「PERFECT BLUE パーフェクト ブルー」

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♪恋はドキドキするほど 胸がラブラブしてるわ~
すごいアイドルソングである。
私もみんなも大好き!もっと評価されるべき!今敏監督の「PERFECT BLUE パーフェクト ブルー」を見ました。アニメ映画ですけど、この映画はコワイですね~。
1998年なので、アイドルの感じがちょっと古いのもいい。面白い。

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あらすじ

キャラクター原案に江口寿史、大友克洋が企画に参加したサスペンス・アニメ。謎の人物のストーキングに怯えるアイドルの恐怖を描く。アニメで本格的な現代サスペンスに挑んだ意欲作であり、リアルな作画や狙われるアイドルの心理描写、そして画ではなく物語から恐怖を語った演出は目を見張るものがある。声の出演に岩男潤子、松本梨香。

人気絶頂期にアイドル・グループから脱退し、女優に転身を図った美少女・未麻。ある日、彼女のもとに熱狂的ファンらしい人物から脅迫めいたFAXが届く。やがてその行為はエスカレートし、未麻は次第に身の危険を感じるが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=153473

アイドルへのストーキングの話なのですが、ストーカー行動うんぬんはもちろん、主人公が追いつめられて気持ちが崩壊していくさま、そしてアイドルから女優の脱皮をはかるためにどんどん脱がされていく様子など、非常に心が痛いのであります。

ネタバレ

女優に転身するため、アイドル・グループから脱退することを決めた未麻。会場には熱心なファン、迷惑行為をする厄介なファン、そして警備員たちがいます。
この警備員が実はストーカーで、歌っている未麻の姿に自分の掌をもってきて、「僕の手の上でミマちゃんが踊ってるよぉ~」的なことをやってます。こんなファンの人、アイドルのライブで見たことがない。やってみようかしら。

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(映像をお借りしてきたけど、こういうことです)
脱退宣言に動揺するファンたち。
そして脱退を発表したその日、出待ちをしているファンから「いつもミマちゃんの部屋、覗いてるからね~!」と声をかけられる未麻。誰が発したんだかわからない言葉に、彼女は違和感を覚えます。

女優仕事の現場には、彼女宛てに手紙が届けられます。しかし、その手紙が爆発。そのせいで、彼女の事務所の社長がケガをしてしまいます。

ネットを始めた未麻(※98年です)。彼女のHPが立ち上げられ、彼女になりすました誰かが日記をアップしています。
彼女の日常を観察していないと書けないようなことも含まれていて、彼女は警戒します。

その頃、ライブを荒らしていた迷惑ファンのリーダーがひき逃げに合っています。
これをしたのは誰なのか?

女優になるために、なんとレイ○シーンに挑戦することになった未麻。彼女は傷付いていないフリをしていますが、やはりつらい。
仲のいい女性マネージャー・ルミちゃんもつらそうです。
彼女は評価されるものの、「あんなのみまりんじゃな~い!」というファンもおり、ストーカーももちろんそう思っています。

そして、そのせいか?ドラマの脚本家が殺されます。地下駐車場で追い詰められ、空いたエレベーターには大音量のラジカセ。そこに近付く脚本家ですが、次の瞬間、エレベーターには殺された彼の死体が転がっています。

さらにヘアヌード写真を撮影することになった未麻であります。撮影の途中にトイレに閉じこもったり、撮影が終わったらお風呂に潜って「バカヤロー!(ブクブク)」と叫んだりして、やっぱりやりきれない彼女。
しかし、彼女にしか見えない分身はアイドルグループ(未麻が抜けて、こちらも人気が上がった。なぜか)のライブに出演して、客席にダイブしています。そう、徐々に彼女にしか見えないアイドル・未麻の分身が、彼女の想像を超えて現れるようになるのです。
(ちなみに、この分身は彼女にしか見えていない。ただ、ストーカーの望んでいるよう通りにアイドル活動に戻ろうとする)

