前作とは別物!カーチェイスと銃撃戦が見どころになってしまった『新感染 ファイナル・ステージ』

新感染ファイナルステージ

2020年の映画『新感染 ファイナル・ステージ』を見ました。

この映画、私は前作のほうが好き。たぶん多くの人が同じ意見をお持ちではないかと思う。

まず、この映画については誤算があったのではないかと推測。

ネットフリックス限定配信されている『アーミー・オブ・ザ・デッド』とストーリーに共通部分があるのです。もちろん、両方とも数年前から製作しているはずだし、韓国とアメリカの距離でパクリなんてあるわけもない(大作同士でパクりあうの大変そう)。

で、なにがかぶっているかと思うと要のストーリーです。

ゾンビが蔓延するエリアに大金が残されている。落ちこぼれた主人公とそのチームは大金を命をかけて回収しにいくが、もちろん一筋縄ではいかず… という、この根っこの部分が同じ。

劇場版が公開されたタイミングは『新感染』のほうが先なので、この映画を先に見ていれば心証が違ったのでしょうが… おそらくほとんどの人はこの映画を後に見ていると思うんですね。コロナ渦だから、私も劇場での鑑賞を諦めたし。

そして、残念ながら、配信タイミングが早かった『アーミー…』のほうが派手でキャラクターもたくさん出てきてとにかくゾンビ映画らしいつくり。この映画は色合いがとても地味(それだけにリアルともいえる)なんです。まさに明と暗、くっきり分かれている感じ。

そして、私が気になったポイントはまだあります。

  • パンデミックから数年が経ち、ゾンビが全員汚い(茶色~グレー)。人間からゾンビに感染するシーンはほぼなし
  • 戦いが対ゾンビじゃなくて、完全に対人間になっている
  • 終盤はカーチェイスメイン
  • ラストがほろ苦いバッドエンドではない!

前作を踏襲している要素といえば「家族愛」くらいかな。韓国らしいですね。子役と優しいおじいちゃんが登場します。

しかし、本作の基本的なテーマは「贖罪」だと思います。

登場人物について。

ジョンソク:主人公。自分の不注意で姉と甥っ子を死なせたことを悔いたまま香港に亡命。抜け殻のようになって暮らす。

ミンジョン:パンデミック発生時にジョンソクに車の同乗を断られた過去を持つ女性。韓国で生き延びていた。

ジュニ:ミンジョンが娘として育てている少女(姉)。中学生ぐらいの年齢ながら、車の運転センスはピカイチ。頭文字D並みのドリフトを魅せる。

ユジン:ジュニの妹。しぶとくたくましい。ラジコンの操縦を得意とし、ゾンビを誘導する。

キム:ジュニとユジンの祖父。認知症か狂っているのか、無線で助けがくると言い続けている。孫思いの優しい性格。『冬のソナタ』にも出ていたらしいが私は未見なので知らん。

チョルミン:ジョンソクの義兄。香港に亡命するも荒れた生活に身をやつす。身体能力は高い。

ソ大尉:民兵集団631部隊のお飾り的リーダー。一見おとなしくて物腰柔らかだが、冷酷な性格。ミンジョンとは因縁があるようだが、多くは語られない。

ファン軍曹:ドラえもんみたいな輪郭のおっさん。631部隊の実質的なリーダー。粗野で乱暴者、殺しが大好きなどうしようもない性格。

ではストーリーも振り返りましょう。

新感染ファイナルステージ2

ゾンビパンデミックが起こった後。(タイミング的には、前作の少し後くらいかな)

姉夫婦と日本行き(途中で香港行きに変更)の船に乗り込むも、途中である家族を見殺しにするジョンソク(これがミンジュン。夫と赤子と一緒だった)。しかし船室に紛れ込んでいた感染者がジョンソクの甥を感染させる。息子を見捨てられず、自ら死を選んだ姉の姿に打ちのめされつつ、ジョンソクは「家族を救えなかった」という絶望にとりつかれる。

4年後。見捨てられた韓国にはゾンビが蔓延、封鎖されていた。

香港に亡命した義兄・チョルミンはやけになって生き、ジョンソクは彼の裏仕事を手伝う羽目になる。韓国内に取り残されたトラックに積まれた大金を回収する危険な仕事。他にはチンピラ(みやぞんに酷似)、タクシードライバー出身のおばちゃんしかおらず、この4人で密入国するしかない。

入国には成功したものの(裏ルートから手をまわして船で入国)、兄の失敗(トラックのクラクションをならしちゃうドジっ子ぶり)でゾンビが大集合。しかも誰かが発煙筒を打ち込んできて、大パニック。ジョンソクは謎の姉妹に助けられ、チョルミンはこれまた謎の殺人集団(発煙筒を打ち込んだ犯人たち)に拉致される。

