植物に襲われるよりも自己犠牲を強いる世界観が怖いよ『リスタート・アース』

リスタートアース

「地球が喰われるー」

なぜだか『寄生獣』よりも漫画ゴラクっぽい、油にまみれた中華料理屋に並んでいた漫画本のページをくったら真っ先に描かれていそうなフレーズ。

こちら、2011年の中国映画『リスタート・アース』のキャッチコピーです。

アイデアは面白い。植物に襲われた人間たちが生き残るために奮起する話なのですが、犬木可奈子の漫画にも同じような話がありました。「みどりの守り人」だっけ。ちがったらごめんね。このお話大好き。

あと、藤子F先生のほうの短編にもありました。無人島に追い詰められたカップルたちが暴走する植物宇宙人から身を守るお話。こちらはブラックコメディなオチが最高でした。

そもそも、もろにトム・クルーズ主演の『宇宙戦争』がベースではないか?(まぁこれもリメイクではあるが…)というツッコミも入れたくなる。

しかし!残念ながらどれと比べても「脚本が微妙」。小学校の道徳の本みたいなまっとうでまっすぐで青々しい主張が校長先生のお話のようで、大人が見ると若干気が滅入ります。

また、CGのテイストがザ・中国という感じ。2作続けて中国映画を見たのですが、微妙に画質の荒いザラついたCGが強烈すぎる。汚いとか質が悪いとかいうことではない。なんか、個性的なんだよな。なんなんだろう。

ストーリーは…

植物の暴走によって学者の妻を亡くし、娘と2人で生き続けてきた平凡な男。偶然にも軍と出会い、植物を撃退できなければ人間は絶滅!残された時間は僅かだと知ってしまう。男は娘を守りながら、暴走する植物を止めることができるのか!?

最初は10人以上いた軍人たちもフラグを立てては退場していく(プロポーズとか、俺にも娘が…とか、ベタベタ)ので、せわしなさすぎて感傷に浸る暇もありません。隊長が主人公の娘をかばってビルから落下するシーンなんぞ、もう、ねぇ… ダメ。ツッコミどころが多すぎる。笑えるツッコミじゃないの。ん?と思うだけ。

7~8歳の女の子がカイジの鉄骨渡りみたいなマネできるわけないだろ!(高層ビルの間に渡された鉄骨を手もつかず、スタスタ歩いて通過)とか、10人以上でいっぺんに渡ったらさすがに鉄骨落ちないか?とか、隊長が落下していく時にタバコを咥えているところが見えてそんな余裕ある?と思ったり。

ビル風ゼロってのもおかしい。もっとビュービュー風が吹くものではないか。

そもそも、なんで鉄骨があるのかもわからない(工事中でもないし)。

個人的に好きなのはバスの場面。追いかけてくる植物のつるから逃げるため、廃バスに乗り込むのですが主人公だけはどこにもつかまれず、ビッタンビッタンいろんなところにたたきつけられるのです。死ぬのでは?と思いつつ、ハラハラ感はすごかった。

なんて書いてますが、こちらはお笑い映画ではありません。

とにかく自己犠牲。自己犠牲。自己犠牲だっていってんだろハゲ!!!と首根っこをつかまれて吊るされそうな勢いで迫りくるのであります。

植物を撃退する壮大な計画も一度は頓挫しそうになるのですが、突然主人公が軍の最高司令部にアクセス。あきらめちゃダメだと滾々とトーク。なぜかそれを生き残った民衆も他の司令部も聞いている。心を動かされ、討ち死に覚悟で出陣する世界中の軍人たち…

そして、最後の最後で俺も娘を守るんだ!と女性軍人の代わりに犠牲になることを選ぶ主人公。

人間は無事に生き残り、作戦を成功させたのは… 中国だ!イェーイ!!すごいぞすごいぞ! みたいな終わり方でした。

映画の生き残りキャストを予想するのって意外と難しいものですが、今作もスゲー難易度です。ヒロインの女性軍人、トゥームレイダーのコスプレしているみたいな女性軍人、有能な通信担当のデブちん、娘。

謎の4人。いいけど。

植物が地球を襲う、ってある程度のビジュアル、美しさみたいなものも欲しいものですが、そういったものは皆無でした。ず~っと画面がグレーと茶色。