「ゲット・アウト」

ゲットアウト

2017年のアメリカ映画「ゲット・アウト」。
人気コメディアンが監督デビューを果たしたということで、かなり大ヒットしたらしい。
「皮肉が効いている」「『黒人差別』をテーマに盛り込んでいる」と言われていましたが、もっとコミカルなのかと思いきや、しっかりとホラーであります。
特筆すべきは、音楽の使い方がすっごくうまいこと。後述しますが、登場人物のひとりがウウレレをつまびいているシーンがありますが、それがまあヘタクソなのです。でも、それが恐怖を増幅していく感じがして、なんとも気味が悪い。キャスティングや演技もいいし、脚本もスッキリしているし、いい映画だなと思いました。

登場人物

(黒人チーム)
クリス:カメラマンをしている黒人青年。恋人のローズの家に訪れるが、奇妙なことばかりが起こり…??
ロッド:クリスの親友。TASに勤務しており、留守中はクリスの愛犬・シド(めちゃかわいい)の面倒を見る。友達思いのイイ奴。白人のローズと交際するクリスのことを心配している。

(白人チーム)
ローズ:クリスの元恋人。白人。天真爛漫。
ディーン:ローズの父。医師。黒人になりきってジョークを飛ばし、クリスを面食らわせる。
ジェレミー:ローズの弟。髪型のクセがすごい。顔色が悪く、何かに憑依されたようにハイテンションになることがある。クリスに絡み、困惑させた。
ミッシー:ローズの母。セラピスト。催眠術が得意なよう。言葉少なである。
ジム:盲目の男性。ローズ家の知人である。アートについて非常に詳しく、クリスのこともよく知っていた(目は見えないが、話を聞いて彼の才能を好んでいる)。

(ローズ家に関係する黒人たち)
ジョージーナ:一家のお手伝い。突然泣き出したり、恍惚とした表情で自分の姿を見つめていたりと、行動が読めない。
ウォルター:一家のお手伝い。クリスに好戦的であり、図々しい態度をとる。
アンドレ:クリスの知人。だが、ローズ家のパーティで出会った彼は、自らを「アンドリュー・ローガン・キング」と名乗る。しかも、彼は失踪していて……

ネタバレ

ゲットアウト1

高級住宅地で、誰かと電話しながら歩いている黒人男性。すると、突然、大音量を流しながら走る車が彼の後をつけてきて、彼をトランクに押し込める。
(ここのBGMからして素晴らしい!)

クリスは、白人の恋人・ローズの家を来訪する計画を立てている。あまり気乗りがしないが、彼はローズに連れられ、実家に行くしかない。だが、彼らの家族は、クリスを大歓迎する。居心地が悪いほどに。

その夜、クリスは庭を猛ダッシュしているウォルター(すごいフォームキレイでちょっと笑える)や、うっとりと窓に映った自分を見るジョージーナを見かけ、不安な気持ちになる。
タバコを吸おうとしていたところを、ミッシーに咎められるクリス。
彼は、自分の母をひき逃げで失った過去があるが、あまりに子供すぎて母を捜しにいかなかったことを後悔している。それに付け込まれ、催眠をかけられるクリス。
彼は闇の中へと沈んでいき、意識を失う。

と、ベッドで目を覚ますクリス。夢だったのか?
だが、ウォルターに「昨日の夜、お前は奥様の部屋にずっといた」と言われ、さらにローズとの関係について触れられる。その乱暴な言い方に、思わず眉を顰めるクリス。さらに、何か(前髪がかかった額の下に何かあるのか?)を気にしているジョージーナを見て、クリスはやはり変な感じがする。

そして、年に一度、ローズ家の知人が集まるパーティが開かれる。
彼らはほとんどが白人で、黒人に妙に親切だ。だが、そこに唯一参加している黒人を見つけ、クリスは話しかける。だが、それは昔の友人・アンドレだった。アンドレは白人女性と結婚しているようで、妙に古びたファッションをしている。しかも、彼はローガンと名乗っている。なんとなく彼の写真を撮影したクリスだが、アンドレ(ローガン)はフラッシュを見て突然鼻血を出してしまい、場は凍り付く。

彼はてんかんだったという説明がクリスにされるが、当然納得しない彼。

その頃、ディーンが仕切っていたビンゴゲーム。だが、それは表向きで、彼らが目の前にしているのはクリスが写った写真だ。これはオークションで、彼を競り落としたのは盲目のアート評論家、ビルだった。

