「グッドナイト・マミー」

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2014年のオーストリア映画「グッドナイト・マミー」を見ました。
・ママが突然おかしくなった?僕のママを返して!
・でも、ママにはある真実が……!?
正直、展開は予測していた通りだったのですが、それを遥かに上回る「不快」な映像。禍々しさと純粋無垢さが入り混じる、不思議な世界観。
映像がキレイすぎて地雷?(ホラー映画で淡々とキレイな景色を映す映画は微妙なものも多いという経験則)と思ったのですが、そんなことはありませんでした。「ボーグマン」といい、キレイな自然の中に建てられた豪邸が漂わせる儚さとか悲しさとかが、何よりもゾクゾクさせてくれる。

あらすじ

各地の映画祭で評判を呼び、ホラーファンの間で世界的に話題となったオーストリア発のサイコロジカル・スリラー。整形手術を受け、顔全体に包帯を巻いて帰ってきた母親の不可解な振る舞いに、次第に疑念が深まり恐怖に囚われていく双子の兄弟が辿る衝撃の顛末をスタイリッシュな筆致で描き出す。
本作の製作を務めたウルリヒ・ザイドル監督の“パラダイス3部作”で脚本を担当したヴェロニカ・フランツが、ゼヴリン・フィアラとともに脚本・監督を手がけた。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355085

ネタバレ

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ミュージカル映画がテレビモニターに映っている。トウモロコシ畑をダッシュしている双子。兄弟で鬼ごっこをしているようだ。エリアスとルーカスは遊びまわっている。

そこに、誰かが車に乗って帰ってくる。彼らのママだ。包帯をグルグル巻きにした彼女は、ややヒステリックに子どもたちに接する。エリックだけをひいきして、ルーカスにしか食事や飲み物を与えない。ママと息子たちは夜までゲームをして遊ぶ。

双子はゴキブリを飼育している。夜中、ゲームをママに取り上げられる子どもたち。
「家では静かにする」「ブラインドを上げない」「何も家に持ち込まない。動物も植物も不可」「ママの部屋に入る時にはノックをする」「誰かが来たら、『ママは病気』だという」といった厳しいルールに、子どもたちは「前のママとは違う」と感じ始める。

エリックは、夜中に部屋を抜け出す。すると、洗面所には薬を塗っているママがいる。鏡越しに目が合い、エリックはおののく。母は子供部屋まで追ってくるが、エリックは反射的に隠れる。

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雨の日。双子はトランポリンやサッカーで遊んでいる。また、ゲップをしながらふざけ合ったりもする。来客が来たのでママを呼びに行くが、出てこない。宅配のおじさんは冷凍庫に食料を詰め込みながら、「あまりにも大量すぎる」と少年をからかう。

廃墟に遊びに行く双子。猫を見つけて、持って帰ってきてしまう。
だが、ママは不審に思って子ども部屋を荒らす。猫は見つからなかったが、ママを脅かしたことでエリックはひどく怒られる。

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母は森の中へと歩いていく。どんどんと服を脱ぎ、包帯もとる。そして、頭を振り続ける。その表情はまったく読み取ることができない。狂気しか感じられない。

掃除をしているママの横で、ピアノを弾いている少年。もう一人は虫眼鏡で虫の死体を焼いている。双子は壁に飾られていた写真がいくつかなくなっていることを知る。そして、今いる家が「売家」としてネット掲載されていることを調べ上げ、ママとママに似た女性が一緒にうつっている写真を見つける。
子どもはママの寝室に入って調べようとするが、見つかりそうになって断念する。
子どもたちが掃除をしている間に、猫が死んでいる。
「きっとママがやったんだ」

猫をホルマリン漬けにして、リビングにおいておく双子。
「ママじゃない、ママならホクロを見せて」と懇願する双子だが、怒らせてしまう。

子どもたちは「ママ、戻ってきて」「ママさえいれば、他に何にもいらない」と言う。

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ママのお腹を切ると、ゴキブリが沢山出てくる。そんな夢を見る双子。

