『死の匂い』を排除した結果、無味無臭になったアイドルホラー「がっこうぐらし!」

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2019年の邦画「がっこうぐらし!」。原作はコミック、以前にはアニメ化もされている作品でもあります。主演はラストアイドル。Wikipedia見たら個人名が掲載されてなくて、何かの怒りを感じました。
もともとかなり悪い方向に話題になった気の毒な作品(映り込んでいたキャベツが流通用に加工されたものだったせいで話題になったり、宣伝ポスターが既にネタバレだと炎上したり)ではあるものの、意外とよくできているゾンビ映画でもあります。ゾンビメイクもしっかりしているし、キャストだって別にそこまで悪くない。お金もかかっている。でも、全体を通してなんとなく物足りない。
「原作ファンにも納得してもらえるものを作りたい」と「ラストアイドルに忖度した作品にしなければ」という合間をウロウロした挙げ句、静かに倒れて沈んでいった感じ。アニメを盛り上げた主題歌『ふ・れ・ん・ど・し・た・い』も、当然映画用に差し替わっています。

ストーリーはアニメとほぼ同じであり、学園生活部のがっこうぐらしとそこからの卒業(脱出)を描いています。まあ、ゾンビがいる世界で学校で暮らすという設定は「セーラーゾンビ」前半とかなり似ているのですが、ゆきが見ている妄想(理想の学校生活)と現実(ゾンビウヨウヨ)の剥離という設定が最大の違いであり、「がっこうぐらし」の魅力なのかもしれない。
しかし、映画になると途端に安くなってしまうのはなぜなんだ。演技力の問題なのか、舞台セットの問題なのか、演出の問題なのかはもう判断がつかないのですが。
ゆきというキャラクターがさほどよくわからないまま、「ゾンビなんてそもそもこの世にいないし、同級生もみんな死んでいない」とお目々をキラキラさせている女子を見せられても、何も湧いてこないのです。誰もいないところに向かって「そうなんだ、ウンウン」と楽しそうに話しているのを見せられても、劇団の演技レッスンみたい…としか思えない。

そういえば、対ゾンビ武器として最強と言われていたバールをみーくんというキャラクターが使っているのですが、女子高生とバールってあんまり相性よさそうじゃないですね。「ウォーキング・デッド」のキャラクターが持っているとすげぇ強そうだけど、腕力がないとバールって殺傷能力高そうじゃない。

また、みんなから慕われている教師・めぐねえ役をおのののかが演じているという謎。いや、ちゃんと演じていらっしゃったですし、不満はないのよ。でも、なんでおのののか?なんで??あと、エキストラで足立梨花とひょっこりはんを出したのも何故??これはマジで何故?
「アイアムアヒーロー」でゾンビになったメイプル超合金を見た時のなんともいえないお得感(特にカズレーザーさんのZQNはすばらしかった)とは違う、「とりあえず話題になりそうな人をキャスティングして押し込みました」感はなんなのだ。

あと、途中で火事があって炎上ゾンビが出現するのですが、燃えたのがゾンビだけなので激しく違和感がありました。廊下が焦げるくらいしか建物は被害がなし。でもこの火事のおかげでゾンビは全部焦げ焦げして倒れて動けなくなっちゃうわけです。
アニメにあったペットの犬の死、くるみがゾンビに噛まれるシーンなどは全カット。ここまで書いていて気がついたけど、ゾンビ映画なのにまっったく悪い意味で死の匂いがしないんですね。変なの。

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