「マジカル・ガール」

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2014年のスペイン映画「マジカル・ガール」。これは間違いなく問題作であり、すばらしく繊細な話です。日本アニメも登場するので(劇中歌はなんと長山洋子!)、日本でもその点がフューチャーされましたね。
・余命僅かな娘の願いをかなえるため、コスプレ衣装を購入したい父
・たまたま出会った女性を、とあることから脅迫することに
・だが、その女がトンデモナイ女であり……
ラストは非常に後味が悪いですが、最後にぱちりとピースがはまるような感覚があり、その気持ちよさが胸糞の悪い展開を帳消しにしてくれる感じがあります。

あらすじ

白血病の娘の夢を叶えようと追い詰められた父親が辿る予測不能の運命を、ブラック・ユーモアに満ちた独創的な語り口で描き、各地の映画祭で絶賛された異色のノワール・サスペンス。主演は「フリア よみがえり少女」のバルバラ・レニー。共演にルイス・ベルメホ、ホセ・サクリスタン、ルシア・ポリャン。監督は、本作でも様々な日本テイストを盛り込むなど日本カルチャーをこよなく愛するスペインの新星、カルロス・ベルムト。これが記念すべき長編デビューとなる。
白血病で余命わずかな12歳の少女アリシア。彼女の願いは、大好きな日本のアニメ「魔法少女ユキコ」のコスチュームを着て踊ること。父のルイスは、さっそくネットでコスチュームを見つけるが、高すぎて失業中の彼には手が出せない。思い詰めた末に、高級宝石店に強盗に入ろうとするが、ひょんな成り行きから、心に闇を抱える人妻バルバラの自宅へと足を踏み入れることに。一方、刑期を終えたばかりの元数学教師ダミアン。因縁浅からぬバルバラとの再会が怖いと出所をためらう。やがて彼らの皮肉な運命は、思いもよらぬ形で交錯していくのだったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=354728

ネタバレ

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授業中の女生徒。メモをまわしていることを怒られ、渡すように命令される。
「でも、メモを持っていないんです」
という彼女。彼女は教師をからかっている。

白血病の少女・アリシアは家でダンスをしている。彼女は日本のアニメ「魔法少女ユキコ」に夢中だ。

MUNDO(世界)

本を売ろうとする中年男性。やはり売るのをやめ、通りかかったショーウィンドーで宝石を見つめる。それはアリシアの父・ルイスだった。彼は帰宅して倒れている娘を発見し、病院に運ぶ。

アリシアは友達の家に泊まりたい。「アニメを見て、ラーメンを食べるの」という彼女。

ルイスはたまたま、彼女の願い事ノートを見てしまう。
「誰にでも変身する」
「魔法少女ユキコのドレス(が欲しい)」
「13歳になる」
父はネットでドレスを調べるが、90万円することがわかって絶句する。次の日、彼は本をありったけ売り飛ばす。そして知り合いに金の工面を頼むが、反応は芳しくない。いっそ宝石を盗もうか考えるルイス。

その頃、バルバラという女性は夫に靴を履かせている。バルバラは精神的に不安定だ。
赤ちゃんを連れて友達夫婦が遊びにくるが、彼女は大笑いする。その理由を尋ねられ「窓から投げたら、どんな顔をするだろうって」と答える。

DEMONIO(悪魔)

バルバラは睡眠薬を飲んで眠るが、起きたらクローゼットがからになっている。額で鏡を割る彼女。

白髪の男がジグソーパズルをしている。そこに、電話がかかってくる。かけたのはバルバラだ。
だがつれなくされ、彼女はベランダから吐き戻す。それがルイスにかかってしまう。彼女はルイスを部屋に招き入れ、侘びながらシャワーを貸す。その後、彼らはキスをして関係まで持ってしまう。

翌日、ルイスは消えていて、夫が入れ代わりで帰ってくる。彼はバルバラの不安定さに、夫婦を続けるべきか迷いを生じさせている。だが、バルバラはルイスから「昨日のことを夫にバラされたくなかったら金を払え」と脅迫される。

彼女はある女性(特殊な売春の元締め)を訪れ、仕事を求める。彼女はもともとその手の仕事をしていたが、結婚して足を洗ったのだ。だが急に金が必要なので、挿入なしで1回きりという条件ながら、ハードな仕事を引き受ける。

ある男の家を訪れる彼女。
「我慢すればするほど稼げる」という男だが、バルバラの体は驚くほど傷だらけである。

金を受けとるルイス。ドレスを買って娘に渡すが、あまり喜んでいないようだ。ルイスは思いつく。魔法の杖が必要なのだと。だが、それにも大金がかかる。彼はまたバルバラを脅迫する。
彼女はよりハードな仕事を引き受けることとなる。

ダミアンという老人が刑務所から出所する。「まだ出たくない、出所せずに残りたい」という彼だが、その本心は「バルバラに再会するのが怖い」のだ。

CARNE(肉)

ダミアンがしているジグソーパズルは、1つ足りない。

ダミアンの家の前に、バルバラが倒れている。彼は病院に連絡する。
その後、バルバラの夫から呼び出されるダミアン。第一発見者としてお礼を言われ、病院に呼ばれて本人と面会するように言われる。

バルバラは想像以上にボロボロで入院を余儀なくされている。彼女はダミアンに金の受け渡しを託し、彼は言うとおりに図書館の本に金を挟んで返却する。ダミアンはこれ以上彼女に関わり合いになりたくないと思っているが、本心はどうなのだろうか?
バルバラはダミアンに真相を聞いて欲しいといい、彼は拒否するがやはり話を聞くことを選ぶ。バルバラはルイスに嫌がらせをされていると嘘をつき、ダミアンはルイスに敵意を抱く。

ジグソーパズルをぐちゃぐちゃにするダミアン。

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ダミアンは囚人仲間のもとに行き、銃をもらい受ける。彼はルイスの後をつけ、バーに入る。ルイスとダミアンは相席するが、ダミアンはバルバラのことを明かし、彼女を救うために服役した過去をも語る。銃で自殺しろと迫るダミアン。従わなければ家族を殺すと命じる。
ルイスはバルバラが嘘をついているといい(バルバラは「ルイスに強姦された」と言った)誤解を解くが、ダミアンは彼を撃ち殺してしまう。ダミアンはフラフラだ。承認となるバーのマスターや客も殺し、合計3人を殺害する。

ルイスの家に向かうダミアン。そこにはアリシアがいる。ドレスと杖を身に着け、「魔法少女ユキコ」の歌が流れる。銃を向けるダミアン。見返すアリシア。
「こっちを見るな」
銃声が響く。

病院。ダミアンがバルバラの病室を訪れる。
「二度とあの男は来ない。恐喝もしない」
だが、バルバラの携帯電話を渡さないダミアン。
「くれないの?」
「もっていないから」
広げた彼の手に何もない。

感想

・オープニングの伏線をエンディングで回収していますが、冒頭は「中年男性をからかう美少女の傲慢さ」みたいなものが感じられますが、バルバラとダミアンにそういう関係があったような印象はなく、それでも彼女には男性を服従させる雰囲気のようなものがあるのであります。でも、仕事ではおそらく究極のM嬢みたいなことをしていて、夫には絶対服従。人間の多面性についても考えさせられるような気がする。
・誰が悪いのかといえば、皆悪い。でも、皆悪くないとも思える不思議な映画。
・「魔法少女ユキコ」のドレスがかわいい。