自分の人生が思い通りにならない時「消えてなくなりたい」ではなく、「別の人間になりたい」と思う人って実はパワフルな気がする。
2018年製作のアメリカ映画『ナンシー』を見ました。女優のアンドレア・ライズボローが製作に加わり、主演のナンシー役も務めています。
見終わって気付いたけどホラーじゃないね!どちらかというと悲しいお話だった。
それでもこの話が面白いな~と思った理由。
- 主演のアンドレア・ライズボローの、冴えない女性としての演技が本当にユニークで素晴らしい
- 脇役にスティーヴ・ブシェミがいる!ジョン・レグイザモ(元祖『スーパーマリオ』のルイージ役でおなじみ)もいるぞ! わりとしっかりした配役で見やすい
- 延々と雪がそぼ降る、閉塞感のある田舎が舞台。主人公の孤独が際立っていく感覚がある
ブシェミを見かけると得した気持ちになるのはなんでだろう。
ヤングケアラーとなり、自分の人生を諦めて母の介護をしていたナンシー。仕事は派遣で、貧しくて恋人もいない。以前、子供を失った経験がある(出産できなかった?)。
SNSで子供を失った男性と知り合い、惹かれていくも妊婦のふりをして接触したせいで、真実がバレた時にこっぴどくフラれてしまう。
そして母は深夜に突然死してしまい、彼女は生きる目的を失ってしまう。
という、この鬱々としたシーンで前半が終わります。くら~い気持ちになりますね。
ナンシーはふと、観ていたテレビに映っていたニュースに釘付けになる。20年以上前に誘拐された少女のニュース。この少女、自分に似ている気がする…
誘拐された少女の両親に電話をかけ、自分がその子供かもしれないと告げるナンシー。少女の母はナンシーを信じようとし、父は彼女を試そうとする。一時的に同居生活が始まってしまう。
しかし、やはり彼女はその誘拐された少女ではなかった(DNA鑑定の結果)。それでも、狩猟事故でケガをした少年を懸命に助けようとしたナンシーを見て、誘拐された少女の両親は彼女のことを受け入れようと決める。
その一方で、ナンシーは良心の呵責に耐えられなくなり、夜中にそっと家を出ていく。
という、誰にも救いがない話なんです!!!
ナンシーが『エスター』のような悪人じゃなくてよかったよ… ホッとすることもないんですけど、心がガサつくこともない。ナンシーがひとりで生きていくために必要な過程だったんだろうなとは思う。日本でもリメイクしたら面白そうですね。
この映画の脚本が面白いな~とおもった点をもうひとつ。
ナンシーが職場で旅行したことを自慢するのですが、その行き先がなんと「北朝鮮」なんですね。わざわざ北朝鮮に旅行に出かけるアメリカ人ってそりゃあ珍しいだろう。ざわざわする職場(2人しかいないが)。「買い物がお得な…?」「それは韓国よ!」なんてやりとりもあった。
あと、総書記像の写真を見た同僚が「この人だれ?ここはなんの場所なの?」と根掘り葉掘り聞いていたのも面白かった。
いや、絶対わかんないだろうな。私もよくわからないです。日本でも渡航したことがある人といえばアントニオ猪木ぐらいしか思いつかないです(北斗晶さんもプロレス興行で行ったことがあると言っていたっけ???)。
アメリカから北朝鮮まで行くのにどれくらいかかるのかしら?タイとかベトナムとかシンガポールとか、もちろん日本でもいいんですけど、チョイスが渋いっスね。と、お茶を濁してみる。