2016年の『切り裂き魔ゴーレム』を見ました。イギリス映画。ちょっと昔のイギリスを舞台にしたミステリーサスペンスです。
イギリスを騒がせていた連続殺人犯、切り裂き魔・ゴーレム。夫殺しの罪で捕まったリジーという女性の事件を調べることになったキルデアだが、その夫・ジョンこそゴーレムではないかという容疑が持ち上がる。リジーの半生をなぞりながらも、真相を解明しようと奮闘するキルデア。真相に近付けば近付くほど翻弄されるも、果たして彼はリジーの処刑に間に合うよう、真実にたどり着けるのか…!??
というお話であります。
俳優陣は豪華!『ラブ・アクチュアリー』にも出演していたビル・ナイがキルデアを、『レディ・プレイヤー1』でヒロインを演じたオリヴィア・クックがリジーを演じています。いやぁ、リジーは本当によかったなぁ。
後半はかなり引き込まれます(前半は… 私はちょっと…飽きてしまいました)。わりとキルデア警部補の推理が遠回りなので、「こいつ犯人かも!あ、ちがったわ!!」の繰り返しで最初は困りましたが、大衆演芸場のシーンになると俄然面白くなります。
リジーは貧しい家の出身で、幼い頃に性的虐待を受けたこともある(はっきりした描写はないですが、そんなシーンがある)ような女性。女優に憧れ、母の死後に大衆演芸場に潜り込み、女装コメディアンのダン・リーノのブレイン兼プロンプター兼雑用係として働きだします。
さらには彼女自身も舞台に立つようになり、大人気に!
しかし、売れない劇作家・ジョンと結婚してさらに女優として売れようと願ったものの、結婚生活が破綻して喧嘩ばかり。そしてそのジョンが死に、彼女はその殺人事件の被疑者として捕らえられてしまうのです。
この、女装コメディアンのダン・リーノとリジーの関係性がいいんですよね。恋愛ではなく、純粋に同志としてずっと隣にいるような感じ、逆にストイックでちょっとキュンとします。
で、夫のジョンが切り裂き魔だという証拠を集めるキルデアですが、処刑直前に彼はようやく気が付くわけです。本当の犯人はリジーだということを。
リジーは夫に罪をかぶせ、キルデアをミスリードして「殺人鬼の夫を止めるために殺した悲劇の妻」になろうとしていたのです。
処刑を止めずに処刑場を後にするキルデア。
最後にキルデアの意図を察して、ダン・リーノのキメセリフを叫びながら首を吊られたリジー。
そして、そのリジーをモチーフにした劇で、リジー本人を演じるダン・リーノ。
と、ものすごく後味が悪いのですが、なんともいえず病みつきになるようなダークビターなエンディングを迎え、映画が終わるのであります。
彼女の貧しい生まれが悪かったのか?彼女を利用しようとする男性(同じ劇場スタッフやキャストでも、クビをちらつかせてSMプレイを求めたり、セクハラしてきた人もいた)や、妬んでいじめた女性が悪かったのか?
彼女を救う“救済者”であろうとして、結局自分が一番かわいかった夫が悪かったのか?
でも夫婦生活を持ちたくないリジーは劇場のキャスト(自分にイジワルしてきた女)をメイドに引き抜いて夫の夜の世話をさせていたのですが、それもそれでどうなのか…?とモヤります。
そもそも、ジョンは落ち込んだリジーの心の隙間にたまたまスルッと入ってしまったものの、なぜダンと表現者として生きることを選ばなかったのか?野心のせいなのか??そもそも、彼女は生まれつきのサイコパスだったのか??
とにかくオリヴィア・クックから目が離せなかった。ミステリーとしては「へ?」というようなシーンが多いのですが(正直、謎解きシーンはほとんどなく、犯人を特定するのにも筆跡鑑定で行っていました)、彼女の演技とかわいらしさに酔いしれてしまいました。