フィリピンのホラー映画ってあまり見たことがなかったのですが、これはやられた!
『生き人形マリア』。2014年製作。
ぶっちゃけ原題の「MARIA LEONORA TERESA」のほうがわかりやすいのですが、なぜ3人いる主要キャストの子供のうち、マリアにだけ焦点を当てたのだろうか?よくわからない。
(日本でもホラー映画とかホラー漫画に「まりあ」ちゃんが出てくる確率はまあまあ高い気もするが…)
ただ、映画の中身を見てみると、もっとわけがわからない。
人形ホラーといえばまさに王道ジャンル。
『チャイルドプレイ』や『パペットマスター』をはじめとして、最近ではでかい日本人形が殺戮しまくる邦画『恐怖人形』というトンデモ映画(すき)もありました…
今、上に挙げた映画は面白い。確実に。
ただ、『アナベル 死霊館の人形』『ザ・ボーイ 少年人形の館』のように…
悪魔憑きの人形ホラーって、わりと面白くないことが多いと思うんですよ。
襲ってくるほうの動きや表情のパターンがそんなにないから既視感が出てしまう
とか
似通った設定になりがち(夜中にカタカタ動く人形…ギャー!みたいな感じ)
というところに尽きるとも思うんですけども。
あと、人形の動かし方がアナログなほうが絶対に面白いよね。これは理由はわからないけど、「人形が生きている」奇妙さみたいなものが滲むからではないか。
と、長くなりましたが。
この映画は面白かったです!トンデモホラーとしてはもちろん、絶妙に気持ち悪いのよ。
悪意がないということを前提に声を大にして言いたいのが、この映画に出てくる人形の質感はなんともいえず前時代のラブドール… 全体的にチープな印象すらあるのですが、それがまた、ものすっごく奇妙で俗悪な感じ。見てはいけないものとばっちり目が遭ってしまった感じがするんです。
ストーリーもめちゃくちゃ面白い。
不幸なガス事故で男子生徒が死んだ学校で、今度はバス事故が起こる。
セレブ家庭の娘・マリア、健気な少女・テレサ、そしてシングルファーザーに育てられているレオノーラが死んでしまい、家族は悲しみに暮れる。
それぞれの家庭を訪ねる謎の精神科医。彼は人形を片手に「娘の代わりに」と提案する…
どう?ムチャクチャでしょ??
バス事故の描写がなんともリアルで悲しいし、それだけに突然ヌッと現れてラブドールみたいな人形を出してくるおっさんがめちゃくちゃおぞまし怖いのですが、3家族ともなんやかんやでそれを受け入れてしまうのです。
特にレオノーラのパパ(ゲイでパートナーとは死別、レオノーラと血がつながっているのかは不明だけど本筋とは関係ないからどうでもいいわね)はレオノーラも通っていた学校で働く先生なのですが、自分の教室にレオノーラ人形を持ち込んで授業を始めたりするので、生徒がポカーンとしていました。確かに怖いわね。
もちろん呪われた人形なので、それぞれがめちゃくちゃ殺戮しまくります。
レオノーラ人形は父を侮辱した校長を殺し、テレサ人形は浮気をしている父とその愛人を殺しに行きます。マリア人形は自分を怪しんだ召使を殺そうとし、呪いの諸悪の根源のパパもがっつり車で轢きます(この時、マリアが車を運転してレオノーラとテレサが助手席で笑っているのが怖いけどかわいい)。
そもそも、なんでこんな目に遭うのか?という疑問がありますよね。
諸悪の根源は以前に起きたガス爆発事故(早口言葉みたいだ)。被害者少年・エルドンはガス事故を予知して(すげぇ能力だなと思ったけどめちゃめちゃさらりと流される)通報しようとしたところをレオノーラの父親・フリオ(当時の少年の担任)に咎められて教室に閉じ込められます。そんなことをしていたら隣の部屋で不慮の爆発が起き、少年は壁ごと吹っ飛び、その後泣きながら焼け死んだという…
吹っ飛び方がすさまじい合成だったのでちょっと悲しみが薄れましたが、その死を追求しようとした少年の家族は雇われチンピラにボコボコにされ、怒りに燃える父親はなんと黒魔術で報復したのであります。
「お前たちは黒魔術でいつでも殺せるんだが、それじゃあ面白くないだろう」
みたいなことをいうエルドンパパ。
黒魔術、スゲーな。やろうかな…? とか思いそうになっちゃったじゃない、危ないわね。
復讐の原因は、
マリアの両親は学校の経営に関わっていてガス事故をもみ消したから
レオノーラのパパ・フリオは被害者の少年を教室に閉じ込めておしおきしていたから(そのせいで逃げられなかった)
テレサは少年の話を聞いていて公表すべきだと両親に願ったのですが、両親は「おおっぴらにしたらテレサが退学になる」と黙らせたから。
だから子供を殺して同じ目に合わせてやったばかりか、倍返しだ!とばかりに殺人事件を起こさせたんですね。なんというエグい話。子供に罪はないですよ!!!
(ちなみに死んだエルドンくんはやけどした状態で学校のトイレやら廊下やらめちゃくちゃ出現しまくるので、それだけでちょっと驚かされます)
そしてマリアの母・フェイス、テレサの母・ステラ、レオノーラの父・フリオ、霊媒師のアウグストは被害者少年・エルドンの父に拉致され殺されそうになります。
単なる善人・アウグストなんて煮えたぎった何か(金属かと思いきや蝋?ゴム?)を浴びせられて悶絶。この人は関係ないだろう。
しかしフリオが照明の炎でロープを焼き切って逃げ、煮えたぎった何かをエルドン父に浴びせて反撃のチャンスを作ります。
こういう時に思うのが、火でロープって焼き切れるんですかね?謎。
エルドン父がやられたらぱたりと倒れる人形たち。でも彼が気が付いたら一緒に起き上がるシーンはちょっとかわいいのですが、ここで人形VSパパママ勢の対決になるのであります。
凄いなと思ったのが、フリオは娘の人形に何もできないのね。
でもフェイスとステラはすごい。首をもぎとり、炎で燃やし、かつて子供としてかわいがった人形に「●ネ!」みたいなことを叫びます。母は強し。対決シーンではおそらく、背の小さい役者さんと俳優さんがガチンコで喧嘩しています。
最終的にフリオはなが~いヤリで刺され(「病院に連れて行く!」とみんなに言われていましたが、あんなに長いヤリが背中に刺さった状態だと何に乗せていけばいいのかしら?)、死亡。エルドンの父親とママ勢で再度しばきあいがあった結果、フェイスとステラが生き残ります。
いや~モリマンと山崎方正の対決を見ているかのような、固唾を呑んだ白熱試合でしたね。
最終的にはフェイスには妊娠していた第二子が残り、ステラは夫と愛人の子を引き取って、二人の母が墓参りで再会して終わり。しかし、フリオは肉体を乗っ取られたのか、子供が死んで悲しむ家庭に生き人形を配って回る謎の男として蘇る… という謎ラスト。
アジア映画ってオカルトにしろスプラッターにしろ、欧米のものと比べると粘度・湿度が違う感じがありますけど、人形ホラーもねっちりしていました。
21世紀に撮影されたとはまったく思えない映画。※ほめてます!!!