ヴァンパイア化して戦う母よりドライな息子のほうが怖い『ブラッド・レッド・スカイ』

2021年にネットフリックスで配信が開始された『ブラッド・レッド・スカイ』を見ました。ドイツ/アメリカ映画。

この映画、わりとむちゃくちゃで好きですね。ホラー×フライトものだと「スネーク・フライト」とか「デッド・フライト」とかありましたけど(わかりやすいタイトルだ)、この映画はずばりヴァンパイアものです。

しかも、渡航中にハイジャックされ、息子を守るために母親がヴァンパイア化して戦うというものすごいお話。しかももともとヴァンパイアだったんですよ。途中で襲われて変異するとかじゃないの。持病を抱えているのかと思いきや、ヴァンパイア化を止めようとしているんです。

ヴァンパイアのルックスは肌は白・眼は吊り上がって黒目(白目部分がない)、鋭い牙と爪、髪の毛はナシというホラー映画ではわりとベタなルックス。ティーンズもののヴァンパイア映画だったらルックス変わらないのにね…

後半から終盤にかけてはもう、地獄絵図です。人間の欲がひたすら交差していく様はものすごい不快。

お話を振り返ると、主人公のナディアは息子のエリアスとともに飛行機に搭乗。親切なファリードという男性も助けてくれ、無事に飛行機に乗ることができるのですが、あっという間にハイジャックされます。

副操縦士や男性CA(オネエキャラから例刻サイコパスキャラになるので怖い)もグルで、子供を守ろうとするがあまりハイジャック犯に非協力的なナディアはボコボコにされて血まみれに。しかし、彼女は実はヴァンパイアだった(遭難し、助けを求めて入った洋館で襲われた)ため、めちゃくちゃ強いのだ!

彼女は勢いでハイジャック犯を殺してしまい、それが発覚して大騒ぎに。ハイジャック犯たちが死体のある貨物室に入った隙に操縦室を乗っ取り、航空工学を学ぶ学生に飛行機を運転させようとしますが(ナディアはわりとムチャクチャです)、ここで最大の敵がはやくも立ちふさがります。

それが男性CAになりすましていたハイジャック犯・エイトボール。とにかく残酷で冷酷で自己中心的な彼(ルックスがキレイなのも怖さを引き立ててる)は、ナディアがヴァンパイアであることをさっさと見抜き、彼女を紫外線ライトで攻撃しようと提案したり、彼女の血を自分に注入してヴァンパイアになったりと反撃を試みます。

しかしそれでも負けないナディア、ハイジャック犯たちを貨物室に閉じ込め、エイトボールをアルコールでこんがり焼き(しかしこの飛行機、火災があったり銃を撃ったりしてるけどいいのか)、裏切り者の副機長に飛行機を操縦させようと大活躍。

残っていた乗客たちも一度は助かるのですが、ひとりだけ死にそうなおじさんが生き延びるため貨物室を開けてエイトボールを解き放ち、自分を噛ませようとします(もちろん噛んでもらえない)。エイトボールのせいで乗客たちのヴァンパイア化はどんどん進み、エイトボール自身は日光で死んで飛行機も無事に着陸したものの、ファリードをハイジャック犯と勘違いした(実際に彼は犯人のスケープゴードとしてありもしない学会に招待されていた学者です)軍隊によって事態は膠着状態に。そしてまた夜がやってくる…

ファリードは確保されたものの、飛行機の中にいたヴァンパイアたちが軍人を襲い始めてまたまた大騒ぎ。実はハイジャック犯は爆弾を隠していたのですが、そのリモコンをくすねていたのがなんと息子のエリオスくん。自分のぬいぐるみの中に隠していました。彼が探していたのは優しくしてくれたファリードと、そして自分の母親。母はなんと生きていた!

しかし、人格を失い自分に牙を向けた母の姿を見て、エリアスはすぐさまリモコンをぽちっと押します。飛行機も母もエリアス自身も吹っ飛びますが、駆け寄るファリードはぴんぴんしてる息子を抱きしめて再会を喜びます。えっ、エリアスくん、爆風で吹き飛ばされたのに元気すぎじゃない?せめてドリフみたいに髪の毛チリチリになるか、顔を黒く塗っていたほうがまだリアルかもしれん…

お母さんのなりふり構わない感じはジョディ・フォスターの『フライトプラン』を思い出す。ジョディ・フォスターのなりふり構わない母感もすごいですよね。『パニック・ルーム』しかり。でも息子のこのドライな感じはなかなか類を見ないっスよね。たぶんお母さんが普段から「私があなたを襲ったら殺すのよ」と言い聞かせてたんだとは思う、そう信じたい。じゃなきゃ即座に母を殺すボタン押せないぜ。