アルゼンチン版『マーダー・ライド・ショー』!?「ブラッド・インフェルノ」

ブラッドインフェルノ

アルゼンチン/ニュージーランド製作の「ブラッド・インフェルノ」を見ました。2017年の映画。
この映画はとにかくパッケージが悪い!DVDジャケットの適当な合成のせいでやっつけ感がすごく、「絶対にハズレ映画だろう」という印象。ですが、その中身は『悪魔のいけにえ』か、はたまた『マーダー・ライド・ショー』を思わせるダークファミリー×残虐拷問モノ!

未見のかたは今すぐにこの映画を見ることをオススメします!!

特筆すべきは、実際に洪水で被害を受け廃墟と化してしまったアルゼンチンの都市・エピクエンでロケを敢行しているという点。当初はセットかと思いましたが、途中から本当の被災地だと気が付いてビックリしました。そんなところでこんなバチアタリな映画を撮るのはどうかと思いましたが…

ストーリーはそのまんま、「無礼な若者たちが、人肉食いのキタネー家族に襲われてめちゃくちゃに痛めつけられて殺される」という王道もの。ですが、その根底に「お前たちは私達が助けを求めている時に何もしてくれなかつた。それどころか踏みにじった」という怒りがある…ということらしい(主人公たちは被災者のドキュメンタリーを撮影しようとしていたが、捏造してより悲劇的なものに見せようとしていた)。いやーお気持ちは察するけど、人肉は食わなくてもいいんじゃないか。

登場人物は主人公のディエゴ、監督のヴァスコ、その恋人のヴィッキー、カメラマンのエリカ、運転手のナチョ、被災者のカーラが中心です。

導入はやはり怪しいガソリンスタンドから。汚いミートパイ(いかにも怪しい)を売りつけられたり、レオタードで体操する女子の映像を見て自家発電しているおっさんに遭遇したりと、見ているだけでテンションが下がる絵面が続きます。

しかし、エピクエンに到着したら、いかにも怪しい骨の仮面をかぶった男がガソリンをこっそり抜き、車をエンコさせてしまいます。それを助けてくれたのがこれまた謎のおじさん。そのおじさんに同行してガソリンを買いに行くヴァスコですが、その間にカーラが蛇に噛まれてしまったり、ヴィッキーが連れてきた犬がいなくなったり(当然後で遺体で見つかる)、ナチョやヴィッキーが拉致されたりと急展開。

ヴァスコも別の仮面の男に遭遇してゴリゴリに殺されます。普通だったら殴られる瞬間に黒画面でカットアウトして次の場面に行きそうなものですが、この映画は違う。ヴァスコの頭が潰れるまでしつこく映してくれます。しかも殺人鬼に殴られるヴァスコ目線込み。なんていらないサービス。

また、ナチョとヴィッキーが拉致されるときにはなぜか画面が何度も赤くなり(フルカラーから赤と黒っぽい画面に変わる)、カッコイイけど唐突でビックリ。たぶん昔のカルトホラーへのオマージュなんだろうけど、劇場で見たらマジで怖いと思う。ストレートな怖さじゃなくて、製作陣のやる気満々の狂気が感じられて怖い。

蛇に噛まれたカーラを車に連れ帰ったディエゴとエリカ。しかしエリカはトラバサミに足をひっかけられて捕獲され、ディエゴはなんと逃亡。そこでヴァスコを車に乗せたおじさんと合流するのであります。このおじさんは銃を持っていたせいかなぜか生きていて、ヴァスコと協力してエリカたちを助け出すことに。
おじさんは拉致グループに娘を誘拐された被害者でもあるということもわかります。

一方、捕まったエリカはガソリンスタンドにいた暴言ジジイにケガをした足を切断されるという拷問を受けていました。しかも、切断した足をぼりぼりかじりだすおじさん。ワンパクすぎるだろう。

ヴィッキーとナチョはこれまたガソリンスタンドにいた自家発電ジジイに捕まっており、ナチョはおしっこをかけられて殺害され、ヴィッキーは乱暴されるはめに。

ディエゴとおっさんは拉致グループのアジトに潜入できたものの、娘の財布が見つかり、彼女の死を確信して涙を流すおっさんであります。自殺しようとするおっさんですが、エリカの助けを求める叫びを聞いて動き出します。しかし、あっさり捕まってしまい…

ディエゴはヴィッキーを助けたものの、間違って自分を助けてくれたおっさんを殺してしまうという失敗をやらかしてしまい、これまたあっさり捕獲。こいつらは無計画すぎないか?

そして狂気の夕食会には、片足をもがれたエリカと拘束されたヴィッキー、ディエゴが参加。やはり人肉で作られていたミートパイを無理やり口に詰め込まれるエリカ。すきを見て逃げ出すヴィッキーですが、なんとそのまま自殺。ディエゴもどさくさに紛れて逃げたものの、ここで衝撃の事実が発覚。姿を見せていなかったカーラは、実は一家の一員だったということがわかるのであります。しかもおっさんの失踪した娘のふりをしてディエゴやヴァスコたちを騙し、エピクエンに連れてきていたとのこと。そしてディエゴも死んじゃいました。そういやエリカはどうなったんだろう…??

そしてその後、ヒッチハイカーを装って次の獲物を狙うカーラの姿があった…

ということで、とにかくエリカと娘を探しているおっさんぐらいしかいい人がおらず、あとは全員クズかキチガイしか出てきません。まあ、そこはホラーらしくていいのですが、よく考えればこの手の映画で主人公が男というのも珍しい。この手の映画の主人公は、いかにもバージンな女子高生or女子大生というのが定番ですが、うだつの上がらない男が主人公とは…しかも覚醒しないまま終わるので、逆襲シーンなんてほぼありません。

そういえば生き残った??エリカはカーラにキスを迫るなど同性愛者的な描かれ方をしていたので、もしかしたらその点ではバージン=最後まで生き残ることが確定していたのかもしれないし、いかにも田舎でガチガチにキリスト教を信仰している人たちにとっては(カニバリズム一家にそんな概念があるのかはわからんが)それだけで異端=もしかしたら殺されているのかも。

とにかく意欲作でした。監督の次の作品に期待しています。

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