「狐怪談」

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2003年の韓国ホラー「狐怪談」を見た。
この映画は私、ヒジョーに好きであります。Jホラーっぽい感じもあり、女子校ホラーといういかにもぞくぞくしそうな設定でもあり、女の子同士の友情がいかにもな感じで描かれているのもいい。
こういうホラーは今の日本にはない(まあ、今の韓国にもないけどさ)。日本も韓国も、今よりねっとりした感じの闇があっていいですよね。この頃のホラー映画。

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このジャケが怖すぎて。

あらすじ

「女校怪談」「少女たちの遺言」に続く女子高を舞台にした人気コリアン・ホラーのシリーズ第3弾。狐の霊が願いを叶えてくれると噂される階段で自分勝手な願いをしたために、あまりにも大きな代償を払うことになった女子高生たちの恐怖を描く。監督はこれが長編デビューとなるユン・ジェヨン。

その女子高の学生寮には28段の階段があった。そこには狐の霊が棲みついていて、願いを込めて上ると29段目が現われ願いが叶うと言われる――。ソヒとジンソンはバレエ部の親友同士。しかし学校代表としてコンクールに出場するのがソヒと知ったジンソンは、夢中で例の階段に向かい“自分を出場させて”とお願いする。しかし結局代表にはソヒが選ばれ、ジンソンは嫉妬のあまりソヒを階段から突き落としてしまう。二度とバレエを踊れなくなったソヒは失意のまま病院から身を投げる。一方、秘かにソヒに想いを寄せていた少女ヘジュも階段であるお願いをするのだが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=320438

ネタバレ

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(韓国版ポスターは後ろに誰かいます。)

この映画はバレエが出てきますが、バレエってどうして美少女ホラーと相性がいいのかねえ。たまりません(バレエ好きなのもあるけど。面白いですよね、バレエ)。

女子寮前の階段をのぼる女の子。
「キツネよ、願いを叶えて……永遠に私たちを一緒にいさせて……」
そう言いながら、噂の階段をのぼっていく女の子であります。

さて、ソヒとジンソンは大の仲良し。芸術系に強い女子高で、共にバレエをやっています。

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(左から痩せているverのヘジュ、ソヒ、ジンソン)

そして、ソヒに憧れながらも努力をせず、ぽっちゃりしているヘジュは地下室でケーキをバカ食いしています。トウシューズを抱きながらうっとりするヘジュ。
(この子の特殊メイクぶりがなかなかにすごい。中の人は沢尻エリカに似ている)
この地下室に入ってきて、ヘジュをいじめながら制作活動をする不良少女・ユンジもいます(この子は彫像がうまいが、喫煙を平気でする不良でもある)。

ソヒはジンソンに誘われ、稽古をさぼってコンサートに行ったことがバレて怒られます。実はジンソンはママがバレエのコーチなのですが、ジンソンの方がちゃっかり者で、ソヒはマジメな努力家タイプといった感じ。ボタボタ涙を流すソヒ。

美術部のヘジュは、狐怪談の伝説のある階段をオブジェにしたり、自分のイラストを描いたりして過ごしています。この絵がなかなかに気持ちが悪い。

ジンソンはソヒが大好きなので、勝手に寮に押し掛けたりもしてきます。
「私がジゼル、あなたがアルブレヒトでいつか一緒に踊りたい」
というジンソンですが、
「なんで私がアルブレヒト(※ちなみに男役)なの。私だってジゼルが踊りたい。私がジゼルよ……」とつぶやくジンソン。何やら雲行きが怪しげですね。

さて、いつの間にやら痩せているヘジュ。彼女は階段で願いを唱え、痩せたようです。いじめられっ子から脱出したヘジュは、見違えるようにかわいらしくなっていきます。

ジンソンが出場したいと思っていたコンクールに、ソヒが選出されてしまいます。ソヒはこのまま、スターへの階段を駆け上がっていくのだろう(いい成績を残せば海外留学できる)と思い、彼女を妬みだすジンソン。彼女はコーチたちに直訴しますが「意欲だけでは踊れないのよ」とコンクール出場を却下されます。
また、(たしか別の)コンクール出場権をかけて開催されたオーディションではソヒのトウシューズのなかにガラスを入れるジンソン。しかしジンソンは笑顔で踊り切ります。そのシューズには、じんわり血がにじんでいますが……。

冷たい態度をとるジンソンに、「どうしたの?」といちゃいちゃしようとするソヒ。
(的確な言葉が見つからないけど、こんな感じでからもうとする)
ソヒを拒絶しようとしたジンソンですが、その拍子で2人は校内の階段から転落してしまいます。

このせいで、足に怪我をしてバレリーナの夢を諦めることになったソヒ。
その代わりにジンソンがコンクールに出場することになります。喜ぶジンソンですが、とにかく後ろめたい。
その夜、ソヒが枕元に現れます。ソヒを許してくれたジンソン。キャッキャとはしゃぐ2人。
しかしそれは夢であり、次の日にはジンソンが自殺したとソヒに伝わります。
彼女は病院の小窓からぬるっと出て、母親が目を離したすきに飛び降りていたのです。

