「スイス・アーミー・マン」

スイスアーミーマン

2016年の「スイス・アーミー・マン」。スウェーデン/アメリカ製作。
ポール・ダノが遭難者、ダニエル・ラドクリフがなんと死体を演じていますが、奇妙な友情物語として成立しています。いや、それ以上に素晴らしい作品です。

ネタバレ

遭難の末、自殺しようとしているハンク。そこに、死体が流れ着く。その死体は尻からガスを噴き出させ、体を震わせる。ハンクは、驚きつつも死体にまたがる。死体は猛スピードで海面を駆ける。

ハンクは海岸に流れ着くが、人は見つからないものの、どうやら孤島からは脱出できたようだ。ハンクは人を探し、歩き続けることにする。死体は放置しようとするが、彼は引き返し、その死体を背負って、歩き始めた。

夜。森の中、洞窟で震えるハンク。
翌朝、死体の口から水が出てきて、彼は喉を潤すことができる。さらに死体は会話すら始め、ハンクは死体のメニーと共に、森の中で暮らし始める。不法投棄されたゴミを集め、家を作るハンク。しかも、メニーの勃起した性器がコンパス代わりとなり、彼を人間のいるほうへと導いてくれるようだ(!)。
ハンクは、何でも知りたがるメニーのために、人間のこと、社会のことを教えていく。

だが、メニーはハンクが好きな女性に見覚えがあるようだ。ハンクのスマートフォンを見てそれに気が付いたメニーは、彼に女装を命じる。メニーがハンクの役を演じ、ハンクは片思いの女性・サラを演じ、2人はゴミで再現されたバスの中で、過去を再現する。

メニーは火を噴き、工具にも銃にもなり、シャワーにもなる。ポップコーンを作って映画を楽しむフリをしたり、ホームパーティをしたり、彼らは想像の世界で思うさま楽しむ。
彼らは道を進み続けるが、橋を渡ろうとして川に落ちてしまう。だが、メニーの尻に入れていたコルクが外れ、彼らは水面に飛び出していく。

携帯の電波が入るところまで戻ったハンク。関係が悪かった父から、電子データでバースデーカードが来ていることに気が付き、自分のこれまでの生活を反省する。

クマに襲われ、食べられそうになるメニー。ハンクはクマと闘い、彼を守る。
ハンクは、実はサラは既婚者だったと話す(憧れていただけだから、どうにもできない)。
空を飛んで夜景を見る2人。メニーは泣いてしまう。

彼らは歩き続け、ようやく人がいるエリアまでくる。偶然にも彼らが辿り着いたのは、サラの家だった。サラは既に結婚していて、子供もいた。
メニーは死体として保護され、ハンクは生還者としてメディアに取り上げられる。だが、警察はメニーのことをハンクだと思い込み、ハンクの父を呼び寄せる。

ハンクはどうしてもメニーをこのままにしておけず、彼の死体を担架ごと盗みだし、海岸に戻る。そして、メニーが怒っていた「ハンクは自分に隠し事をしている=彼の聞こえないところでオナラをしている」ことを反省したといい、大きなオナラをして「これで隠し事なしだ!」と叫ぶ。
動かなくなっていたメニーだが、このオナラをきっかけに復活。彼は自分の尻からもガスを噴出し、笑顔で海に戻っていく。その奇跡に、サラも、サラの家族も、ハンクの取材に来たクルーも、ハンクの父も呆然とする。ハンクはメニーの旅立ちを見送る。

感想

ゴミで作られたセットや衣装がとにかく素敵で、センスを感じる。
キャストの2人も最高(特に、ダニエル・ラドクリフ!)で、発想が素晴らしい。死体がかけがえのない友達になる男ってどういうこと?と思わされるけど、見ているうちに腑に落ちる。死体を道具代わりにしてサバイバルするのも、メチャクチャだけど、もうかっこよすぎる。すべてが。ものすごく不思議な男の友情物語です。