ヘアヌード写真が掲載された雑誌を買い占めるストーカー。彼はアイドルの未麻こそが本物で、今の未麻はニセモノだとすら思うようになります。

ちらちらと視界に入る分身の未麻を追いかける、本物の未麻。しかし、彼女を捕まえることはできません。

どこが現実で、何が夢なのか。彼女の分身とは、何なのか?彼女の頭がおかしくなったのか?
それとも、本当は撮影しているドラマの世界が本物で、彼女は女優でも何でもないただの女の子であり、自身をアイドルだと思い込んでいる殺人鬼なのか?
「私は生きてるのかな?それとも、トラックで轢かれて今も夢の中なのかな?」という彼女のドラマのセリフが本物なのか、ニセモノなのかすらわからない。
と、もうホントーに混乱させるような演出があります。
このへんが本当に怖くて、本当に面白い描写。

そしてその頃、今度はヘアヌード写真を撮影したカメラマンが殺されます。ピザ屋になりすました誰かに殺されたカメラマン。
未麻にも、「殺人の影がつきまとう女優」という報道がなされ、彼女はますます病んでしまいます。

さて、ドラマがクランクアップしたのですが、未麻はここで拉致されます。
犯人はもちろんストーカー。ちなみに、この人の声が想像以上に高くてびっくりしました。
彼はストリップ劇場のセットのなかでレイ○シーンを演じた未麻を、同じように強姦しようとします(ドラマのなかにこういうシーンがあったのです)。
ここで逃げたり殴ったり殴られたりがあったうえで、未麻はこの男をトンカチで殴りつけて逃げることに成功。
そしてルミちゃんに助けられ、めでたしめでたし。

彼女は自分の家に帰ってきます。しかし、ふと水槽を覗くと、自分の飼っている魚とは別のお魚がいます。ベッドの脇には、はがしたはずのアイドル時代のポスターが貼られています。
何かが違う。

そして登場したルミちゃん。彼女は実は肥満体型なのですが、アイドルのようなドレスを着て「これ、今度の衣装なんだ~」とニコニコ。
鏡に映った彼女の姿は、アイドルとしての分身の未麻。そうなんですね。ルミちゃんが黒幕だったのです。
というより、彼女が自分自身をアイドルとしての未麻だと信じており、女優になってしまった未麻を「偽物」だと強く非難しているのです。

そして彼女はストーカーと共謀すらしていたこと、彼はもう既に死んでおり、その死体は事務所の社長(未麻に女優転身を命じ、強姦シーンやヘアヌードを命じた張本人のため、ルミは彼を逆恨みしていた)の死体と一緒に隠されていることがわかります。
アイドルとしての未麻と自分の願望を重ね、そこから外れていく未麻が許せないルミ。そのまま彼女をアイスピックで殺そうとします。
左腕を刺されつつも、ベランダから逃げる未麻。建物をつたって逃げる未麻を、彼女は追いかけます。分身はふわふわと飛んでいるように見えますが、ショーウインドウに映っている彼女は息を切らしながらドスドス走る醜い女。しかし、それでもずっと追いかけてくるのです。傘で彼女を刺殺しようとすらしながら。

しかし、追い詰められてカツラをはぎ取られた瞬間、ルミは大絶叫。「アイドルとしての未麻」と自分が重ねられなくなったからでしょうか。
そして割れたウインドウのガラスの破片の上に倒れ込み、大出血。さらに車に轢かれそうになりますが、すんでのところで未麻が突き飛ばし、一命をとりとめます。

時間が経過して、精神病院に入っているルミ。
彼女に花束を持っていく未麻ですが、それを嬉しそうに受け取ります。もう彼女は優しいマネージャーのルミではなく、アイドルの未麻のままなのでしょう。
病院から出てきた未麻は最後、車に乗り込んでバックミラーを見ながら「私は本物だよ」とニッコリ。

このラストがハッピーエンド感がなくてすごい。めでたしめでたし、ですまない感じが好きです。人がいっぱい死んでるのに「よかったよかった」で締められてはあんまりいい感じがしない。
しかし、ストーカーってもっとねっとりした願望があるのかと思いきや、お前もやることやろうとするんかい!とは思いました。
「銀狼怪奇ファイル」みたいに、好きな女の子を棺に寝かせてそれをうっとり鑑賞するくらいのことはしていただきたい。