『スイス・アーミー・マン』監督の狂気すぎるミステリー『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

ディックロングはなぜ死んだのか

タイトルのディック・ロング。おそらく本編でも触れられていたようにディック=男性の陰部を表す俗語… つまり、デカ〇ンみたいな名前を持つ男性(日本でいう鬼頭さんみたいな感じかな)がキーパーソンの映画です。

監督は『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート。この人の頭の中はどうなってるんだ、スゴイですね。印象としては『ハングオーバー』シリーズのようなバカ主人公たちが出てくる映画なのですが、見ているとだんだんとほろ苦さが増してくる。「バカだなあ」と一笑に付すことも簡単だし、でもどこかでこういう夫婦が本当にいるのかも… と考えたり。

冒頭から中盤まではミステリーに近い感じ。主人公のジーク(家族持ち)とアール(アホ)はバンド仲間のディックの死を隠蔽し、しかしながらアホすぎてどんどん墓穴を掘っていきます。しかし、殺したのは彼らではないらしい。映画を見ている側にも途中まで真実は明かされません。

では、なぜ2人は躍起になって殺人にかかわっていないふりをするのか?

しかも、遺体からは謎の精液が発見されて… エッ、同性愛?いやいや、そんな展開のわけはない。もしかして…と思っていたら大当たり。

なんと主人公たちは馬とのセッ〇スに及んでいたんですね。し、しかも掘られるほう…!?

つまりディックは馬とヤっている間に蹴られて死亡、そのことを本人と自分たちの名誉のために隠そうとしたものの、警察には殺人犯として疑われるわ、嫁に知られて絶縁されるわの「そりゃそうだ」展開。麻薬と酒でグチャグチャハイになっていたから、かもしれませんが…

う~んヤギとか羊の話は聞いたことあるけど(ただ実際にしたことがある人はさすがに見たことがない)なんで馬なんだ… でもキレイよね、馬。そういうことか? でも馬に掘られたくなる?

でもすごいなあと思ったのは、主人公のジークが真相を明らかにされそうになり、ダッシュで逃走→警察「追うわよ」→ジーク、馬を小屋から出して「逃げろー!」→警察「」 というコントみたいな展開があったこと。このオチだけで、コイツはバカなんだなあとシミジミ思ってしまった。いや、捕まるとしたらアンタや!

車を川に捨てるけど浅すぎて全然ダメじゃん!みたいな流れとか、アールと喧嘩して歯を折ったジークが彼の口の中を覗いて「あー、ホントだぁーいたそう」みたいな共感を始めたりとか、ゆる~くてアホなノリが独特で好き。唐突にブチ込まれるアホ要素が、高いギャグセンをうかがわせます。

その後、この事件で検視をした医者の先生が、テレビで馬のCM見て「あっ…」って顔するシーンとかもなんともおかしい。この先生、たぶんずーっと、馬見たら「あっ」ってなるんだろうな。

でもリアルなのが、嫁が絶対にヨリを戻してくれないのと、真相は知らないけど察してる幼い娘にめちゃくちゃ嫌われているラスト。そりゃあ馬とヤッた旦那(パパ)はいやだよねえ。

この監督の映画は面白いのでこれからも映画見ようと思います。