「映画は映画だ」

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2008年の映画「映画は映画だ」です。キム・ギドク監督が原案と製作総指揮です!
のちに「俳優は俳優だ」も誕生しますが、そちらと連作なのかと思いきや全然関連はありませんでした。ただし、こちらは原題も「MOVIE IS MOVIE」です。

チンピラ映画を撮影している、中途半端な映画スター。映画スターに憧れていた、チンピラ。彼らが協力して映画撮影に臨むことになるという話なのですが、ストーリーにうねりがあって飲み込まれそうになる映画というよりは、強烈な個性を持つ男の生きざまに圧倒されるような映画です。

あらすじ

韓国の人気スター、ソ・ジソプとカン・ジファンがヤクザと映画スターという対照的な2人の男を演じる異色ドラマ。鬼才キム・ギドクが原案と製作を担当し、ギドク作品の助監督を務めてきたチャン・フンが本作で監督デビューを果たした。人気俳優のスタは新作のアクション映画でファイトシーンを撮影中、頭に血が上って共演者に大けがを負わせてしまう。そんな短気で傍若無人なスタの振る舞いによって彼の相手役を引き受けようという俳優がいなくなり、撮影が中断する事態に。そこでスタは、以前出会った俳優を夢見ていたというヤクザの男ガンペに話を持ちかける。ガンペは、ファイトシーンでは本気でやり合うことを条件に出演を承諾するが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=332681

ネタバレ

海に男を沈め、膝のケガを縫ってもらっている男。
チンピラのスタは病院で赤ちゃんにあっかんべーをして、その赤ちゃんが逃げていきます。

ガンペの出演するアクション映画を見ているスタ。

そして、チャラついている俳優・ガンペと無骨なチンピラ・スタは同じ料理店を利用します。「ボスのためにサインをくれ」と言いに行く部下に「欲しい奴がもらいに来い」と冷たく対応するガンペ。スタは自らサインをもらいに訪れます。
生意気なガンペを殴ろうとする部下たちですが、スタはそれをとめて「俳優さんは顔が命だ」と言います。

家でセリフ読みをしているガンペ。集中できていないのか、あまりいい出来ではないよう。

スタは現在刑務所にいるおやっさんに忠誠を誓っています。
そのため、強欲そうなパク社長にいじられても何もいわず、おやっさんが早く出てこられるように我慢強く振る舞います。

収監されているおやっさんと面会しながら、面会室を仕切るアクリル板に張りつけた透明な碁盤(お手製)を使って、マジックで塗りながらゲームをする2人。スタは最も信頼されている部下のようです。

恋人と車の中で体を重ねているガンペ。マスコミを恐れるあまり、彼女への扱いが軽すぎることを怒る恋人。「デートをしたいのにどこにも連れて行ってくれない、カフェですら」と怒る彼女。

映画撮影で、手加減しない助演俳優をボコボコにしてしまうガンペ。この役者は不幸なことに、車の下敷きになってしまいます(撮影現場が車のスクラップ工場だったから)。

その俳優のファンが怒り狂い、彼の評判も地に墜ちます。
カンペはファンに卵や小麦粉をぶつけられます(すげーな)。

代役を立てなければという話になり、ガンペがふと思い出したのは……そう、スタ!
彼の申し出を鼻で笑うスタですが「格闘シーンをガチでやるなら」という条件付きでOK。

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ガンペの恋人は、彼の広告看板に向かって石を投げています。

撮影に参加したスタ。しかし、噛みあわない彼らのアクション。
リアリティのためにはケガも血も厭わないスタの在り方に、ガンペは圧倒されます。

また恋人を車に呼び出しますが、やはり彼女はこの待遇が不満です。

共演女優・ミナと仲良くなるスタ。
しかし、彼女を強姦するシーンで本当に強姦しかけて(もしくは、完全に強姦して)しまい、嫌われてしまいます。

かつて俳優を目指していたことがあるスタ。そのスタがチョイ役で出演している映像を見かけ、素直に大笑いするガンペ。

冷酷だったスタにも、変化が出てきます。
殺すべき裏切者・パク社長を殺すのをやめ、国外追放で済ませることにします。
「兄貴、変わりましたね……」しかし、この変化がスタを追い詰めなければいいのですが……??

カーチェイスの場面。ガンペの愛車に勝手に乗っているスタ!
そして、ミナとキスをする仲になります。

ガンペのもとに、彼と恋人のセックス動画を盗撮したという脅迫が届きます。
その脅迫犯に払うためのお金を、スタから借りるガンペ。 このお金は本当は、スタのおやっさんの金なのですが……。
しかし、スタは金をエサにこの脅迫犯を取り押さえようとして、1人に逃げられてしまいます。

スタもパク社長が国内に戻ってきて絶体絶命に。
これがおやっさんにバレたら、裏切りが明るみに出てしまいます。

スタの部下はニコニコしていてスタが大好きで、引いてみているぶんにはすごくいいやつ。
しかし、そのうちの1人が殺されてしまいます。
自分も命を狙われるスタ。
そのため、映画を降板しようとしますが、「無責任だ”」と監督に責められます。

しかし、パク社長にやはりボコボコにされる彼ら。

ガンペは脅迫事件がなんとか公にならなかったものの、自分の事務所の社長がその事件に噛んでいた(脅迫のための金を釣り上げていた)ことでショックを受けます。

パク社長に殺されかけるも、自らの行いのおかげで命は奪われなかったスタ。 彼は戻ってきて映画に出ます。

ガンペは恋人と初めてカフェへ。落ち着かないガンペと、意外と淡々としている彼女。

さて、映画の目玉シーンであるアクション。
干潟で殴り合うことになるガンペとスタであります。
「加減してやる」「必要ない」と言い合う彼らは、泥まみれになりながら殴り合い、ひたすらに暴力を振るい合います。

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映画もクランクアップ。
「俳優らしくなったな」とスタを褒めるガンペですが、彼はどこかに行ってしまいます。
ふと追いかけるガンペ。
それに気付いたスタに「映画を撮りに行く。お前がカメラだ、ちゃんと撮れ」とつぶやきます。

仏像を購入して店から出てくるパク社長にかけよるスタ。
「あなたのもとで勉強させてください」というスタに、仏像を手渡してにやつく社長。
しかし、この仏像で思いっきり社長の頭をカチ割るスタであります。
社長を殺し、警察に連行されていくスタ。
それを呆然と見守るガンペ。

一見するとコメディのようにも思えますし、しかしこの映画では「俳優とチンピラが協力してギャング映画を作る」というユニークな設定を活かしてサスペンスや暴力、アクションなどを描いています。ただ、他のキム・ギドクさんが手掛けた作品よりはマイルドな印象。