「ファウンド」

ファウンド

チラシでは「イット・フォローズ越え」とされていたカナダのホラー映画「ファウンド」。
意外にも2012年と少し前の作品です(日本では2017年に公開された模様)。
兄が殺人鬼だったと知った弟を待つ結末とは?
残念ながら低予算な印象が否めない、少し物足りなさもある映画ではあるのですが(カメラの台数が少ないのか、構図があまり変わらないのでずっと似た感じの映像が続く)、脚本がすごくいいです。しかも生首を見つけてあたふたする少年の話ではなく、既に発見した生首を観察し続ける少年の話。

登場人物

マーティ:主人公。おとなしく、ホラー映画とコミックを好む。いじめられっ子。
スティーヴン:マーティの兄。両親と折り合いが悪い。クローゼットに生首を隠している。
父親:兄と関係が悪いが、マーティには優しく振る舞う。差別主義者。
母親:マーティを甘やかしているが、人間関係でトラブルを抱えがちな息子たちに頭を抱えている。

デヴィット:マーティの親友。友達ではあるが、それを苦痛に感じてもいる(マーティがいじめられっ子だから、公には仲良くしていない)
マーカス:いじめっ子。「マーティが同性愛者である」「アレが小さい」などと噂を広めている。

ネタバレ

ファウンド1

「兄さんは生首を部屋に隠している。
数日おきに生首は新しくなる。大抵は黒人の女。白人の男の時もあった」
マーティは兄の部屋に忍び込み、ゴム手袋をつけ、ボウリング用のバッグ(ボウリングの球を入れるバッグ)の中に入っている生首を取り出す。それを観察し、もとに戻すマーティ。

「僕は殺人鬼にはならない。でも、ホラーからは卒業したくない。絶対にだ」

OPはマーティが趣味で書いているコミックが映像になって流れます。
(この、主人公が書いているコミックをOPやらEDやらにする流れを何回見たことか!)

父と兄はささいなことで大喧嘩を始める。マーティは母と無言で変顔をしあい、微笑みあう。

マーティは学校でマーカスや他の生徒たちにいじめられている。暴力を振るわれ、噂を立てられるマーティ。彼は兄の部屋に忍び込み、音楽を勝手に聞きながら兄のガスマスクをかぶる。
(このガスマスクが白のラバータイプで、デザイン的には結構珍しい感じ。ジャケットにも使用されていますが、実用性はなさそうです)
だが、兄が帰ってきて叱られるマーティ。だが、いじめを知った兄はとても優しくしてくれる。

マーカスとデヴィッドはオカルトショップに忍び込み、大人に怒られる。ここでマーカスがマーティの根も葉もないうわさを流しまくっていることが明かされる。
父はマーカスの存在を知り、黒人差別発言を繰り返す。息子に甘い母親は、マーティに学校を休ませてくれる。一緒にホラービデオを借りに行く親子。アダルトコーナーを覗き、大人と鉢合わせするマーティ。翌朝、顔を合わせた兄とホラー映画の話で盛り上がる。兄の部屋に忍び込んだマーティだが、彼が借りたがっていたビデオ(だが、ビデオ自体が盗まれていて借りられなかった)が兄の部屋にある。兄がビデオを盗んだのだ。

遊びに来たデヴィットとホラー映画を見ているマーティ。だが、ビデオが終わり、マーティは兄が盗んだビデオを持ち出して観ようと誘う。
それは、女の生首を切り取る殺人鬼モノだった。女性の胸部を切り取り、生首の口を使って処理する殺人鬼。
「兄はこうやって人を殺したのか?自分も殺人鬼になるのだろうか?」
マーティは考え込む。
ビデオでは殺人鬼が首を落とした死体の下に座り込み、血を浴びているシーンが映る。さらに、台の上の女性の股の間に座って、首の切断面で処理している殺人鬼の場面に続く。突然、警察官が踏み込み、男は殺される。

デヴィットはこの映画に満足せず、マーティと言い争いになる。彼はマーティと友達でいることが苦痛だとチラつかせ、ついにマーティはキレ、彼を兄の部屋の中に連れ込む。
ボウリングバッグの中を見せるマーティ。そこには、学校を休んだというマーカスの生首が入っていた。マーティは兄の殺人を、自分のことのように誇示してデヴィットを打ちのめす。彼は親友を失ってしまう。だが、この一連の行動を兄に気付かれてしまった。

映画を見に行くマーティと父。だが、マーティがトイレに立ったすきに兄が現れ、彼を問い詰める。
途中で人が来たため、兄は立ち去るが、マーティは気分が悪くなりすぐに帰宅することになる。

こっそりと、自分が書いたグロマンガを燃やすマーティ。そして、兄を避け続ける。
だが、兄とマーティは向き合うしかない。スティーヴンは差別主義者で、黒人を選んで殺していた。しかもマーカスは、大事な弟をいじめたやつだから殺したというのだ。
「あいつを殺してくれてありがとう」
「弟のためなら、何でもする」
神様なんて信じない。マーティは心の底からそう思う。

だが、マーカスが広めた噂のせいでマーティはまだいじめられ続け、ある子どもにケガさせてしまう。そのせいで、急速に両親と仲が悪くなるマーティ。それをかばおうとした兄は両親を傷つけ、とうとう勘当される。

「僕の人生はホラー映画みたい。モンスターは誰?
パパ?それとも兄さん? それとも、僕?」

兄は追い出されるが、夜中に弟のもとにやってくる。
彼はマーティに自分のベッドで寝るように命じるが、マーティは頑なにそれを嫌がる。兄は両親を殺すつもりなのだ。揉めているうちに、父が外に出てきて兄をしかりつける。兄は父に殴りかかり、気絶させる。そしてマーティは、母を襲っている兄を見る。母親を撫でまわし、首を絞めながら笑っている兄。
「あれは、兄さんの皮をかぶった偽物だ」
兄を止めようとするマーティだが、自身も捕まってしまう。

眼を覚ますと、彼はベッドの上で拘束されている(しかもボールギャグをかまされている)
両親の声が聞こえ、母が殺され、父が殺されるのが聞こえる。そして、全裸にガスマスクをつけた血まみれの兄が現れる。
「今はわからないかもしれないが、大人になれば俺に感謝する」という兄。
だがマーティは怯え続ける。
「もう傷つけられない」「絶対にお前は傷つけない」
と連呼する兄。だが、涙を流すマーティに動揺し、
「泣くのはよせ!」
と絶叫する。

朝。血まみれの兄は家の外にフラフラと出て行く。
マーティはひたすら、耐えている。
「今叫べば戻ってこられない気がするから。こんな体験は、人をおかしくさせる」
ベッドにくくられている彼は、両脇に父と母の死体を並べられ、血まみれになっている。

感想

・途中まではなんだかざっくりした映画だなーと思っていたのですが(たぶん、誰かの家でロケをしたのではないか?というくらい生活感がスゴイ)、ひとつひとつのセリフに孤独がにじみでていていいなあと思いました。
・途中、お母さんが突き飛ばされてガレージの荷物の中に突っ込むのですが、マジで荷物で散らかっていてちょっと笑ってしまった。
・こんなに子供が傷つけられたリ死んだりする映画、よくアメリカで成立したなあ。
・マーティが両親と急に折り合いが悪くなるので(それまではどちらかというと兄にとても厳しく、マーティには甘い)
・ラスト、マーティも死ぬ寸前なのかはよくわからない(まあ、明言しないほうが流通させやすいのかもしれない)のですが、こんなに寂しい終わり方ってあるのかな。こんなに悲しい人生の終わり方があるのだとしたら、それは間違っている。

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