ゾンビに追われながら砂漠を歩き続けたら絆が生まれた不思議ゾンビ映画「サンズ・オブ・ザ・デッド」

サンズ・オブ・ザ・デッド

「サンズ・オブ・ザ・デッド」というダサダサの邦題のホラーがHuluにおちてきていて、見てみました。もともとDVDになった時点で気になっていたものの、あんまりにもジャケットの出来が悪かったので面白くなさそう…とスルー。いや、でもこれが面白いんです。最近見た「CUB」もHuluだけど私は好みだったし、一時期のクソゾンビ映画ラッシュよりはぜーんぜん見ごたえがありますね。2015年アメリカ映画だったかな。

ゾンビパンデミックが拡大しているなか、砂漠を車で走るカップル。その片割れ・モリーが主人公です。彼女は現役ストリッパーで、息子がいるものの、子供ができない姉(裕福)に養子に出したという過去があります。酒が好きでドラッグもやってというまあまあダメな人なのですが、子供のことはとにかく心の奥で後悔している…というキャラ。
車が途中で故障したうえ、ボーイフレンドはゾンビに殺されて死亡。彼女はひとりで砂漠を歩き続け、延々と追いかけてくるゾンビから逃げ続けることになります。
(ちなみにゾンビは脳みそじゃなくてはらわたくってた)

このゾンビはモリーによって「スモール」と名付けられますが、彼女をひたすら追いかけてきます。夜中に焚き火をしているモリーの背後からヌッと現れるシーンはかなり怖め。彼のせいでドラッグをこぼしたり、2人で砂嵐に巻き込まれたり、助けてくれた男たちが刑務所からの脱獄犯だったり、その脱獄犯から助けてくれたのがスモールだったり…と、人間よりもスモールに信頼をおくようになっていくモリー。スモールもモリーを噛もうとしなくなります(もうこの時点で「ゾンビ」の定型を逸脱しているのですが、そんなルールはそもそも存在しないに等しいから気にしないのがベスト)。
途中で出会った軍隊からは体を張って彼をかばい、スモールは足を撃たれてしまいます。モリー自身も苦しむスモールに噛まれ、感染した指を石で潰して落とすというとんでもない体験をすることに。しかし、スモールは死亡(ゾンビなのに頭を撃たれているわけでもなく動かなくなる)し、モリーはひとりで脱出のため飛行場に向かうことにします。

しかし、彼女は脱出を選ばず。スモールと息子を重ねていた(偶然にも同じ髪型)彼女は、息子のために市街地に戻ることを選んだのです。車で戻る途中、ボーイフレンドがゾンビになっているのを目撃しつつ、かつての思い出に浸るモリー。この回想シーンが美しく、不安で、繊細で素敵です。細かいアングルなんかもいいなあとおもうところがたくさんあるので、この監督さんはどんな人だろうと思ったらトンデモSFホラー「エクストラ テレストリアル」(めちゃめちゃグロイUFOでの拷問が登場するホラー。UFOにさらわれる系という、最近のSFでは意外と珍しいタイプのお話。バッドエンド荷定評あり)の監督さんでした。

そして街に戻ると、姉の夫はゾンビ化して頭割られて脳みそはみださせてるし、姉は噛まれて自ら焼死しているし。しかし息子は生きており、今度こそ息子を守り抜くぞとゾンビと戦う場面で終わり。
この女優さんが、最初はとんでもないクズ女子を演じているのですが、徐々に砂漠で虚勢や無意味なプライドのようなものを削ぎ落とされていき、メイクも服もぼろぼろになりながらもなぜかものすごく美しく見えてくるからすごい。最後はちゃんとお母さんとしての顔になっています。

登場人物は少ないですが、ロケーション選びも最高、市街地のシーンもしっかり完成度が高いのも嬉しいです。そういえば、生きている女性は主人公しか登場しないというのもユニークですね(他の生存者は男性のみ)。引き込まれました。

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