毒親から否定され続け、選んだ道は「魔女になること」―『ウィッチ』

2015年のアメリカ映画『ウィッチ』を見ました。低予算だけど映画祭で好評だった!という情報がありましたが、ホント?

17世紀のニューイングランドが舞台で、マジ〇チとまではいかなくとも(いや、言いたいが)かなり狂っている両親のもと、苦労しながら生きている子供たちの話です。話は比較的地味(まあ、部舞台が田舎だし、メインキャストしかほぼ出番ないし)なのですが、いわゆる“毒親”のもとで暮らし、最終的に闇に走ってしまう主人公の姿には心を動かされるものがあります。

信仰に篤い家族とはいえ、娘を責めるそのやり口にはムカムカ。宗教観の違いでコミュニティを追われる一家ですが、プライドが高く頑固な父親のせいでしかない印象。コイツがガンなんだよな!そして母親は長女のトマシン(主人公)を搾取子、他の子は愛玩子という感じで、とにかくあたりが強い。全部長女のせいなんですよね、都合の悪いことは。でもその理由は不明。娘が美しく生まれたことが妬ましく、夫と長男を奪われるのがおそろしいが故の行動って感じ。

で、お話なのですが。

まず、末っ子の赤ちゃん・サムがトマシンの子守中に姿を消します。そしてトマシンが奉公に出されることを知り、長男のケイレヴとともに森に逃げるのですが、そのせいで彼は行方不明になり、帰ってきたものの精神に異常をきたしたまま死んでしまいます。ケイレヴくん、非常にかわいくて聡明で優しい少年だったので、ほんとにかわいそう。

一方、意地悪な双子の弟妹は「トマシンが魔女だ」と告発(おそらく母親のせいで、長女を見下している。このあたりもすごくリアル。長女の言うことは何も聞かず、遊んでばかりで仕事を押し付ける)。

トマシンは双子を疑い、イライラした父親は3人そろってヤギ小屋に閉じ込めてしまうのですが、その夜に母親の前に現れたケイレヴ(とサム)は言葉巧みに彼女を誘い、正気を失った母はサムと間違ってカラスに授乳して乳をついばまれる始末。

翌朝、目を覚ますとヤギ小屋は破壊され、トマシンだけが生き残っています。彼女を責める父ですが、黒ヤギが突如父を刺し殺し、今度はそれを見た母に首を絞められる主人公。もうムチャクチャです。トマシンは母を殺し、悪魔に魂を売ることを選びます。

夜、裸のまま森に行くと、同じような魔女たちが炎のまわりで踊り狂っています。彼女たちはそのまま宙に浮き、トマシンはニッコリ。彼女もぶわーっと飛んでいきます。

この浮上シーンがダークで美しくもあり、少しだけ爽快感もあり… 強すぎる神へのこだわりと執着、「自分は穢れている罪人だ」と親に言い聞かせられ根付いた自己否定感、自己中心的すぎる両親と、そりゃあ人間界のほうがいやだわなと言いたくなる環境。

父親は母親の宝物を自分で売っといてそれを黙ってるんですよね。母親は主人公が持ち出したと思ってガンガン責める。そして後になって少しだけ親切にする父親。あー、イライラしますね!

ちなみに監督のロバート・エガースはウィレム・デフォーとロバート・パディンソンの2人映画『ライトハウス』を今年公開したばかり。こちらも面白そう。