「ヘンゼルとグレーテル」

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2007年の韓国映画「ヘンゼルとグレーテル」を見た。いわゆる「子どもが怖い」系の映画ではあるのですが、実は彼らには恐ろしい過去があり……というお話。
ホラーファンタジーでありつつ、「閉じ込められる」系の話でもありつつ、カニバリズムもありつつという変わった映画です。

あらすじ

主人公・ウンスは交通事故に遭った後、森の中に迷い込む。
そこには不思議な家族が暮らしていた。

ネタバレ

ホラー好きの方にはおなじみ!「なんだかおかしい家族と一緒に過ごさなきゃいけなくなり、安全が脅かされる」というお話です。
ただ、途中から子どもたちがどんどん怖くなっていくので、なかなかスリリング。

森の中で交通事故に遭ったウンス。彼は恋人からの電話で急いで車を飛ばしていますが、その途中で事故を起こしてしまいます。その結果、森の中で少女に遭遇。彼女に導かれるままに、森へと向かいます。

そこには三兄妹と優しい両親がいます。長男でかしこそう、しかしガンコそうでもあるマンボク、ウンスを家まで連れてきてくれた優しい長女ヨンヒ、体の弱い甘えん坊・次女ジョンスン。

この一家はなんだかおかしい。家はおもちゃであふれ、食事はお菓子ばかり。ドーナツやカップケーキを食べて生活しています。
ウンスはすぐに家を出ていきますが、元来た道まで戻ることができません。

彼が戻ってきたら、優しく出迎えてくれる家族。しかし、ウンスが父に道案内を頼むと異様に焦り出すし、お母さんアセアセ。
しかもこの家の中の時計は針がなく、鳩時計からは三兄妹が飛び出してきます(この時点で鳩時計じゃないのかな?)。
壁の向こうからは夫婦が言い争う声が聞こえてきます。

そして2日目。
悪夢を見て起きると、子どもたちが泣いています。森の中に何かが住んでいるのでは?と思う場面もあります。
変な音がする天井を覗けば、そこには長い髪の女が……??

3日目。
マンボクから手書きの地図をもらうウンス。山を彷徨いますが、雪も降ってきて大変なことに。
その途中でなぜかマンボクに出会うウンス。彼はどこで追い抜かれたのか?

マンボクは謎の夫婦を連れてきています。彼らはウンスが止めるのも聞かずにマンボクについて行ってしまいます。
ウンスも延々歩きますが、やはり森を抜け出すことはできません。

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4日目。
両親は相変わらず姿を見せません。朝食で、ジョンスンは新しくやってきた夫婦の妻に甘えます。しかし、むちゃくちゃ怒られて終わり。この女性は、だいぶ性格がキツいようです。

ウンスはふと気が付きます。テレビは同じアニメを延々と放送していますが、なんと電源は入っていません。どういうことか?
マンボクはウンスを敵視しているような、なんだか不思議な視線で見ています。ヨンヒはウンスを守ろうとします。
どうやらマンボクは、サイコキネシスの使い手のようですが……?

新夫婦の奥さん、この家の宝飾類に目をつけたよう。次々と物色しています。ジョンスンの首に下がっているネックレスも全部高級そう。なぜ、そんな高そうなものを持っているのでしょうか??

ウンスは天井裏に入りますが、その天井裏は迷路のように入り組んでいます。
そしてそこで発見したのが、初日~2日目に会った一家のお母さん。
実は彼女は兄妹の母でもなんでもなく、ウンスと同じように交通事故で迷い込んできた夫婦だと白状します。夫はいなくなり(殺され)、妻はこっそり家の天井裏に隠れて暮らしていました。この家の間取りからはあり得ないほど、空間を侵食するように広がっていく屋根裏!この場面はなかなか怖いです。

5日目。
自分の大事な指輪をなくした新夫婦・奥さんはヒスりまくりです。
ジョンスンを疑いますが、もちろん彼女は無実。結局、新奥さんも、旧お母さんも死んでしまいます。
屋根裏で人形のような服装にさせられて、床に倒れた瞬間い顔が砕けて死んでしまうという殺され方はゴシックな感じです。

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最後の日。
(この日にちの区切りは一週間なのだろうか?)
姉妹たちにおとぎ話をねだられるウンス。
彼はおとぎ話になぞらえて、自分の身の上話をします。
幼い頃の父の死。施設で暮らし、虐待を受けたこと。
今は恋人がいるが、その恋人に子どもができていること。
さらに、大事な母が死にそうになっていること。
母と恋人のためにも、元の世界に戻りたいと訴えるウンスですが、ヨンヒは彼に共感しているものの、マンボクはウンスを手放そうとはしません。新しい家族として、ウンスと暮らしたいと思っているのです。

その頃、新夫婦の残ったほうの旦那はやたらとおっとりして見えていたものの「ここをあの方の家にしよう」とニヤニヤ。「私が執事になる」とか言ってますが、果たしてこの人は何なのでしょうか?

さて、食卓を囲むウンス、新旦那(新おにぃみたいな書き方でスミマセン)、子どもたち。
やけ食いするウンスですが、冷蔵庫を開けて肉の塊を発見。
それに、1~2日目にいたお父さんのシャツの切れ端が絡みついています。そう、この家で提供されるお肉はなんと人肉だったというわけであります!