ジンソンに憧れていたヘジュは号泣。彼女のトウシューズを抱きしめて泣いています。そしてバカ食いをした挙句、トイレで吐き戻したものの中に倒れてしまいます。
このせいで、またいじめられるようになったヘジュ。

コンクールでいい成績をとったので、ロシアに留学することになったソヒ。
しかし、彼女の行動を皆が知っているので、その反応は冷ややかであります。

雷雨の日。ヘジュはひとり、学校に残っています(傘がないから)。
ヘジュが吐いたトイレは「ヘジュ専用」と落書きされています。
彼女の背後には、何かの気配があります。それはまるで、ソヒのように見えます。

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彼女はラジオを聞きながら美術部の活動をしていますが、
「愛する相手に拒否されたのならば、それはいっそ死んだ方がまし」
という声が聞こえてきた瞬間、彼女の作っていた胸像のなかから何かがヘジュのほうを覗きこみます。ぎょろりと動く目。このシーンはコワイ!

一方、女子寮でシャワーを浴びているジンソン。
彼女は髪の毛を洗ったりなんだりしていますが、気が付くと血のシャワーが延々と流れています。そのシャワーに気付かず、浴び続けているジンソンでありますが、この場面も怖い!血のシャワーは珍しいものではないですが(ホラー映画では多いような)、これだけ長回しでされるとウゲーという気持ちになる。
他人の血まみれ、って生理的に嫌な気持ちを呼び起こさせるんですかね。

また、バレエのレッスン上では勝手にBGMが流れ出し、誰かが踊っているような気配がすると噂になります(これはジンソンやヘジュの体験ではない)。

ひとり、髪の毛を黒く染めるヘジュ。まるで、誰かになりきるように……??

ユンジは美術の授業をボイコットし、ひとりで地下室にこもって創作活動をはじめます。ここはもともとヘジュのナワバリのはずなのですが、ユンジはどんどん占領していきます。
イライラが募っていたヘジュですが、突然ユンジを殺してしまいます!

そして後から地下室にやってきた先生。ユンジの作品を見て「傑作だ!」とメモを書いていきますが、その彫像をよく見ると(他の生徒は胸像だが、彼女だけ全身像である)粘土で塗り固めたユンジ本人!!ギョエー!

ジンソンに、バレエ留学のサプライズケーキを渡そうとする級友(というより、バレエ部仲間か?)たち。
しかし、喜ぶジンソンの顔にケーキを押し付け、せせら笑って帰っていきます。「勝手にいけばぁ?バイバ~イ」の声に俯くジンソン。

さて、このあたりでヘジュが完全に覚醒します。二重人格のように、ソヒとヘジュの人格が彼女のなかで喧嘩をしています。
そしてヘジュの人格がジンソンに訴えるのです。
「ジンソン……ソヒが、何度も、くるの……」

さあ、追っかけっこのはじまりです!ソヒはジンソンのことを恨んでヘジュをのっとっているのか?それとも、ヘジュの人格が作りだした魔物なのか?よくわからないまま、ジンソンは階段からヘジュを突き落したり、地下室に逃げ込んでユンジの死体(ウジ有!)を見つけたりしつつ、ヘジュ撃退に成功。ヘジュは死んでしまいます。

しかし、すべてが済んだと思っているジンソンの寮の窓の外にはソヒがいて、ずるりと頭と腕から侵入してきます(貞子がテレビから出てくるのと同じ)。
その後も、ジンソンの歩く後を血まみれのトウシューズが爪先立ちしながらてんてんと後ろをついてきたり、背後を誰かがシャッセしながら通り過ぎたりと、まだ終わってないよ!展開が続きます。

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そして、階段で会話をすることになるジンソンとソヒ。
ソヒ「あなたを残して1人で行くのが怖い」
ジンソン「1回だけあなたに勝ちたかったの」
ソヒ「いいのよ、友達だもん」

ソヒ「だから、永遠に一緒よ」

次のシーンでは、ジンソンが階段で死んでいます。

時は流れ。だいぶさびれた印象の女子寮。ジンソンが住んでいた部屋に入室することになった新入生。その部屋には、ジンソンとソヒが撮った写真も残っています。
しかし、次の瞬間。ジンソンの写真の顔が、カッと白目に変化して……!?

という、誰も幸せにならないエンドでした。
当初、ジンソンが主人公なのかな?と思いきや、意外にもソヒだったので驚いた。ただし、最後まで見たら納得ですね。

狐怪談というわりに普通に階段映画なのですが、この階段の造形が非常に意味ありげで素敵なのですね。たぶんセットなんでしょうが、それにしてもいいなあ。ときめきます。

女子寮映画といえば最近では「零」の映画版にもありましたが、こっちのほうが雰囲気はありますね。もともとは「サスペリア」に感化されたのかもしれないですけど(あれも女子寮映画で、バレエも出てきたような)、この映画の後味の悪さはとても好きだ。
同シリーズの「VOICE」よりこちらのほうが出来が良く感じます。