ジョンソクは姉妹のアジトに案内され、そこでミンジョンと再会。計画を話し、ともに韓国を脱出するために協力する。

一方、チョルミンは631部隊の拠点で殺人ゲームに参加させられ(建物内には反抗した者の死体が吊り下げてあります)、ゾンビと追っかけっこをさせられる。しかし、衛星電話を通じて計画を知ったソ大尉は韓国を脱出すべく、トラックを横取りしようと企む。

ジョンソクはミンジョンにかつての無礼を詫びるが、ミンジョンは許してくれた。

2人は631部隊のトラックを強奪し、港に向かうことにする。しかし、囚われの義兄の存在を知ったジョンソクは単身631部隊のアジトの中へ。ゾンビ鬼ごっこに乱入し、一緒に突入してきたゾンビも加わって感染が広がる。

トラックの強奪に成功したミンジョンは因縁のソ大尉と戦う羽目になる(でもあっさりミンジョンが勝つ)。

ピンチに陥ったジョンソクを、自分の命を投げ出して助けるチョルミン。そしてミンジョンがトラックでアジトの壁を突き破って彼を回収する。

で、ここから延々とカーチェイス。ゾンビがたくさん詰まっているガラス窓つきの建物に誘導してゾンビ雪崩で敵を殺したり(『ワールドウォーZ』っぽい)と、ハラハラの場面が続くが、すげぇ長い道路だなあ(国道みたいな感じなのか?)という感想ばかり。そもそも、『マッドマックス』っぽいというか『ワイルドスピード』っぽいというか… カーチェイスが好きな人は楽しめると思うんですけど、ゾンビ映画を見ている人に車好きはどのくらいいるんだ…

結局、ファン軍曹含む追っ手は全滅。そろって港に到着するも待っていたのはなんとソ大尉。子供を人質にとるという姑息な手段に出たソ大尉、子供は助け出せたもののキムじいちゃんが撃たれてしまう。

ソ大尉はルンルンでトラックを横取りして乗船(フェリー)、待ち受けていた香港の半グレ集団みたいなやつらに殺されて死亡。そう、もともとジョンソクたちも捨て駒でしかないため、船に乗っていたら殺されていたと。うーん、想像に難くない。ジョンソクはよく警戒していなかったものですね。しかし大尉、死ぬ寸前に車のギアをバックに入れたおかげで、扉が閉まりきらずゾンビがなだれ込んできて船は壊滅。

ここからがドラマチックです。おじいちゃんがアジトで散々無線を使って助けを呼んでいたのを、その場にいる全員が「あらあらおじいちゃん、またボケてるわぁ」的な対応でいなしていたのですが、なんとホントに助けが来ます。

しかも白人(米軍ではないが)。どういうコネよ、ハム無線仲間??と思いましたが、足をケガしたミンジョンは子供たちを逃がすために自分が犠牲になる道を選びます。悩む主人公。しかしもう過ちを繰り返したくないと、助けに行くわけです。

で、あっさりじいちゃん以外の全員が助かってヘリに乗って終わり。た、助からないかと思ったのに… いや、助かっていいんだけど。

なんだか恐ろしいのが、韓国内に入ってから登場する女性はミンジョンと姉妹のみ。631部隊には女性はまっったくいません。こわい。何されたんだ。嬲り殺されたのか。

個人的にワクワクしたのはゾンビ鬼ごっこくらいかな。出場者がコンテナに詰め込まれているんですけど、全員壁を向いてうなだれてて、ものすごく落ち込んでました。

あと、これは内容とはあまり関係ない不満ですけど、夜のシーンがほとんどなので、自宅で昼間に見ると見にくいの。真っ暗にするか、夜見るかじゃないと盛り上がらないと思います(カーテンを引いて見ました)。

そしてソ大尉のキレキレ小物ぶりが気になっていたのですが、つい先日見たネットフリックス限定ドラマ『キングダム』のスピンオフドラマにちょこっと出ていてびっくりしました。面白い俳優さんですね。目つきがねっとりしているハンサム。

つっこみどころはほとんどなしと言いたいが、車いじりができそうな人がいないのに運転の腕をどこで学んだんだとか、ガソリン集めるの大変じゃねとか、気になるところはたくさんある。あと、ミンジュンの子供は死んだの?それともユジンだけは本当の子供?いや、違うだろうなぁ(子供は年齢的には4歳くらいのはずだけど、ユジンはもう少し大きいと思う)。

でもやはりラストはバッドエンドでよかった気がするんだ。「死なない」ことも救いであり、贖罪(アンタの命がうちの子供の代わりになると思うなよ理論)なのかもしれませんが。