フェス好きな若者を楽しくたべたべ映画『ハングリー/湖畔の謝肉祭』

ハングリー

「カニバル鬼畜ショッカー」というDVDの謎煽り文句が一番怖い。

2020年のイギリス『ハングリー/湖畔の謝肉祭』を見ました。

人を襲っては食べちゃう田舎に何も知らずにノコノコやってきたフェス好きの若者たちの文字通り「死闘」を描いた作品なのですが。

いやぁ、ものすごく凡庸。道に迷って奇妙な雑貨店に入って明らかに怪しい夫婦に出会っちゃったり、いかにもな奴らに襲われたり、拉致されたり、監禁されたり、逃げようとしたり、結局逃げられなくて終わり。見たことがあるシーンのつぎはぎであります。

過激な描写があるわけでもなければ、優れたメイクやCGが出てくるわけでもないので、とにかく「怖くない」の一言に尽きる。

タイトルのふざけようが同じ方向性の『フィンランド式残酷ショッピング・ツアー』の面白さをつい反芻しちゃいました。

でもいろいろ思うところはあります。

まず、「フェスに行くような奴らは食われていいよな」という暗黙の了解。昔ならば学園ヒエラルキーの頂点でイジワルで傲慢、それでいて顔がよく交尾しまくっているいかにもパリピな若者たちがこの手の映画の餌食になっていました。

最近は動画配信者とフェスに行く若者は餌食になりやすいですね。あとキャンプと登山(これはずーっと定番だけど)。

この映画はフェスをはしごするわりにぜんっぜん音楽を好きそうじゃない人たち(無音でドライブしてた気がするけど、車の中でガンガン音楽聞いたりしないのか?)が出てきたので、それはちょっと笑ってしまった。

いい場面もありました。

冒頭に出てきた「かつての悲惨な出来事」シーン。被害に遭う前に湖でジェットスキーを楽しむ人たちをバックにタイトルが映し出されるのですが、この映像は面白かったな。ホラーとの相性いいよね、水上スポーツの映像って。意外と。サーフィンとか、水泳もいいな。想像を掻き立てる感じがあります。

悲しいかな、ここがピークです。

冒頭には妊婦も登場するのですが、なんとその腹を切り裂き、人間の皮膚を仮面にしているキ〇ガイたちがむしゃむしゃ食べまくるという衝撃シーン。妊婦さんがずーっと「キャー!キャー!」と叫んでいてすごい。お腹を裂かれて食べられている時点でそんな元気ないと思う(失血性のショックを起こしている頃では…??)。あと、出産間近に旅行は危ないわよ~とおせっかいババアのようなツッコミが止まらないのであります。

この切り裂かれた腹のメイクが学芸会みたいな感じでした。どんな学芸会だ。

結局、この田舎に案内してくれた謎の美女がキチ〇イたちの仲間だったというオチなのですが、登場してきた時点で察しがつくというのも悲しい。「私の田舎はワケアリなんだ」みたいなことを言っている時点で「あっ…」てなるよね。

おそらく、こういったカニバル系の映画は加害者のほうも丹念に描く必要があると思うのですが(過去にトラウマがあってェ…とかそういうことではなく、ホラーキャラクターとしての魅力を描いてほしい。それで成功したのがレザーフェイスやクライモリだと思う)、加害者グループは出来の悪いマスク、被害者グループの若者ですらそろいもそろって似たような見た目をしていてごっちゃになりました。

全体的にすべての工程がもったもったしているところはリアルでしたね。

忘れちゃいけない、エンディングロールでスタッフやキャスト名が流れる際、画面の左半分によくわからない仮面の男がずーっと陣取っていて(ドアップ)「そもそもお前は誰だ」という気持ちでいっぱい。思いがけない笑いをくれるなぁ。

ストーリーはめちゃめちゃですが、笑いのセンスはけっこうよい。

「俺の嫁はマリリン(モンロー)そっくりだろ」と不気味夫婦に言われた被害者たちが「どっちかというとマンソンだろギャハハ」と不謹慎なツッコミを入れていたり。初めて会った夫婦にそんなこと言うなよ… という気もする。

撤回。ジェットスキーが楽しそうな映画でした!