散歩から戻ってきたクリスたち。ジェレミーは不気味にウクレレをつまびいている。
ロッドに聞いてみたら、やはりローガン=アンドレだった。クリスは慌ててアーミテージ家から逃げようとするが、ローズのクローゼットにあった、大量の写真を見てしまう。そこには、今まで彼女が交際したらしい黒人青年の写真が(クリスが初めての黒人の恋人だと言ったはずなのに)ズラリと並んでいる。その一番下にあったのは、ウォルターとローズ、そしてジョージーナとローズの写真だった。
慌てて逃げようとするが、他の家族にも見つかり、ローズが彼の車の鍵をなかなか出してくれない。やはり、ローズは彼らの仲間だった。彼女は豹変し、ミッシーは彼にまた催眠をかける。紅茶のカップを叩くスプーンの音で、彼はまた意識を失う。

クリスと連絡がとれなくなったロッドは、ジャズミュージシャンだったアンドレが本当に失踪人として扱われ、ニュースで報道されたことを知る。

地下室。クリスは目を覚ますが、ローズの祖父・ローマンの老人のビデオが始まる。
彼は「結社の一員」と名乗り、コアギュア=凝固法を彼に施すと話す。
また意識を失うクリス。

ロッドは運輸保安局の女性ボス(黒人)に相談するが、「黒人を誘拐して性の奴隷にしている」という彼の仮説を、集まってきた黒人たちも大笑いして聞いている。
さらにローズと電話がつながるが、彼女の態度を怪しむロッド。会話を録音しようとするが、ローズが突然「あなたは私を誘ってる」と言い出したことで取り乱し、電話を切られてしまう。

クリスは意識を取り戻す。今度はジムを相手に、テレビ通話をすることになる。
彼は、クリスの体を乗っ取るつもりだ。手術をすれば、ジムがクリスの体を支配できる。でも、クリスの意識が消えるわけではない。彼の意識は残る。だが、「観客として」だけ。ふとした拍子で意識が戻ることもあるが、ほぼ出てくることはできない。
※途中でジョージーナが突然涙を流したことや、アンドレがフラッシュで鼻血を出したことも、本来の彼らが出てきたから。ジョージーナは、脳を取り出した際の傷跡を気にして額を見ていた。ウォルターのダッシュはなんだかよくわからん。

クリスは、なぜ彼ら白人が、わざわざ黒人だけを選び、体を奪うのかを尋ねる。その理由はとてもバカげたものだ。黒人が強くて、クールだから。
クリスの手術の時間が徐々に近づいてくる。
彼はふと、イスの腕のクッション部分からはみ出ているワタに気が付く。

父・ディーンは既に、手術を始めている。ジムの頭を開き、いらない皮膚や骨を捨てていく。
助手のジェレミーは、クリスを車いすで連れて行くために彼の閉じ込められている部屋に入る。イスから抜いたワタを耳に詰め、意識を失ったふりをしていたクリスは、彼の頭をビリヤードのボールで殴り倒す、
そして、その部屋にあったシカのはく製でディーンを刺殺する。

ミッシーと鉢合わせしたクリスは、メスで手を刺されてしまう。だが、表情一つ変えず、彼はミッシーを殺してしまう。家を出ようとしたら、まだ生きていたディーンが襲ってくるが、やはり彼を撃退し、頭を砕いて家から脱出する。

その頃、ローズは次の獲物を下調べしていた。次の獲物は、バスケット選手だ。
彼女のベッドサイドには、今まで獲物として捕らえた黒人男性とのツーショット写真が所狭しと貼られている。

車で逃亡しようとするが、飛び出してきたジョージーナを轢いてしまう彼。だが、ジョージーナが母の姿と重なり、彼女を見捨てられないクリスは、車の助手席に彼女を乗せる。
だが、ジョージーナの正体はローズの祖母。そして、ウォルターの正体は、ローズの祖父=ビデオに登場したローマンだった。
ローズとウォルター(中身は祖父)は、クリスの後を追う。

ジョージーナは車の中で暴れ出し、そのせいで車は事故ってしまう。その衝撃でジョージーナは死亡。だが、ウォルターが彼に迫る。
しかし、クリスはスマートフォンのフラッシュをつけたまま、ウォルターを撮影する。ウォルターは本当の自分に戻り、まずローズを射殺。そして、自殺する。

だが、ローズはまだ生きていた。そこに、警察の車が到着する。
ローズは「助けて!」と言い、いかにもクリスが疑われて射殺されそうな雰囲気が醸し出される。しかし、車から降りてきたのはロッドだった。
ロッドは「だから白人女なんかと付き合うもんじゃない」とクリスを皮肉り、2人はそのまま車で脱出する。

感想

冷静キャラのクリスと、ちょっとおバカだけど友達思いのロッドのコンビがなかなかに良い。また、ローズも途中まではとてもかわいい普通の女の子なのですが、正体がバレてからは白いブラウスにきっちり前髪を七三分けのポニーテールにして、突然キャラ変するのがびっくりします。
ウォルターとジョージーナ、アンドレなど、操られている役を担当している役者さんの演技がじっとりと怖い。目の演技に圧があるんですよね。
それにしても、ラストが非常にシニカルであります。