正しすぎて狂っている家庭からの脱走「籠の中の乙女」

籠の中の乙女

2009年のギリシャ映画「籠の中の乙女」を見ました。ヨルゴス・ランティモス監督は「ロブスター」「聖なる鹿殺し」、最近では「女王陛下のお気に入り」を撮られた方。人生における残酷な瞬間、人間の悪意で顔が醜く歪んだ瞬間を切り取るのにとにかく長けているクリエイターだと思います。この作品はカンヌ映画祭でも「ある視点部門」グランプリをとったくらいなので、クオリティは高い。

籠の中の乙女1

子どもたちを外界から守るために、完全に隔離された家の中で暮らし続ける三兄妹とその両親のお話です。
テレビや電話、汚い言葉、他の人間を排除されながらも、兄には性処理係の女性をアルバイトとして雇う父。しかし、そのクリスティーナが長女と接触し、「○○が欲しかったら私の股を舐めろ」なんてとんでもない要求を繰り返すようになっていきます。

少しずつ変化していく長女。映画のビデオと引き換えにクリスティーナに奉仕した長女ですが、両親にそれがバレ、ビデオテープで殴られます(ちなみにクリスティーナはビデオデッキで殴られていました)。(この件で、両親は喧嘩をするのですが、子どもたちに聞こえないように口パクで罵り合っていて面白かった)
この件でクリスティーナはクビになってしまい、長男の性欲処理をする係はなんと長女になってしまい…?と、このへんの流れは私も正直よくわからない(外界の汚れから守ってきたのに近親相姦はいいのか??)。

長女は母が隠していた電話を見つけ、自分の知らない世界が家の外にあることを確信。父の車のトランクに隠れて家の外へと出ていきますが、そのトランクは開かないまま、映画が終わってしまいます。
長女はトランクを開けて、外の世界に飛び出し自分の両親が異常だったことを知ったのか?
それとも、その勇気を持てずにトランクの中に入ったまま家に戻っていったのか?

どちらでも怖い。