「ワイルド わたしの中の獣」

ワイルド

2016年のドイツ映画「ワイルド わたしの中の獣」を見ました。原題は「WILD」。
オオカミへの愛(性欲的な意味で!)に目覚めた女性が、少しずつ運命を狂わせていくというストーリー。映像が美しく、監督の才能に圧倒される一方で、過激な映像も多いです。なんといいますか、「ピンク・フラミンゴ」以来のアレを見ましたね。

登場人物

アニア:主人公。アパレル系の小さな会社で働いているが、仕事に没頭できず、恋人もいない。入院している祖父にだけは心を許している。
ボリス:アニアに気があるらしい上司。だが、非常に難しい性格であり、既婚者でもあるようだ。
ジェニー:アニアの妹。恋人と同棲するために家を出ていくが、祖父のテレビを持ち出そうとするなど、自己中心的な性格でもあるよう。

ネタバレ

仕事にも一生懸命になれず、恋人もいないアニア。世間にはなじめないし、恋愛というものも遠くに感じている。
だが、一度見かけた森のオオカミに一目ぼれするアニア。高級肉で釣ろうとするが、うまくいかない。そのことを祖父に相談したりもする。

妹は恋人と同棲するために出ていき、祖父の家具を勝手に持ち出そうとする。
アニアはふと、オオカミを捕まえるための手立てを探し始める。アジア人を雇って囲い込みのための簡易的なカーテンのようなものを作らせ、麻酔薬を盗み出し、オオカミを飼うための部屋を作る。
ちょうど祖父がこん睡状態になったことをきっかけに、休みをとるアニア。
そしてとうとう、彼女はオオカミを手に入れる。

ワイルド2

連れて帰るも、なつかないオオカミ。だが、彼女はオオカミとの逢瀬を想像して興奮する。
厳禁がない彼女は売春婦のフリをしてひったくりをしたり(なお、被害にあったのはなんと上司のボリスだった)、残飯を食べたりするアニア。犬に嘗なめまわされる夢を見る。

近隣の人(清掃スタッフかも)には、ニオイや騒音を咎められるようになり、壁に空けた小さな様子見の穴をかじったりけったりしたオオカミは壁に大きな穴を開ける。アニアはキッチンのダストボックスから逃げる。

しかし、オオカミは彼女になつきはじめる。オオカミとじゃれあい、廊下に出た彼女はひとりで楽しむ。どこまでが妄想なのか。(なお、貧乏な彼女は穴のあいたパンツをはいている)

オオカミと(一方的に)おしゃべりをするまで仲良くなったアニアだが、久しぶりに会社に出勤し、退社すると告げる。だが、アニアはボリスから借りた車を返してもいないし、盗んだサイフを返したことから、彼女の行動はボリスにお見通しだ。

ワイルド1

アニアは恋人と別れたジェニーの出戻りを拒否する。
ニオイのことで咎められた彼女は、マットをベランダに出す(外にニオイが出ただけでは?)。
早朝、会社にメモを残しに行ったアニアは、清掃員たちに犯されそうになる。だが、ボリスがたまたま出勤してきて、また怒られるアニア。だが、彼女は流れでボリスと関係を持ってしまう。
(なお、このフィニッシュのところでモザイクがかかります。最初意味がわからなかったのですが、液体を見せられないということなのか?)
ボリスはアニアのことを突き放す。その結果、アニアは彼が去った後にデスクの上に大便をして(モザイクかかってたけど、これはマジなんでしょうか)放火して去っていく。

アニアの部屋のニオイと騒音を通報するという住人。アニアはオオカミを連れ、屋上に避難する。

ボリスはアニアを追ってくるが(放火の件がバレたのか?)、彼女の家の汚さ、オオカミが食べなかったウサギの死体を見つけて言葉を失う。そして、導かれるように屋上にやってくる。
オオカミは、容赦なくボリスを噛み殺す。

ワイルド3

アニアはそれを通報して、オオカミと共に逃げる。荒野で眠り、泥水をすすり、途中でまた眠るアニア。
太陽の光で目を覚ますと、そこにオオカミはいないように見える。彼女は立ち上がり、満面の笑みを浮かべながら、大声で笑う。

感想

今年一番ゾッとしたかもしれないラスト。オオカミが最後まで寄り添ったという明確なエンドではなく、もしかしたらいなくなっているのかもしれないけれど、それでも彼女は愛を知ったということなのか。
とにかく、オオカミがキレイだし、オオカミに性愛を感じるというのもなんとなく共感できるほどのエロティシズムもある。その一方で、人間同士のセックスはまったく美しく描かれない。アニアはもともとおかしかったのか、それともスイッチが入ってしまったのかはどうでもよくなるくらい、レールを外れていくことの解放感が伝わってきます。そういえば、はっきり晴れてる!というのが感じられるのはラストシーンだけだったような。
ボリスもジェニーも勝手で、家族も友達も同僚も信頼できない。味方の祖父も、もういなくなる。そんな時に、狂えるほどのめり込める愛を見つけられたら、それは間違いなく“幸せ”なことなのだと思わせてくれる映画。

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