自分たちにそっくりな殺人鬼一家の来襲に震えが止まらない「アス」

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2019年のアメリカ映画「アス」を見ました。「ゲット・アウト」で注目を集めた監督ジョーダン・ピールですが、この映画はホラーコメディではありません。ものすごく狂った悪夢を見ているような感覚。誰かの頭の中にトリップしてしまって、そのまま隙間に体が抜け出せないような気持ち悪さ…素晴らしい。

主人公のアデレードは子供時代に遊園地のミラーハウスで自分そっくりの女の子と遭遇したという謎のトラウマを持つ女性。家族を持ってから、久しぶりにその遊園地のあるビーチを訪れたアデレードですが、その夜に一家そっくりの4人が家を訪ねてきて…というお話。

しかも、襲われるのはこの一家だけにあらず。アメリカ全土で、誰かにそっくりな人間たちが暴れまわり、人間を殺しているのです。実はアメリカの地下には使われなくなった空白のエリア(地下通路みたいなモン)があるそうなのですが、そこで地上で暮らす人間たち(オリジナル)がコピーを作られ、彼らはそこで生活をしているというのです。ですが人間を支配するために作られた複製人間のプロジェクトは既に頓挫しており、彼らの存在は闇の中。そんななか、アデレードのコピー・レッドは仲間を扇動して地上の人間たち(自分のオリジナル)を襲う計画を立てるのです。恐ろしいのが、コピーたちはオリジナルと頭の中でつながっているので、思考を読んで追いかけてくるという…そんなの逃げようがないですね。なお、コピーたちは赤い服を着ているのでひとめでわかります。

とはいえ襲撃当時にはそのことはわからず、ひたすら不気味。レッドは声がガラガラで目線がつめたくひたすら怖く、夫のゲイブ(陽気なキャラ)のコピー・アブラハムは無口で冷酷な巨漢。娘のゾーラのコピー・アンブラは大人を躊躇なく殺せるほどの殺人鬼で、息子のジェイソンのコピー・プルートーは放火魔で顔の下半分が焼けただれている(そのせいで口がきけない?)ほど。
このコピー4人家族が家の前でジッ…と立っているシルエットだけで、子供なら1週間はうなされると思う。

レッドは影として生きざるを得なかった人生から、アディをものすごく恨んでいます。アブラハムとも愛し合っていないけれど、ゲイブのコピーだから結婚せざるを得なかった。アンブラとプルートーもマジキチ殺人鬼なので全然かわいくないと断言します。

ここからは個人対決。ゲイブはヨットの上でアブラハムに殺されそうになりますが、幸運にも撃退。足が速いゾーラは同じく俊足のアンブラ(ハサミを持ったまま追いかけてくる)に追いかけられますが、なんとか逃げ切ります。ジェイソンはプルートーをクローゼットに閉じ込めてそのすきに逃げ、一家はなんとか逃げおおせ、友達の家へ。

ですが友達一家も既に殺されており、そのコピーと対決する羽目になるアディたち。双子の娘(女子高生くらい)がいるのですが、双子ならではの攻撃はなかったのが残念かな。どうせならコンビで攻撃してきてほしかったです。

そこからさらに逃げるアディたちですが、もちろん追いかけてこられ、今度はアンブラが攻撃。走っている車の上にしがみつき、ガシガシとハサミで攻撃してきます。ここでたまたま運転席に座り込んでいたゾーラの運転で、アンブラは死亡(急発進と急ブレーキを交互にやって吹っ飛ばした)。

夜は明けても攻撃は止まず、今度行くてに待ち構えていたのはプルートー。しかし、結びつきが他の人達より深い2人。ジェイソンの動いたとおりにプルートーが動いてしまうという習性を利用し、プルートーを火の中に誘導します。しかしレッドはジェイソンを誘拐して、それを追いかけるアディ。地下施設に侵入です。

アディは激闘の末にレッドを殺して地上に戻るのですが、そこでふと思い出します。かつてミラーハウスで、レッドとアディは既に入れ替わっていたことを…つまり、今ここにいるアディこそ本当のレッド。不安げに自分を見つめるジェイソンを、ニヤッと笑みを浮かべて見つめ返すアディ…というエンドです。

ちなみに地上で遊園地を楽しむ子供時代のアディの動きをレッドが地下で模倣しているというシーンがあるのですが、地上では華やかで楽しそうな遊園地が、地下ではアングラ劇団のように全員がパントマイムで過ごす闇遊園地になっていました。ジェットコースターも、フードコートも、地上と地下と同じキャストの人たちが陽と陰の演技をそれぞれ披露してくれています。ここが本当に怖い。主演のルピタ・ニョンゴさんも(子供時代の子役も)すごくいい演技でした。

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