2016年の「葛城事件」を見ました。この監督の前作「その夜の侍」もよかったけど、この映画もすごくいい。劇場に見に行けばよかった。でも、すごく落ち込んで帰ってきて数日間うなされたと思う……。
無差別殺傷事件を起こしてしまった息子、そしてその父と母、兄の話。
本当に陰鬱で嫌な話ですが、見終わった後に残る「何か」がたまらなく好きな印象。
※未見の方は、先に映画をご覧になることを強く強くお勧めします！
あらすじ
無差別殺傷事件を引き起こした犯人の父親を主人公に、腐心して築き上げた理想の家庭が、ふとしたことから歯車が狂いはじめ、壮絶な崩壊の道を辿っていくさまを鮮烈に描き出した衝撃の家族ドラマ。主演は「アウトレイジ」「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」の三浦友和。共演に南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈。監督は本作の基になった同名舞台を手がけ、これが前作「その夜の侍」に続いて監督２作目となる赤堀雅秋。
親から引き継いだ金物屋を営む葛城清。美しい妻・伸子と２人の息子に恵まれ、東京の郊外に念願のマイホームを建てることもでき、思い描いてきた理想の家庭が完成したかに思われた。しかし清の理想への執着が、いつしか家族を抑圧的に支配してしまっていた。従順に育ってきた自慢の長男・保は会社からリストラされたことを誰にも言い出せず、デキの悪い次男・稔はバイトも長続きせず、“一発逆転”を夢みている。そして清に一方的に言われるがままで、耐え忍ぶことしかできなかった伸子は、ついに不満が爆発、稔を連れて家出してしまうが…。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355380
登場人物
葛城清：どこにでもいるような男。粗野であり、妻に暴力を振るうこともある。言動が非常に乱暴である。
葛城伸子：清の妻。もともとは明るい性格だったが、清に抑圧され、どこか卑屈な印象を与えるようになる。
葛城保：営業をしているサラリーマン。妻と2人の子がおり、既に別居している。父の理想通り育ったが、リストラされてしまい……。
葛城稔：父とは折り合いが悪く、母に甘えている。バイトも続かず、ほぼニート。保の息子にケガをさせたり、放火事件を起こしたりとたびたび問題行動を起こす。一発逆転を夢見ているが、既に20代後半である。
星野順子：死刑制度に反対する活動をしており、稔に正しい愛を教えるために彼と獄中結婚をする。
簡単な流れ
清は、家に残された落書きを消している。
稔は死刑を宣告され、ニヤリと笑う。
順子は清のもとを訪れるが、彼は彼女を相手にしない。
順子は稔と面会するが、収容されている今もなお、順子のお菓子の差し入れを拒否して現金を要求し、「差し入れるなら甘いものではなくしょっぱいものを」「でも、飲み物は甘いほうがいい」などとワガママ放題の稔に驚かされる。
清は自慢の長男と、引きこもりの次男を差別するようになっていた。稔は母にだけ「いつか一発逆転する」と宣言する。
清は順子とカラオケスナックに行くが、他の客から次男のしたことを非難され、喧嘩になる。
リストラされた保。だが、そのことを言い出せない。
ゴミ捨ての分別をしない伸子に対して文句を言った近所の女を睨みつける稔。
長男とその妻、義理の両親、そして清は近所の中華料理屋に行くが、清は「麻婆豆腐が以前より辛すぎる」ことをネチネチとクレームし、保からたしなめられる。居心地が悪そうな嫁やその家族。
帰宅すると、保の長男（伸子が家で面倒を見ていた）が額を切ってしまっている。伸子は「転んで切った」とごまかすが、清は稔を恫喝する。稔はメモに「オレが殴った」と書き、保に見せる。
伸子は稔が声優を目指しているから、今声を温存しているんだとフォローする。
順子と稔の面談。稔は順子に胸を見せるようにねだる。
清は家の近くのゴミ捨て場が燃えているのを、家の中から目撃する。慌てる清だが、ちょうど稔が帰宅する。息子の犯行だと思いつつ、はっきり問い詰められない清。
そのまま、寝ている伸子に抱き着くが、伸子ははっきりと清を拒否し、「最初から、あなたのことをちっとも好きじゃなかった」と口走る。
保は再就職に苦労している。
伸子が家出するが、保は弁当を持ってあるアパートに消える稔を目撃する。伸子は稔と家を出ていたのだ。パートもしているという伸子。
だが、保が教えたため、清は伸子を家に連れ戻し、稔を激しく殴る。稔は保に「俺が死ねばいいと思ってたんでしょ」などと言う。
リストラを苦にして、保は自殺してしまう。葬式では、噂話をしている嫁の親戚を清が恫喝する。
葛城家が勝手に棺をグレードアップしていたことを知り、頭を痛める嫁。我慢できず伸子に詰め寄る嫁だが、「一緒に住んでいたのに、リストラのこと、気が付かなかったの？」と無邪気に言われ、傷付けられる。
順子は伸子に会いに行く。
現在の伸子は精神病なのか、車いすに乗ったまま、ぼんやりとしている。順子は自分の理想論をおとなしい伸子にブチまけるが、彼女は「扇風機がうるさいの、消してちょうだい」とわけのわからないことを呟いている。
稔は通信販売でバタフライナイフを買い、それを持って地下道へ行く。
目についた人を片っ端から刺し、切りつける稔。
カラオケスナック。
清はスナックのママに、家を売ることを勧められる。「もう、誰も戻ってこないんだよ。あの家には」
死刑が執行される。
そのことを清に報告しに行く順子だが、彼に押し倒されてしまう。なんとか逃げ、清を罵っていく順子。そうめんを食べていた清だが、ふと家じゅうのものをひっくり返し、掃除機を庭に持ち出す。
そこにはかつて、家を建てたばかりの時に植えたみかんの木がある。そこで首吊りをする清だが、木の枝が折れてしまい、落下する。清はのそのそと家に戻り、またそうめんを食べる。
感想
・稔役の俳優さんがとにかくスゴイ。他の俳優さん、女優さんもすごいのですが、本当に嫌な人間！とイライラさせられた。
・この映画は本当に、見るべき映画です。