どこかに出かけるマンボクをつけるウンス。
森にある木の幹からは、人の顔がにょきにょき出てきます(気持ち悪い)。
ウンスはパンをちぎりながら(唐突に入ってきたヘンゼルとグレーテル要素)マンボクのあとをつけます。しかし、パンくずでばれそうなもんですけどね。ウンスの存在。

青い扉が森の中に置かれています。
その扉をくぐると、そこは小屋のなか。小屋の中ではまるで老人のようにしわしわになっているウンス!
何かをこそこそしているマンボクですが、彼が去った後にもちろん侵入して、調べ始めるウンスであります。

さて、その頃家では、新旦那(じいさんですけどね)が子どもたちと対決。
どうやらこのおじさん、マジキチ宗教おじさんだったらしく、
「この家を神さまの家にするんだワハハハハ」
と言い出してさあ大変。
子どもたちに折檻(というか虐待?暴力?)をくわえようとします。

ウンスは子どもたちの日記帳を読み進めていきます。
そこにはさまざまな資料が残されていました。
そこでウンスは知ります。
彼らはウンスよりもはるか前に生まれた存在であること。施設で暮らしていたこと。そして、その施設で虐待を受けまくっていたこと。

彼らは汚れた(ぐちょぐちょのドロドロに汚れていて、ゴキブリが平気でウロウロしている)部屋の中で軟禁され、食事はまずそうなおかゆのみ。それをこぼしただけで、死ぬほど殴られます。ヨンヒはそれに加えて、性的虐待も受けています。ジョンスンにまで手を出そうとする施設長(諸悪の根源であり、こいつしか施設の人間は出てこない)ですが、「私のほうがかわいいし、言うことを聞きます」と訴えて目をそらさせるヨンヒ。健気だけど胸が痛いぜ!

クリスマスシーズン。
サンタを連れた慈善家が施設を訪れます。
実は彼らは兄妹ではないのですが、見た目がまだいいほうからか?施設長の部屋に連れてこられ、慈善家の女性と対面させられます。
お菓子を渡され、ヘンゼルとグレーテルの絵本をプレゼントされる彼ら。(またつけくわえのように出てくる、ヘンゼルとグレーテルの要素……)
喜ぶ彼らではありますが、施設の仲間である少年たちは虐待の末に死亡。彼らは必死でお菓子を食べさせようとしますが、死体の口から零れ落ちるだけです。
その死体を夜になって埋めている施設長。彼に対する憎しみが募っていく子どもたち。

そして、施設長を許せない彼らは
なんと
突然芽生えたサイキックパワーで施設長を殺すのであります!

このサイキックパワーの芽生えもわけわからんですが、そこからどうこの家のエピソードにつながるのかも(出ることができない家、年を取らない子供)、どうしてこの顛末を日記にして全て残しておいたのかもよくわからない。

ウンスは家に戻り、マジキチ宗教おじさんとボコりあって子どもたちを守ります。
おじさんがなかなか強くて倒れては立ち、倒れては立ち、明日のジョー並みに粘り強いのですが(「明日のジョー」面白いよね)、辛くもウンスが勝利。
ここで美しく「おじさん、もう本当のおうちに帰りなよ」みたいな展開があるかと思いきや「僕たちを守ってくれたから、これからはずっと一緒だよ!」みたいな、嬉しくねぇ~!的な展開がやってきます

ここでヨンヒが能力を使い、ウンスに「子どもたちの日記を燃やせば帰れる」と伝えます。
どうしても彼を引き留めたいマンボク、ウンスを帰すべきだと考えているヨンヒ、無邪気にウンスを慕うジョンスン。
彼らの思惑とは裏腹に、ウンスはノートを燃やします。

そして気が付いたらそこは事故現場。
そう、彼は夢の中を彷徨っていたのであります。ウンスが事故ったのは有名な交通事故の現場であり、一家の両親役を演じていた夫婦も、窃盗犯とマジキチ宗教家(しかもこいつ、現実世界では指名手配犯みたいな扱いになっていた)の夫婦もここで命を落としていた模様。
ウンスは呆然とします。

そしてウンスの子どもは無事に生まれ、お母さんも助かり、幸せに暮らしています。季節はクリスマス。そして彼が自宅のクリスマスツリーを見ると、そこにはなんと子どもたちの絵日記が置かれています。

という終わり方。どういうことでしょうか。
いや~子どもたちの理論がむちゃくちゃなのは「子どもだからさ!」ということなのでしょうか。しかし何しても「僕たちと一緒にいたいんだよねっ!」と言われるには閉口。
あと、この映画にも児童への性的虐待が出てきたので「また映画にこういう要素を入れるのかよ……」と思ってげんなりしてしまう。映画を盛るための要素として入れるには、あまりに品がない考えのようにも思ってしまうのですが。

そもそも、この映画において「ヘンゼルとグレーテル」という意味合いは何なのでしょうか。
「子どもたちが魔女のような役割を果たし、大人を誘い込む」のはいいですが、なぜカニバリズムが出てきたのか?
誘い込んだ大人に逆襲されそうになって、なぜ力で押し負けそうになるのか?
彼らはなぜ、空間を捻じ曲げて嫌な思い出がある施設を美しく塗り替え、そこに住んでいるのか?
もしかして彼らは死霊なのか?じゃあなんで、思い出の日記帳をしまっておいてある別空間にだけ、老人のような顔で現れるのか?
など、謎だらけではある。
ただ、このファンタジー感を楽しめばいいのかもしれません。

意外と蜷川実花さん好きのガールズが好きそうな、お菓子やセットがポップな印象の映画であります。