「メビウス」

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2013年の韓国映画「メビウス」です。この映画は全編、セリフがありません。表情や動きですべてを表現しています。 しかし、この作品がまた、なかなかに挑戦的なのであります。すごい映画だ。やっぱりキム・ギトク監督はクレイジーですね。いい意味で。

あらすじ

韓国の鬼才キム・ギドク監督が、性と欲望をめぐる人間の深い業が紡ぎ出す一組の家族の無間地獄を、セリフを一切排した過激かつ挑発的スタイルで描き出した衝撃の問題作。父と母に思春期の息子の3人家族。何不自由ない上流階級の家庭ながら、お互いの関係はすっかり冷え切っていた。ある日、夫の不貞に気づいた妻は嫉妬に狂い、夫の性器を切り取ろうとする。それに失敗した妻は、今度は息子の性器に手を伸ばし、それを切断してしまうのだった。妻はそのまま家を出て行き、2人で取り残された夫と息子だったが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=348806

ネタバレ

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酒に溺れている母。携帯電話をいじっている父と取っ組み合いにの喧嘩をしている。
その様子を眺めている息子(学生。高校生くらい?)。

父の不倫現場を見かけてしまう息子。カーセックスで揺れる車を見ながら呆れている。しかし、それを見ているのは息子だけではない。母もそれを見ていたのだ。

その夜、父の性器を切り落とそうとする母。しかし警戒されてしまい、部屋を追い出される。そのまま彼女は息子の部屋に足を運び、息子の性器を切り落とす。
父は母の口に手を突っ込み、吐かせようとするが抵抗されてしまう。彼女は、もしかしたら息子の性器を飲み込んだのか?
後から自分でも吐こうとする母。だが、吐き出せない。

彼女は裸足のまま、夜の街へと歩き出す。そして、店(ヒンドゥー教?の像が置かれている店。ただし、販売店なのかはわからない)の前で祈っている男の後にフラフラついていく。

病院に運ばれる息子。性器を失ったことに呆然としている。父は自分の股間に銃を押し当てるが、撃つことができない。
不倫相手の女性が今まで押しかけてくるが、父は彼女を無視する。

性器を失ったことで尿がコントロールできなくなり、トイレで失敗してしまう息子。それを学友が見ており、待ち伏せしてズボンを下ろそうとする。それを止める父だが、逆に暴行を受けてしまう。

父も悩み、自身の性器を手術で切り落としてしまう。

父の不倫相手のもとを訪ねる息子。あえて、胸を出し彼を挑発する不倫相手。
だが、そこにいじめっこたちがまた通りかかり、彼のズボンを下ろそうとする。それを止めるチンピラの集団。

このチンピラとつるむようになった息子だが、こいつらがまた曲者で、父の不倫相手のお姉さんを強姦してしまう。息子も強姦するように言われ、彼女を襲う。だが性器がないので挿入することはできない。

彼らは強姦で逮捕されるも、父の証言のせいで息子は警察官に股間を調べられ、性器がないことがバレてしまう。父のことを殴り、笑ったチンピラも殴り、彼は少年院に収監される。

自殺しようとする父。だが、できない。
その代わり、息子のために性器がなくとも快楽を得る方法を考える父。「石で手足を削り、その痛みで快感を得る」方法を知る。自分でも試してみる。

少年院で、同室の男の子たちに股間をまさぐられ、ズボンを下ろされそうになる息子。それに抵抗し、彼は独房に入れられる。
息子は父から教わった方法を試す。

少年院を出てきて、お姉さんに会いに行く息子。だが、彼女に肩を刺される。
しかしその勢いでキスをしたり、胸を触ったりする。
彼女の刺したナイフを自ら深く押し込み、傷跡を広げようとする息子。それを見ていたお姉さんは、息子がナイフを持つ手に自分の手を添え、より深く傷跡を広げていく。

チンピラも出所。お姉さんは迎えに行き、酒を飲ませ、押し倒す。しかしお姉さんはチンピラの性器を切り落としてしまう。 そこに隠れていた息子が出てきて、その性器をもって逃げる。チンピラの性器は結局車に轢かれてしまった。

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別日、お姉さんを殴りに行くチンピラ。しかし、今度は息子がその背中を刺す。それを前から抱きしめているお姉さん。

父の性器を息子に移植。しかし、ノーエレクト。

突然母が帰ってくる。どう扱っていいのかわからない父子。父と子で肩を寄せ合って寝ていると、そこに母が乱入して川の字で寝ようとする。
しかし、ふと母は気付く。息子が勃起していると。そして父から性器が消えていると。

勃起した股間を隠し、お姉さんのもとに走る息子。
次の瞬間、裸になっているお姉さんの横に座っている息子が帰るシーンに切り替わる。お姉さんは裸のまま、号泣し始める。

帰ってきて寝ている息子のベッドで、息子の性器を触り始める。泣きだす息子と母親。

父は自分の性器を取り戻したくなったのか?ナイフをもって息子の枕元に現れる。だが、それを母が阻止する。

父は母を抱こうとする。だが父は性器がないため、彼らは肌を合わせることすらできない。

その頃、チンピラはまたお姉さんのところに現れていた。
今度は自分で、彼の背中を刺すお姉さん。それを見つめている息子と目が合う。微笑むお姉さん。

母親と関係を持つ息子。そこに怒鳴りこんでくる父親。
だがそれは現実のものではなく、息子の妄想だったようだ。彼はとうとう自分で果てることができた。

息子が自室の外に出ると、そこで両親が頭を撃ち抜いて死んでいる。息子は座り込み、自分の股間を銃で撃ち抜く。

どのくらい時間が経ったのかはわからない。夜、街中を徘徊している息子。
彼はある店を見つける。その店には、象をかたどった神像などが飾られている。彼はそれに向かって頭を伏せ、祈りを捧げる。その姿は、母がかつて家を飛び出した後、ついていってしまった謎の男そのものである。カメラに向かってにやりと微笑む息子。

チンピラの性器が車に轢かれるシーンやシチュエーションそのものはコントにしか見えないように、悲劇なのに喜劇のようにも見えるのが特徴的なこちらの作品。
家族とは?愛とは?生と死とは?と、さまざまな疑問を投げかけてくる話です。