゃない。私がパパを殺して何が悪いの?」とのたまうのですが、そ、それは違うだろう…

とか、

自らの過失もあり妹をゴーレム化させてしまった兄は、「大人がちゃんと見ていなかったからだ」と責任転嫁。さらにゴーレム化した妹を「苦しそう」という理由で解き放ち、それを殺した主人公を逆恨み。主人公の仲間を刺すのに加担し、その仲間を死亡させるも、最終的にはしれっと主人公の仲間グループに入ってるという衝撃の転身を果たしていました。

とか、「そういうこともあるかもしれないなあ、ゾンビがウヨウヨしている世界なら」という優しい思考を飛び越えるコエー言動が目立ちましたね。

3)ゾンビ演出

ゾンビが出てきたのはシーズン1の最初のほうと最終話くらいで、あとは数人ずつくらいしか出てこないのもすごく物足りない。

韓国映画とかドラマであれだけゾンビのキャストを大量投入しているのを見慣れると、ものすごく足りない。

血のりなんて全然使ってない(俳優さんがかぶってるくらい)し、CGもないし。『死霊のえじき』でも出てきた頭の上半分がチョンと飛ぶシーンに酷似した場面はありましたが、数十年前なのに映画のほうが怖いんだよなあ…

シーズン2はhulu配信のわりにヌルい描写しかないし… ゾンビ目当てで見た人は誰も満足していないと思います。

4)脚本

脚本家さんには申し訳ないけど、とにかく飽きる。同じ話のループ。シーズン1では「クルミー!クルミー!」だし、シーズン2では「俺、ここ出ていきますよ…」のループ。つらい。

肩透かしの展開が多いのも不満。シーズン1で来美が首藤の言いなりになっていたのは人質をとられていたから、と最終話で明らかになるのですが、そーんな普通の理由だったんかい!そして、それを主人公が「俺はお前がどんな奴か知ってるよ…」とドヤ顔で語るという背筋ゾワゾワ展開。

さらに、恋愛の話になると主人公とその彼女がやたらとポエム調の話し方になるのがイヤ。「空を見上げてごらん、あの頃と同じように星が輝いてるのがわかるだろ…」(これは私の適当だけど、テイストはこんな感じ)みたいな、こんなのシラフでいう若者おる?というセリフのオンパレード。

そして、上でも触れましたが、回想シーンが一切ないのよね。シーズン1の首藤も嫁とのシーンなし(嫁、ずっと凍ったまま)、シーズン2でみんなを陥れた野呂の独白も会話のシーンのみ。せめて息子とのツーショット写真を見せてくれ… 「実は私には息子がいましてね」とか言いつつ、痕跡ゼロ。もしかしてそう思い込んでるだけだったのかな…それはそれで怖いな…

回想もなければ伏線もないので、「この人が犯人でした~」テッテレー が全然盛り上がらない。

個人的にはもっと笑いの要素がほしかった!

シニカルな笑いでもブラックジョークでもいいから、面白いシーンがちょこちょこあれば怖いシーンも引き立ったんじゃないですかね。ってくらい、ふざけるシーンも気の利いた会話もなかったですね。

5)設定

そもそも、なぜ世紀末ゾンビモノ×恋愛ドラマにしたのだろうか?

恋愛ドラマをやりたいなら、ゾンビコメディにしたほうが絶対見やすかったと思うんですよ。これも既存の映画の設定だけど、束縛魔の彼女がゾンビになって戻ってきて、でも新しい女の子も気になるし… でも彼女のこと見捨てられない!でもそのことがほかの人間にバレそうになっちゃった!しかも俺が彼女を殺したと思われてる!?そもそも彼女を殺したのは誰? みたいにミステリー要素にもっていくとか。

ネットフリックスの『デイブレイク』みたいに、わちゃわちゃ生存者たちで喧嘩しつつ彼女を探しまわる(このドラマと被るところが多いんですよね、「彼女を探し続ける主人公」とか「実は彼女は生存していて対立組織にいた」とか)パッとしない青年の青春物語、とか。

真っ向からゾンビ×恋愛をやると、評価低くなりますよね。『ウォーム・ボディーズ』好きだけどな、わたしは。

この恋愛要素もやっかいで、「自分がある」というより「ただの頑固」にしか見えない来美がすごくモテまくる理由もわからない(美人だからか?)。体の関係からずるずる付き合いだす等々力・佳奈恵カップルのほうがよほどリアルで、キュンとするというか。

つまり、こういう設定をほとんど見ないということは、それだけ難しい(見る人を選ぶ、センスが問われる)ということだと思うんだけどな。

個人的によかったこともあげとこう。菅田将暉のエンディングソングはよかったです。おわり。