「奴隷の島、消えた人々」

奴隷の島消えた人々

2016年の韓国映画「奴隷の島、消えた人々」。ドキュメンタリーっぽいサスペンスかと思いきや、ラストがなかなか凝っているので驚きました。じんわりと寒気がする映画であります。冒頭から生存者が明かされるので、「これからどう死んじゃうの?」とハラハラする。その気持ちも楽しめるかもしれない。

ネタバレ

ある塩田所有者であるホ氏とその息子が、妻を殺した事件が世間を賑わせている。

その被害者である撮影クルーの映像を解析することになった刑事。女性記者であるイ・ヘリは、ちょっと強引な取材を続けている。彼女はある島で、作業員を奴隷のように働かせていると聞きつけ、カメラマンのソクランを連れて取材に向かう。

孤島に向かい、塩田の取材をする2人。おばあさんに家に泊めてもらうことになる。ホ氏の家に向かうイ記者だが、追い返されてしまう、だが、作業員の男性はどうやら知的障害があるようだ。

夜、1人の作業員が訪ねてくる。彼はスマートフォンも見たことがないし、それで写真がとれることもしらない。取材をしようとする記者だが、突然作業員はだまりこんでしまう。記者は靴下のない彼に、女性用の靴下をプレゼントする。
記者は取材を諦めないが、みんな協力的ではない。彼女はこっそりホ氏の家の中に入り込み、具合が悪そうな作業員を見つけてしまう。警察に通報するも、逆に取材許可について聞かれる記者。役所に通報してもたらいまわしに合い、どうにもできない。

家に泊めてくれているおばあさんには心配され、カメラマンにももうやめようと言われる。

しかし記者はホ氏の家にまた入り込み、雇用契約書を盗む。そして、知り合いの刑事に調べてもらうことにする。その頃、カメラマンは嫁が妊娠したと連絡を受けていた(というフラグ)。

夜、作業員の男・サンホ(ケガをしているところを見つけられた)が記者の風呂を覗いているのをカメラマンが見つける。彼はケガしたと認めるが、翌日やってきた警察はホ氏とズブズブであり、証拠も隠滅されている。
「色仕掛けでいろいろ偽証させただろう」と警察に言われる記者。
だが、サンホに捜索願が出ており、キム・ミョンチョルという男に彼が連れ去られていたことがわかる。

ようやく味方になってくれる警察が来るらしいが、明日にならないと来ない。
だが、その夜にカメラマン、塩田で働いていたサンホ以外の作業員2名、ホ氏の妻などが殺されてしまった。
(と、ここでPOVがいったん終わります)
サンホ、ホ氏とその息子の行方はわからない。

しかし、塩田からカメラが出てくる。しかも、ホ氏親子の死体も見つかる。では、誰が真犯人なのか?
ここで「記者が犯人説」がネットで出てきてしまい、彼女が昔トラブルで取材対象者を自殺に追い込んだことも広まってしまう。

時間は事件当日まで巻き戻る。
キム・ミョンチョルとはある殺人事件の容疑者だった。そして、記者が知っているサンホと、本当のサンホとは別人だった。つまり、キム・ミョンチョルがサンホを殺し、彼になりすまして孤島に潜伏していたのだ。
記者は偽サンホに殴られ、カメラマンはラップ(袋?)を顔に巻き付けられて窒息させられる。
サンホを殺すように息子に命じているホ氏だが(この親子もなかなかのクズなのです)、息子は「サンホに情が湧いているから無理かも」とごねる。その息子をサンホは躊躇なく殺し、社長も殺す。

イ記者はそれを思い出し、パニックを起こしてしまう(彼女は入院中)。

だが、犯人はホ氏ということで話が進み、サンホはのうのうと逃亡を続けている。

5ヶ月後、サンホはカメラマンの墓参りをしている。そして、写真を撮ってあげた作業員の男の墓にも、その写真を供える。
捜査は終了してしまった。

「人類の最大の罪は、彼らを憎むことではなく、無関心であることだ」 ※バーナード・ジョーの言葉

感想

えっ……こんなザル捜査ありなのか?という気持ちでいっぱいです。
・ブラックな経営者の話かと思いきや、ばりばりサイコパスの話だったという。途中まではその怖さがピンときていなくて、最後にゾクリとさせられました。しかも、その役を演じている方の演技がなんとも味わい深いと言うか、おそろしいというか。
・ただ、大規模な犯罪かと思いきや、こきつかっていたのは3人。まぁ、3人でも問題なんだけど。もう少し深い話を想像していたので裏切られ、ラストまで見ていい意味で裏切られました。