呪いの儀式・悪霊・廃墟・顔のない仏像…恐怖映像のオンパレード映画『呪詛』

ホラー映画には2種類ある。

なんの落ち度もないのに、恐怖体験に巻き込まれるもの。

やらかしてしまって、恐怖体験に巻き込まれるもの。

前者は理不尽さがたまらなく恐怖を増幅させるし、後者は胸糞の悪さが後味をより悪くしていくように思う。

しかし、この「やらかし」ってのがね。ホラー映画だけではなくコミックでも「いじめっこ集団になんとなく所属していた主人公がいじめられっこに復讐される」なんて内容もあるが、明確に悪意をもって行動していたが故に恐ろしい目に遭うといえば洋画の『スペル』がやはりわかりやすい例(ばばあに不親切にしたらめちゃ呪われるという内容)。

しかし、昨今のホラー映画によるヤラカシといえば… そう、動画配信者がずかずかと廃墟やら幽霊屋敷やらに入り込んでお仕置きされる、というものが定番になりつつある。

不遜な態度をとらせやすい、自己中心的、恐れ知らず… と、いかにもなキャラクターをあてはめやすいというのもあるんでしょうね。

この映画もまさにそれであります。

2022年のネットフリックス配信映画『呪詛』。台湾映画ですね。

回想シーンと現在のシーンが交錯するPOV映画なのですが、まぁPOVの適性をよく利用していると思う。怖い。怖いけど、ホラー映画に慣れている人にはどこまで響くのか。いや、怖いを通り越して面白く見えてきちゃったりするのよね… なお、監視カメラの映像がふんだんに使われているのですが、誰が入手して編集したのかは説明されない(主人公がやったのかもしれないが)。

呪いがなんの罪もない周りの人に伝染していくという点では『呪怨』の影響を感じるし(邦題も意識しているのか?)、母娘の絆を描いている&マンションがめちゃ汚いという点では『仄暗い水の底から』を思い出させる。

あと、閉鎖的なコミュニティの儀式やら、カルトっぽい宗教やらが絡んでいるところも興味深い。『ノロイ』『カルト』好きな人はたまらないんじゃないか。台湾のお祓いの儀式はわりとシンプルで、やはり韓国のお祓い特有のとにかくギラギラとしてエネルギッシュな印象は独特なんだなぁと思ったりもしましたね。

呪いを想起させるアイテムとして登場したのは蛆虫、髪の毛、抜け落ちる歯、耳… あたりかな。あと、顔を隠した仏像。

前置きが長くなりましたが、ストーリー。

6年前→主人公のルオナンとその恋人、友人のメガネくんの3人は動画撮影のために親戚の儀式に乱入するが、地下道に侵入した男性2人は1人が焼かれて死に、1人が自殺してしまう。その後、ルオナンも精神を病む。

現在→儀式時に妊娠していたルオナンは施設に預けていた子供のドゥオドゥオを引き取り、親子で暮らし始める。しかし、次々と起こる奇怪な現象から、6年前の儀式がまだ影響しているのだと確信。周囲の人間も次々に死んでいく中、彼女は改めて悪霊と向き合う決心を固める。

みたいな感じの話な。

おそらく両親は交通事故で死亡、相談した警察官は集団自殺、世話してくれたボランティアの人はあっつあつのガラス(工芸品を作成中)を飲んで死亡、ドゥオドゥオをかわいがってくれていた施設の男性は頭をガツガツぶつけ死などなど、連鎖がエグいのはホントに怖いです。

あと、たびたび主人公が「娘を助けるために配信している」というていでカメラに語り掛けてくるのですが、その映像もなんだが目がぶっとんでて怖い。

そうそう、この映画を語るうえで欠かせないのが主人公の浅はかさ。いやぁ、この人もそこまで悪いことはしていないと思うが… まぁ、バカ!

「お祓いの儀式を成功させるために、1週間子供に食事をさせないで」と言われるも、つい「かわいそうだから」と食べさせちゃって関係ない人がさらに死ぬわ、娘は体調不良になって死にかけるわで、すごくイライラしました。

あと、映像内でも「一緒にこの言葉を唱えて!」と、ディズニーランドのキャストみたいなノリでグイグイくるのですが、それが「その言葉を唱えた人も呪いを背負うかわりに娘の呪いを軽くする」というトンデモナイおつりがくるもので、予想していたとはいえこのなりふり構わずぶりがすごい。

おすすめのホラーシーンをあげるなら6年前の儀式のシーンかな。

撮影にいってしまった男性陣においていかれた主人公、突然股から不正出血して慌てるのですが、おかしくなったメガネの男友達においかけられて逃走(歯がかゆい…と言いながら歯が口からぼろぼろ落ちてくるのトラウマレベル)。すると、目の前に血まみれでブリーフ姿のおじいちゃんたちがキレイに並んで無言で立っているというシーンに出くわすのです!

クラスの写真撮影の列みたいに段になって並んでいるおじいちゃんたち。

最後まで説明ないけど(おそらく体に、連れていかれないための経文?が書かれている)、シュールすぎて怖いわよ。

あと、現在のお祓いの失敗シーン。

お祓いに失敗して夫婦の祈禱師が両方死亡するのですが、のっとられた奥さんがじっとり追いかけてくるシーンは非常に怖いですね。『REC』の感染キャミソールババアを思い出しました。

他にも監視カメラに子供を連れて行こうとする無数の手が映っていたり、娘が夜中に奇行に走ったり(髪の毛振り乱して絶叫)、娘ちゃんが霊と楽しく話したり、お祓いのせいで娘の肌にウロコができたり、いろんな手を使って怖がらせようとする製作陣であります。

その一方で、娘のバースデーケーキがパウパトロールのデザインだったり(どう見ても無許可のやつでは…?)、SNSでも話題になっていましたが娘の通う幼稚園名がチン〇ン幼稚園だったり、違う意味でハッとなるシーンも多いのですよね。

ラストは「顔を見てはいけない」仏像の顔を隠している布をめくってしまい、そこには穴が…! それを見たら主人公も頭をガンガンぶつけまくって昇天してしまうのですが、娘だけは施設に預け直して縁を切って無事だったというオチ。

わりとハイカロリーな映画なのですが、6年前の回想シーンは2回見ちゃった。おすすめ。