翌朝、「仲直りしましょう」と包帯を取ったママが現れる。いつも通りのキレイなママだが、子どもたちは信じられない。外に逃げ、村の教会に逃げ込む2人。
神父に車で家まで送られる少年たち。
神父と母が話しをするが、母は「事故で息子が……」と黙り込む。
息子たちは夜中にベッドを抜け出して、母を縛り上げる。

ママが目を覚ましたら、息子が手作りの仮面をつけて枕元に立っている。双子はママに写真をつきつけ(ママと、同じ顔の女性のツーショット写真)、これは誰かを尋ねる。ママは友達と同じ服を着て撮影しただけだと主張する。
双子はママの目の色彩が今までと変わっているような気もしている。なので、目を丹念に調べ続ける。彼女の部屋には、整形に関連するメモや写真が貼られているようにも見える。

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エリックとルーカスは喧嘩になる。ママを信じるべきか、それとも別の女性なのか。ルーカスはママを信用しようとしない。
双子たちは、ママがエリックに「ルーカスと話さないと10回言いなさい!」と強要した動画を見せる。

ママには目印のホクロがない。「病院でとったから」と主張するが、双子はママの顔を虫眼鏡で焼く。じりじりとヤケドが広がる。
「僕等のママはどこだ?」

双子は、森の中で祈り続ける。

赤十字のスタッフが、寄付を求めて家に勝手に入ってくる。老人たちは鍵がかかっていないのに返事がないことを不審に思い、家主を捜す。だが、そこに双子が返ってくる。助けを求めようと叫ぶママだが、口に貼ったテープが剥がれたのは赤十字スタッフが帰宅した後だった。

ママの口や目をボンドで塞ぐ双子。ハサミで空気穴を開けようとして、唇を裂いてしまう。あっという間に、ママの口から血が溢れる。

双子は、ママに子守唄を謳う。
ママは血まみれで、小便ももらしている。

「ママはどこ?」
拷問は続く。歯間掃除用の硬い糸で執拗にこすられ、歯の肉を削られ、絶叫するママ。
ママは逃げようとするが、子どもたちが用意していたボウガンが彼女を貫く!

ルーカスはろうそくに火を付ける。
ママは呟く。
「ルーカスは生き返るわ」
エリックは動きを止める。
「ルーカスが死んだのは事故のせい。あなたのせいじゃないの」
エリックとルーカスは、まだ続ける。
「本物のママか証明させよう」
「ルーカスは今、何している?」
ママはルーカスの動作を答えられない。
ろうそくから、家に火が燃え移る。どんどん家が燃え、ホルマリン漬けの猫にも引火。それは火をまき散らしながら爆発する。ママは絶叫しながら、炎上していく。

燃える家。警察や消防車がかけつけている。
エリックはとうもろこし畑に駆けていき、気が付けばママとルーカスと寄り添っている。
3人は燃える家を、幸せそうに見つめている。

感想

・エリックとルーカスが事故を起こし、ルーカスが死亡(もしかしたら、エリックのいたずらが原因ででルーカスが死んだのかもしれないし、ルーカスがエリックをかばったのかもしれない)。ママも巻き込まれる形でケガをして、形成手術を経て戻ってきた。だが、ルーカスを奪ったエリックが許せないし、ルーカスがいるように振る舞うエリックに苛立っていた。
エリックはエリックで、事実を認めたくないためにルーカスの幻想を見ていた。
・とはいえ、ママの“友達”との写真は本当に単なる偶然だったのか?(友達とお揃いの服、髪型、メイクをして、そっくりにしたもの)
・猫はママが殺したのか?エリックが世話をしなかった、もしくは病死なのか?
・大量すぎる食料は、エリックとが元通りになるまで家に閉じ込めておく気だったのだろうか?
・ママが森で裸になって頭をブンブンさせている映像は何だったのか。

・冒頭で「ルーカスは死んでいるんだろうな」と思わせるものの、子どもがママに拷問するというブットビ展開につながっていくあたりは非常に怖い。
(ルーカスが食事をもらえないシーンでそれが察させられる)
・ちなみに、エリックとルーカスは子役の本当の名前のよう(もしくは、それをそのまま芸名にしたのかもしれない)。
・ゴキブリがやたらとフューチャーされていました。でっかかった。オーストリアのゴキブリ。