呪いの感染力が弱すぎやしないか?自己保身を選ぶ者に死を!『イット・アワーズ』

イットアワーズ

アメリカのテレビドラマをDVD化したものらしい作品『イット・アワーズ』。明らかに『イット・フォローズ』を意識している映像なのですが、非常に物足りない内容であります。

ストーリーの都合上出てくる廃屋はスゲー怖い。この廃屋だけでも見る価値があるかもしれない。いや、ないかもしれないですけど。

話を振り返ろう。

冒頭、ひき逃げで殺される女性が登場。そして、ひき逃げ犯の車の後部座席に突如その女性が血まみれで出現し… という展開があるのですが、このエピソードは途中まで本編にかかわってきません。でも、日本の怪談でよくある展開ですよね。いわゆるベタ。

で、主人公の登場。マニーは嫁の家に居候し、義父のフランクの仕事を手伝いながら暮らしています。立ち退きを迫られている家を安く買いたたく義父の手法についていけないマニー。とはいいつつも、地下室を間借りしている身分なので義父にヘコヘコし、高校時代の友達・ケヴィンの立ち退きを迫った際に、あまりに強引な手口に呪いが感染。彼自身に不幸が降りかかる羽目に。

もうこの時点で「はぁ?」です。

実はケヴィンが冒頭でひき逃げをした青年であり、そのせいで呪われて母も死にそう。でも、お母さんが呪いのトリガーを主人公に向けて引いた(呪文じみた言葉を吐く)みたいな描写もあって、ん??ケヴィンのお母さんが呪ったんじゃないの?とわけがわからなくなる。

さらに話は続きます。

主人公は家のリフォームのために車を抵当に入れるため銀行に話に行きますが、そこに高校時代の同級生が。高校時代モテモテだったマニーにフラれた過去がある彼女ですが、うだつのあがらない感じに変化した彼を鼻で笑います。

この女、ちょっと意地悪そうなので物語にかかわってくるのかと思いきやそんなこともなく… まぁ、フった女にせせら笑われたらある種の不幸なのかもしれないが…

で、主人公は不幸なのでこの大事な車を不運な交通事故で傷つけてしまいます。

さらに、立ち退き後に手を入れていた家を見に行ったら、元住人が襲ってきたりもします。

正直、この映画の怖いピークはここ。この廃墟のような家がとにかくおどろおどろしくてカッコイイ。うっそうと茂る木にすっぽり抱かれているような家なんですよね。もしかして合成なのかもしれないけど。というのも、ポストと家の玄関の位置が10メートル以上離れているという恐怖の間取り。雨の日、雪の日、どうするんでしょうか。あ、雪の日は郵便物が来ないからいいのか。

ちなみに住人もわりとマジキチ度が高いルックスの俳優さんを起用していて、近所の頭のおかしい人に襲われたのかと思いました。

そのうえ。家の立ち退きを迫る中で住人と義父が対立。自分の権力を誇示するべく、屋根にかけられたハシゴをグイグイ登る義父。なぜ屋根の上へ… と、案の定地面に落下して、さらに落ちてきたトンカチが機械を起動させ、電ノコで頭を勝ち割られてしまいます。「ファイナル・デッド」シリーズに近い展開だなあ。

目の前で義父が死に、落ち込む主人公。ケヴィンの母親も亡くなったことを知り、彼に謝ろうと墓地へ赴きます。そこでカルマが伝染していること、鏡の中に悪霊が見えるなら呪われているのが確定だということ。そしてその悪霊は呪われている人とその周囲に不幸をもたらすと説明するのです。このあたり、説明がつらつら続いて非常に面倒くさい。あと、悪霊のビジュアルがよく見えないのであまり怖くない。アジア系の女優さんなのか???「シンプソンズ」の猫ババアのほうが怖いぞ。

そしてケヴィンは償いのためか?自殺しようとするのですが、幽霊にどつきまわされて森の中を転げまわり死亡します。

主人公のマニーのほうは、義母が悪霊に襲われることに。このことから、マニーは立ち退きで揉めていた家を一軒ずつまわり、家を失わずに済むようにアドバイスをしてまわります。悪行を修正して助かろうとするんですね。

ですが、妹がバーベキュー用のガスコンロの接続不良で吹っ飛び、自分が許されてないことを知るのです。わりとラフに吹っ飛んだので驚きました。主人公ももう少し用心したらいいと思うんですが…

マニーは慌ててケヴィンの力を借りようとするも、彼は既に亡き者。今度はマニーがケヴィンと義父の幽霊にどつかれまくります(ポルターガイストにも近いんだけど、物理攻撃が多いんだよなこの話)。

その頃、マニーの嫁のアリシアのところには義父が電ノコで頭を勝ちわった家のおじさんがやってきていました。彼も死んだのか?あれ??と思っていたら、死んではないんだけど、主人公と義父のことを恨み「幸せ家族が憎い!」モードに突入しているおじさん、アリシアを殺そうとし始めます。正直、このおじさんがそこまでヒャッハーする感じのキャラでもないので違和感がすごい。

最期はマニーがアリシアをかばうことに成功、嫁の代わりに刺されて倒れているところに、義母の相談に乗っていたオジサン(間男かと思ったら単なる親切な人)が慌てて現れ「なんてこった…」みたいなことを言ったらエンドロールが流れ始めました。終わりです。

はぁ??

悪霊の目的はなんだったんだ… そして呪いの伝染が話の軸なら、最後に別の人にさらに飛び火しないと説得力なくないか?とか、いろいろ気になるところは多い。

まあケヴィンは交通事故で人を殺しているし、マニーもケヴィンの母親が死ぬのをわかっていて立ち退きを強行したっていう点においては死に加担しているのですが… そもそもケヴィンが轢いたサリーという女性が呪われていて、その呪いがケヴィンに移ったってこと???

もしかして、自己保身のために他者を犠牲にする(しかも、本人はそこに悪意をあまり持っておらず被害者意識が強い)態度が悪霊にとってはムカついたのでしょうか。

落ち着いて考えてみると、窓もなく自然光も入らなさそうな地下室を改装して間借りして、義両親にメッチャ気を使いながらペコペコ暮らす生活がもっとも地獄な気もする。